歩きお遍路さんの中には野宿をしながら巡礼するスタイルがあります。どこでも野宿できるわけではなく、地域の人が用意してくださっている「善根宿」「遍路小屋」「通夜堂」など様々な形態の野宿施設があり、一覧にまとめました。
四国遍路の野宿スポットについて
四国の中には、野宿をしながら巡礼する歩きお遍路さんが無料で利用できる「善根宿(ぜんこんやど)」や「遍路小屋」が点在しています。また、札所や道中のお寺の中には、無料で泊まれる施設(通夜堂/つやどう)を用意してくださっている場合もあります。
無料の野宿施設のほとんどが、個人や地域、お寺のご厚意(=お遍路さんを応援し労う気持ち)により営まれているもので、四国で育まれた「お接待文化」を象徴する施設でもあります。
本サイト内の記事で紹介している野宿スポットをエリア別に一覧にまとめました(直接訪れた場所を紹介しているので全てを網羅している訳ではありません)。情報掲載時点から状況が異なっている場所もあるかと思いますので、ご利用の際は各自で確認をお願いいたします。また、施設を提供してくださった人への感謝の気持ち、マナーを守る姿勢は忘れないでいただきたいと思います。
※参考にしていただきたいサイト内関連記事
2015年に通し歩き遍路で結願したごんのすけさんは、野宿と宿の混合型の旅をしています。宿泊地とスケジュールを以下リンクの記事にまとめていますので、ご参考ください。
四国八十八ヶ所霊場の札所にある宿坊および通夜堂の情報は、下記リンクの記事にまとめています。

現在は運営を終えられた「萩生庵」
徳島県の野宿スポット
1番札所霊山寺〜23番札所薬王寺周辺の野宿スポットです。23番薬王寺から24番最御崎寺の間は距離が長く宿泊施設は少ないですが、野宿施設は道中のところどころに用意してくださっています。
場 所 | 施設 | コメント | サイト内関連記事 |
6番安楽寺 | 通夜堂 | 安楽寺の鐘撞堂に野宿させていただける | 【6番札所安楽寺・通夜堂(鐘撞堂)】巨大な鐘の下で寝る貴重な体験 |
11番藤井寺 手前 |
善根宿 | 鴨島温泉「鴨の湯」が営む善根宿は、男女別になっていて洗濯も可能。 | 【鴨島温泉「鴨の湯」いやしの舎】初の遍路ころがしに挑む前の温泉隣最強善根宿 |
19番立江寺 手前 |
遍路 小屋 |
立江寺に縁深い「お京さん」の庵跡「ヘンロ小屋 第48号 京塚庵」。 | 【19番札所立江寺】「黒髪お京肉付鐘の緒伝説」が残る阿波の関所 |
20番鶴林寺 手前 |
善根宿 | 鶴林寺手前の法泉寺住職が営む善根宿。電気やコンロまである充実施設。 | 【法泉寺・寿康康寿庵】二番目の遍路ころがしに挑む前の水・トイレ・電気・コンロ・寝具完備の善根宿 |
別格3番 慈眼寺 |
遍路 小屋 |
慈眼寺への遍路道にある遍路小屋 電気・畳・寝具あり。 ※八十八ヶ所のルートからは外れる |
【別格3番札所慈眼寺への遍路道】岩をくぐり川を渡る起伏に富んだ遍路道にはありがたい休憩所あり |
23番〜24番 | 遍路 小屋 |
23番薬王寺から約5キロ、日和佐トンネルを抜けた先にある「ヘンロ小屋・日和佐」。 | 【23番札所薬王寺→別格4番鯖大師】お遍路さんにやさしい「グリーンライン」のある国道55号を進む |
23番〜24番 | 遍路 小屋 |
国道55号線沿線、牟岐トンネル手前「ヘンロ小屋第50号牟岐」。 | 【徳島県牟岐町】はてしなく長い海岸線には江戸時代の休憩所「小松大師」と現代の休憩所 |
23番〜24番 | 遍路 小屋 |
国道55号線沿線、別格4番鯖大師の駐車場東屋。トイレ有り。 | 【別格4番札所鯖大師本坊】空海と行基の「鯖伝説」が残る「鯖大師」で野宿 |

鴨島温泉「鴨の湯」が営む善根宿の様子。
徳島県の人気のホテル・旅館
高知の野宿スポット
札所間の距離が長く、長距離移動の間に野宿スポットが点在しています。
場 所 | 施 設 | コメント | サイト内関連記事 |
23番〜24番 | 通夜堂 | 弘法大師の水祈祷伝説の残る番外霊場「東洋大師(妙徳寺)」が通夜堂になっている。 | 【高知県東洋町国道55号】昔の難所「野根」で休憩のあとは「猿との遭遇Part2」の要注意区間 |
23番〜24番 | 大師堂 | 佐喜浜港にある大師堂に宿泊可能。 向かいの橋本酒店に一声かけて。 |
【佐喜浜港・大師堂】高知県に入って初めての宿泊は元大関「朝潮」の故郷にて |
27番神峯寺 手前 |
バス停 | 高知東部交通のバス停「東谷入口」で野宿可能。※お遍路さんが野宿できる高知のバス停はいくつかあるが、近年、マナーの悪化で野宿禁止になっている例があるので確認が必要。 | 【道の駅田野駅屋】「田舎寿司」に「かんば餅」「昔プリン」のデザートと「スーパーごっくん」水分補給のフルコース |
27番神峯寺 | 通夜堂 | 神峯寺が用意してくださる通夜堂。 水道や電源あり。 |
【27番札所神峯寺】四番目の遍路ころがしである「真っ縦」のあとは霊水でのどを潤す |
27番〜28番 | 善根宿 | 芸西村にある「宿情報リスト」で有名な萩森さんの善根宿 | 【高知県芸西村遍路道】砂浜・自転車道・善根宿・老人ホーム休憩所と変化に富んだ海岸道 |
27番〜28番 | その他 | 芸西村にある老人ホームは、野宿が可能な休憩所がある。 | |
28番〜29番 | 大師堂 | 江戸時代に建立し、平成19年に再建された宿泊可能な「松本大師堂」 地元に残る大師講の伝統を知る。 |
【28番札所大日寺→29番札所国分寺】おもしろ「道標」と宿泊可能な「松本大師堂」のある田園地帯を歩く |
33番雪蹊寺 | 通夜堂 | 雪蹊寺が用意してくださる充実施設の通夜堂あり。納経所で受付している。 | 【33番札所雪蹊寺】長宗我部元親ゆかりのお寺は高知特産品の宝庫 |
34番種間寺 | 通夜堂 | 種間寺が用意してくださる通夜堂は、シャワーとシーツ交換付きの寝具がある快適かつ充実した施設。 | 【34番札所種間寺・通夜堂】シャワー・寝具有りの管理の行き届いたありがたい通夜堂 |
35番清瀧寺 | 通夜堂 | 清瀧寺が用意してくださる休憩小屋兼通夜堂。2部屋あるので、男女別で泊まることも可能。炊事場あり。 | 【35番札所清瀧寺】高さ15mの厄除け薬師如来立像とともに田園を見下ろす |
36番〜37番 | 遍路 小屋 |
中土佐町の個性的な遍路小屋(電気・トイレ・水なし)。トイレは1km先の土佐久礼駅で。 | 【中土佐町遍路小屋】通行止めの焼坂峠を横目にドアがたくさんある小屋に宿泊 |
37番〜38番 | 遍路 小屋 |
温泉宿「土佐佐賀温泉こぶしのさと」前に遍路小屋あり。日帰り温泉も利用可能。 注)土佐佐賀温泉こぶしのさとは、2022年1月3日をもって休業いたしました(再開未定)。 |
【高知県黒潮町】「土佐佐賀温泉こぶしのさと」と「伊田観音堂」は充実の野宿スポット |
37番〜38番 | お堂 | 伊田観音堂は12畳ほどの広さで水・トイレ有。 | |
37番〜38番 | 善根宿 | 江戸時代に四国遍路の礎を築いた真念の「真念庵」は善根宿の原点。 | 【四万十市→土佐清水市】四国遍路の父「真念」ゆかりの「真念庵」と「ドライブイン水車」は足摺岬への中継基地 |
37番〜38番 | 遍路 小屋 |
ドライブイン水車は水・トイレ有りの充実遍路小屋。 | |
37番〜38番 | 休憩 施設 |
以布利港の大阪海遊館関連施設「ジンベエ広場」に宿泊可能な小屋あり。トイレも併設。 | 【下ノ加江→大岐の浜→以布利】サーファー隠れ家の美しい浜とジンベエザメと野宿 |
37番〜38番 | 遍路 小屋 |
あしずり遍路道の先にある津呂の遍路小屋は水・電気・コンロ・洗濯機あり。 | 【以布利→足摺岬】ワイルドな「あしずり遍路道」には津呂のありがたい遍路小屋あり |
38番〜39番 | 休憩 施設 |
宿毛市「道の駅すくも」は野宿が可能(道の駅で公に野宿を許可している例は少ないです。)。 | 【道の駅ふれあいパーク大月】大月特産の「柿」と高知・南予ならではの「ひがしやま」の羊羹 |

ジンベエ広場の小屋内ベンチで作った簡易ベッドで野宿。
高知県の人気のホテル・旅館
愛媛県の野宿スポット
いくつも峠を越える愛媛の遍路道。随所にお接待文化が根付いています。
場 所 | 施 設 | コメント | サイト内関連記事 |
39番〜40番 | 遍路 小屋 |
国道56号線沿線の「針木ふれあい広場」には、洋風で鍵付きの快適な個室遍路小屋あり。海の景色も良い。 | 【針木ふれあい広場】ゲートボール広場に鍵付き・電気あり・フローリングの個室遍路小屋 |
42番〜43番 | 遍路 小屋 |
宇和街道の宿場町を過ぎて出会う遍路小屋は、石庭つきの立派な造り。個人のご厚意で建設。 | 【宇和町卯之町】明石寺近くは四国西部の要所で重要伝統的建造物群保存地区 |
43番〜44番 | 遍路 小屋 |
西予市から大洲市への鳥坂峠手前にあるヘンロ小屋49号「ひじ川源流の里」。 | 【西予市→大洲市】宇和街道の難所「鳥坂峠」は遍路道でもっとも危険な「鳥坂トンネル」を通る |
43番〜44番 | 通夜堂 | 弘法大師が野宿した伝承が残る場所で宿泊できる通夜堂。 | 【別格8番札所十夜ヶ橋・通夜堂】お大師さまが橋の下で野宿した場所にはありがたい通夜堂あり |
43番〜44番 | 遍路 小屋 |
五右衛門風呂つきの立派な遍路小屋「神南堂休憩所」。利用の際は、小屋の裏にある建設会社に一声かけて。 | 【内子町八日市護国】ハゼを原料に木蝋と和紙の生産で財をなした重要伝統的建造物群保存地区 |
43番〜44番 | 大師堂 | 国道379号線、小田川沿いの旧道にある千人宿記念大師堂。利用は「やなぜうどん山本商店」に一声かけて。 | 【愛媛県内子町】無料宿泊情報多数!内子町の遍路小屋・休憩所・お堂セレクション |
43番〜44番 | 遍路 小屋 |
鴇田峠ルートの先にある「ヘンロ小屋・内子」は、トイレ・シャワー(お湯なし)併設。 | |
43番〜44番 | お堂 | 落合トンネルの先、総津落合交差点(砥部町と内子町の堺)にあるお堂で野宿可能。 | |
44番〜45番 | バス停 | 伊予鉄南予バス「ふるさと村」バス停が遍路小屋を兼ねている。 ※現在の状況は不明。 |
【44番札所大寳寺→45番札所岩屋寺】大寳寺裏山を通ったあとは峻険な修行道「八丁坂」を登る |
47番八坂寺 | 通夜堂 | 「いやさか不動尊」が祀られている駐車場に通夜堂あり。冷蔵庫や空調などの設備も充実。 | 【47番札所八坂寺】極楽・地獄の閻魔の裁きと火渡り修行の「いやさか不動尊」に仏道の厳しさを知る |
47番〜48番(別格9番) | 通夜堂 | 番外霊場となった四国遍路の元祖「衛門三郎」の邸宅跡。納札の起源と伝わる札始大師堂には宿泊が可能。 | 【別格9番札所文殊院・札始大師堂】四国遍路の元祖「衛門三郎」の邸宅跡と納札発祥の地 |
48番西林寺横 | 東屋 | 弘法大師によって湧き出た伝説の清水をたたえる「杖の淵公園」で宿泊可能。管理が行き届いている。 | 【48番札所奥の院杖ノ淵】お大師さまゆかりの清水が湧き出る公園は安心の野宿スポット |
53番〜54番 | 通夜堂 | 54番札所の10km手前にある番外霊場「青木地蔵」には通夜堂あり。 | 【松山市→今治市】瀬戸内海を臨む瓦の街「菊間」の「やくよけ大師遍照院」と「青木地蔵」 |
59番〜60番 | 遍路宿 | 番外霊場「日切大師弘福寺」の道路向かいにある「光明寺」の無料遍路宿。本堂へのお参りはお接待への礼儀です。 | 【光明寺】ありがたいお言葉をいただけるお寺の「通夜堂」ではなく「遍路宿」に泊まらせていただく |
60番横峰寺 | 通夜堂 | 横峰寺が用意してくださる「休憩所兼通夜堂」は雨風しのげる木造の施設。 | 【60番札所横峰寺】厳寒の山岳信仰の霊地は伊予の國の「関所寺」 |
64番〜65番 | 善根宿 閉業 |
有名な善根宿「萩生庵」は2020年に閉じられたようです。長年のお接待への敬意を表して情報を残します。 | 【西条市→新居浜市】お接待ロード「旧讃岐街道」沿いには有名な善根宿「萩生庵」 |
64番〜65番(別格12番) | 東屋 | 64番〜65番の遍路道沿いにある別格12番延命寺近くに、野宿可能な東屋あり。お寺のトイレが利用可。 | 【別格12番札所延命寺】千枚通し霊符の「土居のいざり松」の横には野宿可能な東屋 |
64番〜65番 | 休憩所 野宿可 |
地元の運送会社「南流勢運輸株式会社」の社長さんが設置・管理しているハト小屋横の休憩所。 | 【65番札所三角寺→66番札所雲辺寺】伊予國最後の野宿スポット「ハト小屋」「しんきん庵・法皇」 |
64番〜65番 | 遍路小屋 | 三角屋根のヘンロ小屋「しんきん庵・法皇」は騒音を防ぐ工夫のある施設。 |

別格12番延命寺さんが、近くの東屋を野宿可能にしてくださっています。
愛媛県の人気のホテル・旅館
香川県の野宿スポット
平地が多く、コンパクトに進める香川県の遍路道。要所要所に野宿スポットあり。
場 所 | 施 設 | コメント | サイト内関連記事 |
66番雲辺寺 | 通夜堂 | 雲辺寺が用意してくださる通夜堂。山上にあるが、ロープウェイの売店で食料調達もできる。近年リニューアル済み。 | 【66番札所雲辺寺・通夜堂】山の上の大広間「通夜堂」で一夜を明かす際にはロープウェイ乗り場を要チェック |
71番弥谷寺手前 | 道の駅 | 「道の駅ふれあいパークみの」は野宿可能な道の駅。敷地内に宿泊施設併設の温泉(立ち寄り湯可)あり。 | 【天然いやだに温泉大師の湯/道の駅 ふれあいパークみの】高級立ち寄り湯でくつろいだ後に喫茶店裏で野宿 |
81番〜82番 | 遍路 小屋 |
ロフト付きのヘンロ小屋「五色台子どもおもてなし処」は、電気、トイレ、お接待ありの充実施設。 | 【五色台子どもおもてなし処】子ども達の心遣いと宿泊可能な設備がうれしい最強ヘンロ小屋 |
83番〜84番 | 善根宿 | お遍路経験者のご夫妻が営む善根宿「りつりん南休憩所」。一戸建て形式の快適施設です。 | 【83番札所一宮寺→84番札所屋島寺】御坊川沿いの遍路道には2013年11月スタートの遍路休憩所・善根宿 |

ヘンロ小屋「五色台子どもおもてなし処」の内部の様子。きれいに管理されています。
香川県の人気のホテル・旅館
その他の遍路小屋情報
上記の表でも一部を紹介していますが、四国全域に遍路小屋を建設する「 四国八十八ヶ所ヘンロ小屋プロジェクト」が四国内で進められています(表では「ヘンロ小屋」とカタカナ表記の遍路小屋が該当)。下記のサイトにヘンロ小屋プロジェクトが建てた遍路小屋が掲載されていますのでご参照ください。
「 四国八十八ヶ所ヘンロ小屋プロジェクト」を支援する会:http://www.henrogoya.com/index.html
野宿する歩きお遍路さんのために野宿スポットを掲載しましたが、利用者のマナーの悪化で使用不可になる例も増えています。四国の大切な「お接待文化」を後世に残すためにも、施設を大切に使う、ゴミを残さない、使用の許可をきちんと得る(許可のいらない場所もあります)など基本的なマナーを守ってご利用ください。