【喝破道場】自己を見つめる坐禅道場の遍路宿

82番札所根香寺近くにある坐禅道場「喝破道場」には、無料開放している宿泊可能な「ヘンロ小屋」と、禅体験も可能な有料の「遍路宿」があり、それぞれの目的で使い分けされています。真摯に「道」を求める人を受け容れる宿です。

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「喝破道場」について

お遍路さんが泊まる宿の歴史や運営者の思いについてインタビューする遍路宿紹介シリーズ。今回訪れた曹洞宗の坐禅道場「喝破(かっぱ)道場」は、禅僧である野田大燈氏が昭和50年に開いた道場で、禅道場の他に、公益財団法人としての社会福祉活動で若者自立塾や障害児施設を運営するなど、様々な活動を行っています。瀬戸内国立公園に含まれる香川県の「五色台」の中腹に位置し、近くには82番札所「根香寺」、国史跡に指定されている讃岐遍路道「根香寺道」も隣接する、自然と歴史的資源に恵まれた場所です。

自身の事業が軌道に乗っていた野田氏が禅僧になり、五色台に坐禅道場を開設した経緯など、書ききれないほどの興味深いエピソードについては、ぜひ下記リンクをご参照ください。

四国ガイド紹介サイト「四国旅人」ガイド紹介 野田 大燈

ビジネス香川  野田 大燈さん紹介記事: https://www.bk-web.jp/post.php?id=66

喝破道場が運営する宿泊施設は2種類で、旧遍路道「根香寺道」沿いに無料開放している「ヘンロ小屋 」と、寺院境内にある参禅が可能な「遍路宿」です。禅僧である野田氏が遍路宿を営むことになった経緯について、お話をお聞きしました。

喝破道場 野田大燈氏

公益財団法人喝破道場 理事長 野田大燈氏

 

自身の四国遍路体験から遍路小屋のありがたさを知る

喝破道場の遍路宿とヘンロ小屋についてお話しをうかがった際に、野田さんが最初にお話ししてくださったのは、ご自身の遍路体験でした。

「禅僧になった当初、師匠から『せっかく四国にいるのだから、四国遍路をしろ』と言われました。僧侶なので本格的な修行としての遍路です。師匠からは『お寺には泊まるな(同業だから相手は断れない)』『野宿はするな(一人で気兼ねがなく楽なので修行にならない)』と言われます。お金も持たないので当然宿には泊まれませんから一般の家に泊まらせていただくしかない。つまり、相手から「泊まってください」と思われるような人間になれという修行なのです。」

「野宿は楽だから修行にならない」という言葉に衝撃を受けながら、続くお話をお聞きします。

「でも、遍路道沿いに家がない場所も多いので、師匠との約束を破ることになりますが野宿もしました。そんななか、ある場所に、今でいう『善根宿』のような小屋がありました。そこに泊まらせていただいたのですが、本当にありがたかった。その経験が、お遍路さんを受け入れる原点になっていると思います。」

喝破道場 醤油樽

喝破道場の原点である醤油樽。野田氏はこの樽の中で坐禅を組み、五色台で自給自足の生活を始めました。

 

喝破道場に泊まったお遍路さんから寄付が集まる〜「ヘンロ小屋」建設

遍路後、醤油樽での坐禅生活をスタートした野田さんは、導かれるように野田さんの元に集まってきた登校拒否の子どもたちの自立支援を手がけるようになります。それと同時に、場所柄もあってお遍路さんが訪れるようになり、子どもたちと一緒にお遍路さんも泊まることが増えていったそうです。

そうして、訪れたお遍路さんに宿のお世話を続け40年近く経った平成25年、喝破道場近くの旧遍路道沿いに「ヘンロ小屋」建設計画がもちあがったとき、寄付を寄せてくれたのは、かつて喝破道場に泊まっていったお遍路さんたちでした。

「今まで泊まっていったお遍路さんの名簿があったので、ヘンロ小屋建設の寄付を呼びかたところ、約150名の方から資金提供をいただきました。寄付金で建設資金が全て賄えたわけではないですが、それだけ縁を感じてくださった方がいらっしゃったのだと思います。」

喝破道場 ヘンロ小屋

野田さんが讃岐遍路道「根香寺道」の途中につくったヘンロ小屋は「四国八十八ヶ所ヘンロ小屋プロジェクト」の一環である「ヘンロ小屋 第51号 五色台子どもおもてなし処」です。

野田さんがお遍路さんにしてきた宿のお世話が、お遍路さんの新しい宿泊施設への寄付へとつながったことに、恩の正の循環を感じさせられます。平成29年には、禅寺スタイルの朝食、坐禅、読経が体験できる有料の宿として遍路宿も開設。野田さん曰く「お遍路さんそれぞれにお金の有無などの事情がありますから、気持ちの負担のないよう、使い分けていただいています。」とのことでした。

かっぱ遍路宿 悠遊

喝破道場遍路宿の外観。

 

「道」を求める人に応える道場でありたい

喝破道場は宿である前に坐禅道場であり、禅をベースにした生活が基本となっています。そのため、八十八ヶ所を結願したのち、禅生活をするために喝破道場で長期滞在する外国人がいたり、縁を得てここで得度するお遍路さんがいたりなど、宗教的な指導を求める人が集まる場でもあります。

「お遍路さんの質も変化して観光的にまわる人が増えましたが、うちの道場は、人生を見つめ『道』を求める巡礼者に応える場でありたいと思っています。宿泊者には、禅僧の使う食器(応量器)で食事をとっていただきますし、朝6時からの坐禅・読経に参加していただいています。もちろん、参加されない人もいてそれは自由なのですが、坐禅修行ができる宿があると知っていただくことが大事です。修行を中心とした生活の存在を知って、生き方の多様性に気がついていく。自分の人生を発見する手がかりにしていただきたいと思います。」

喝破道場 座禅

坐禅道場での坐禅体験風景(株式会社四国遍路 五色台つくり旅「遍路体験編」YouTubeより)

 

【「喝破道場」 基礎情報】

名 称 喝破道場(かっぱどうじょう)
宿の形態 宿坊
住所 香川県高松市中山町1501-9

「かっぱ道場遍路宿 悠遊」の詳細情報とご予約はこちらから↓
四国宿泊予約サイト「お遍路さん家」【喝破道場】

 

若者の自立支援を長年行ってきた野田さんの言葉には、自分の人生を見つけようとする人への教育的な眼差しと、実践を続けてきた人ならではの力強さがありました。かつては修行だった四国遍路のあり方が、ここで再発見できるかもしれません。

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この記事を書いた人

札幌で生まれ育ち、東京にて都市計画コンサルタントに従事。結婚を機に香川に移住し、地方自治体勤務などを経て現在に至る。お遍路文化を通じた新しい四国の楽しみ方を模索しています。日本酒とワインが好き。