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四国遍路の基礎知識
四国遍路の歴史から遍路旅の巡りかた、持ち物や予算など四国遍路に関する基本的な情報をまとめました。四国遍路について知りたい人、遍路旅を始めようと考えている人は、まずこちらをご覧ください。
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四国遍路とは
修行の道としての「四国辺路」
四国遍路の「遍路」は、もともとは「辺路・辺地(へじ)」という「海べりの道」を示す言葉で、海沿いを歩く修行の道を意味していました。
仏教伝来以前の昔より、四国には山岳信仰(修験道)が存在し、すでに山伏などによる修行が行われていましたが、平安時代以降、若き空海が修行した土地として注目されるようになると、弘法大師信仰の広まりとともに僧侶たちの間で四国での修行がひとつのステータスとなっていきます。
平安時代末期の『梁塵秘抄』に収められた詩歌や『今昔物語集』にも僧侶が四国の海辺を巡回する姿が記されており、四国の海岸部を修行のために廻り歩く「四国辺路」のスタイルが、すでにこの頃にはできあがっていたとみられます。
また、四国での修行は弘法大師が開祖の「真言宗」の僧侶にとどまらず、東大寺を再建した重源、踊り念仏で知られる一遍上人ら他宗派の僧侶も行っており、宗派をまたいだ行場としての「四国辺路」が確立されていきました。
四国遍路の世俗化と八十八ヶ所霊場の成立
弘法大師信仰が民衆の間に広がっていった中世末から近世初頭にかけて、 今度は僧侶による「四国辺路」から民衆が行う「四国遍路」への世俗化がはじまります。
室町時代にも僧侶以外の旅人が四国の霊場を訪ねていた記録が残っていますが、本格的に一般庶民による四国霊場巡りが始まったのは江戸時代のこと。四国霊場の巡り方や体験記などが綴られた案内記(道中記)が出版されるようになり、修行ではなく巡礼としての四国遍路のスタイルが形成されていきました。
出版された書の中でも特に有名なのは1687年(貞享4年)に出版された『四国遍路道指南』で、これは旅の持ち物や参拝作法、宿情報まで示された、いわば四国遍路のガイドブック。現在の八十八ヶ所の札所番号と巡拝ルートも、この書によって確定されたといわれています。
さらに、この『四国遍路道指南』を記した宥辨真念(ゆうべんしんねん)は、ガイドブックの作成のみならず、旅人の泊まる庵(真念庵)や道を示す石碑(標石)などを整備して四国遍路の普及につとめた人物。その功績から「四国遍路の父」と呼ばれるなど、誰もが弘法大師の足跡を辿ってその霊威に与かれるよう、巡礼のすそのを広げる活動が民間の中から生まれてきたのもこの時代でした。
こうして、江戸時代には「四国遍路」が庶民のものとして一般化され、弘法大師空海ゆかりの地を自由に巡りながら修行する形態から、定められたルートをたどって札所を巡拝する形へと変貌していったのです。
大規模観光化した四国遍路
江戸時代に庶民のものとなった四国遍路は、近代に入りモータリゼーションの発達を経て、より大衆化されることとなります。特に、1988年に開通した瀬戸大橋の影響は大きく、四国外から大型バスで団体客が訪れるなど、四国遍路の大規模観光化が進みました。
また、交通手段が発達したことで、車を使った「歩かないお遍路さん」が多勢を占めるようになりますが、その一方で、自身の救済や供養を目的として歩みを進める「歩き遍路」の姿も依然として残るなど、四国遍路の意義とスタイルの多様化が進んでいったのもこの頃です。
国際化・多様化する四国遍路の姿
四国八十八ヶ所霊場は、始まりと終わりが円状に結ばれる循環型の巡礼路。世界的にも珍しい巡礼の形態で日本古来の巡礼文化を残す道でもあることから、海外からの関心は高く、近年では外国人の歩き遍路の姿を多く目にするようになりました。
また、国内外問わず旅行ニーズの多様化も進み、巡礼だけではなく、文化・歴史観光としての側面やバイクや自転車を使った遍路旅など、様々な目的、様々なスタイルの四国遍路が増えています。
修行から巡礼、観光へと形を変えてきた四国遍路。ベースとなる「巡礼路」の姿はそのままに、時には宗教的な祈りをささげる旅として、時には四国の文化・自然を体感する旅として、それぞれのスタイルで遍路旅に出発する時代がきています。
四国霊場の種類
四国には弘法大師空海が修行したと伝わる聖地や寺社(「霊場」と呼ばれる)が数多あります。現代で四国内を巡礼する霊場として最も有名な「四国八十八ヶ所霊場」は四国の霊場から江戸時代に八十八ヶ所が選抜されたもので、それ以外の霊場も「別格二十霊場」や「番外霊場」として巡礼の対象となっています。また、四国霊場を巡り終えたお遍路さんは、弘法大師空海が今も瞑想し続けているといわれる高野山奥の院(和歌山県)に「お礼参り」に行く習慣もあります。
また、四国遍路を様々な事情で行うことができない人に巡礼と同様の功徳を得られるようにするために、「知多四国霊場」に代表されるような、ある特定の狭いエリアで弘法大師空海ゆかりの寺院を選定し、四国遍路と同様の霊場を形成したり、島や集落の単位でお堂や石仏を設置して簡易的な霊場を形成する「写し霊場」という慣習も、全国各地で発生し、現代でも信仰を集め巡礼者が訪れる霊場が存在します。
四国八十八ヶ所霊場
現代で最も多くの人が巡礼する四国霊場は「四国八十八ヶ所霊場巡礼」です。徳島県から高知県、愛媛県、香川県と四国全域に時計回りに八十八ヶ所の霊場(「札所」と呼ばれる)が設定されています。全ての札所を巡り終えることを結願(けちがん)といい、最初の札所に戻ってお礼参りを行うと円循環が完成する世界でも珍しい回遊型巡礼路が形成されています。
四国別格二十霊場
八十八ヶ所以外の霊場は「番外霊場」と呼ばれていますが、四国別格二十霊場は、番外霊場の中から二十の霊場(寺院)が集まって1968年に創設されました。八十八ヶ所霊場と合わせて巡ると「108(88+20=108)」となる「煩悩滅却の道」として、巡礼の対象となっています。
四国八十八ヶ所霊場奥の院
四国八十八ヶ所霊場のいくつかの札所には「奥の院」が存在します。札所の起源を示すこともある奥の院には、四国遍路がたどってきた歴史の痕跡が残っており、礼拝の対象であると同時に歴史的価値も高い場所です。奥の院も巡ることで四国霊場の世界をより深く知ることができます。
高野山
弘法大師空海が開山した聖地高野山。高野山奥の院では弘法大師空海が今も永遠の瞑想を続けているといわれています。四国霊場の巡礼を終えた(結願した)お遍路さんは、高野山へお礼参りに行く習わしがあります。弘法大師空海もたどったと伝わる古代の巡礼路「町石道」が今も残り、山内には117の寺院が密集する世界的にも珍しい巨大宗教都市で、国内外から多くの巡礼者・観光客が訪れています。
知多四国霊場
愛知県の知多(ちた)半島には、弘法大師空海ゆかりの寺院がたくさんあり、四国の八十八ヶ所霊場になぞらえて、88ヶ所の寺院と開山所・番外霊場の10ヶ所を加えた98ヶ所の寺院を巡る「知多四国霊場」の巡礼文化が根付いています。長い歴史があり、多くの巡礼者を迎え入れていることから、「日本三大新四国霊場」のひとつとされています。
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四国遍路の巡りかた
四国には弘法大師空海ゆかりの霊場が数多あり、霊場の巡りかたにもいろいろなスタイルがあります。最も多くの人が巡礼する四国八十八ヶ所霊場巡礼においても、1番札所から巡礼を始める人が多くはありますが、他の札所から始める人もいますし、札所順にこだわらずに訪れやすい札所をバラバラに巡る人もいます。移動手段も徒歩、自家用車、観光バス、自転車、公共交通機関など様々な方法があります。以下でいくつかの事例や参考情報を紹介しますので、まずは四国遍路の世界に一歩踏み出し、自分なりの巡礼スタイルをみつけてみてください。
巡礼の種類と用語解説
札所(ふだしょ) | ・・・ | 巡礼する寺院のこと。お参りの証に自分の名前住所を記した札を納めたことから名付けられた。 |
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打つ(うつ) | ・・・ | お寺にお参りすること。江戸時代、お寺の柱などに名前を記した札を釘で打ちつけたことに由来する。 |
順打ち(じゅんうち) | ・・・ | 札所の番号順に巡礼すること。 |
逆打ち(ぎゃくうち) | ・・・ | 札所の番号を逆方向に巡礼すること。主にうるう年に行われ、順打ちよりも難易度が高いことから、ご利益を多く授かれるとされる。 (逆打ちの由来:【衛門三郎】民間人で最初に四国遍路をしたと伝わる人物) |
通し打ち(とおしうち) | ・・・ | 札所を順番通りに一回ですべて巡礼すること。 |
区切り打ち(くぎりうち) | ・・・ | 一回あたりに巡礼する札所をいくつかに限り、巡礼行程を複数回に区切って巡礼すること。 |
一国打ち(いっこくうち) | ・・・ | 巡礼行程を四国4県(徳島県、高知県、愛媛県、香川県)ごとに区切って巡礼すること。 |
四国八十八ヶ所霊場巡礼の移動手段と日数の目安
四国八十八ヶ所霊場をすべて巡礼する場合の総移動距離は約1200kmです(移動手段により異なります)。
徒歩、自家用車、観光バス、自転車、公共交通機関など移動方法は様々です。公共交通機関が整備されていない地域にも札所がありますので、公共交通機関を利用する場合は、区間によっては歩いたり、場合によってはタクシーの利用を検討するなど、行程と移動手段に工夫が必要になります。
徒歩の場合は1日20〜30kmを歩くのが平均的で、このペースで進むと40~60日で巡り終える計算になります。山に入って遍路道にアップダウンがある場合や、その日の天候や体調によって、歩く速度が大きく変化しますので、その日に歩く行程や状況を考慮して日々計画を立てる必要があります。歩き遍路で札所参拝だけではなく遍路道中でのいろいろな出会いや経験、時にはトラブルや困難も乗り越えていくことが四国遍路の醍醐味ともいえますが、結願するには相応の体力・精神力・対応力が必要で、難易度が高い移動手段です。
自転車に乗り慣れた人だと、1日60〜80kmの移動も可能です。歩き遍路に比べて体力負担が少なく移動速度が速いので、遍路道を少しそれて立ち寄り観光を楽しんだり、アクシデントが発生したときもリカバリーしやすかったりと、自由度の高い遍路旅ができることが魅力です。折りたたみ自転車を使えば、公共交通機関に簡単に載せることができるので、移動の選択肢の幅が広がります。
自動車でどんどん札所を巡っていけば1週間での結願も可能です。地形や天候の影響を受けることが少ないので、事前に旅程を立てやすく、周辺観光と組み合わせたり、行程を複数回にわける区切り打ちをしやすかったりするメリットがあります。体への負担や必要な時間・費用も比較的少なく済むので、幅広い層の人が巡礼可能です。
宿泊の種類と予算
遍路旅を続けていく上でとても重要なのが、どのように宿泊をしていくかです。移動するペースやかけられる予算、宿泊に求めることなど、それぞれの巡礼スタイルによって選ぶべき宿泊先が異なります。以下の宿泊に関する情報を参考に、安全で快適な遍路旅ができるように宿泊手段を選択し、計画を立てることをおすすめします。
四国には小規模の宿が点在していて、観光客があまり訪れることのない地域でも、遍路道沿いであれば昔から続くお遍路さん向けの民宿があることが多く「遍路宿」とも呼ばれます。遍路宿では、宿主や同宿の遍路経験者が遍路旅のアドバイスをしてくれることがあるなど、宿での交流も四国遍路の魅力のひとつです。小規模経営ならではのあたたかいおもてなしやお遍路さん向けのサービスなどお接待文化が根付く拠点でもあります。
宿泊者同士が同部屋のドミトリー形式があったり、必要最低限のサービスで、安価に宿泊できるゲストハウス。古民家や元商店など、元々は宿泊施設ではなかった施設を改修して営業するゲストハウスもあり、施設ごとに異なる設備や環境も四国ならではの体験になることでしょう。
お寺の境内もしくは隣接でお寺が運営している宿泊施設を「宿坊」と呼びます。昔はお遍路さんや参拝者、檀家さんなどお寺を参拝する人が大部屋やお堂の一部で雑魚寝で宿泊する形態が一般的でしたが、宿泊事情の変化で現在は個室を備え旅館のようなサービスがある宿坊が主になっています。宿泊者のニーズの変化や宿泊者数の減少により宿坊があるお寺は減少しており、四国八十八ヶ所霊場の札所のうち現在も宿坊を営業しているのは15ヶ所程度しかありません。お寺によっては朝の勤行に参加できたり、精進料理が提供されるなど、お寺ならではの体験ができる特徴があります。
四国遍路の宿泊における注意事項
四国遍路の道中には宿が少ないエリアがあり、行程上で都合よく宿泊できない場合があります。あらかじめ宿泊施設の情報を収集したり、余裕をもった行程を計画するなど、事前の状況把握と準備が必要です。
特に遍路旅初心者や歩き遍路の場合は、事前に計画した通りに進むことができない場合があり、一度計画がくるうと後の行程も大幅な変更を余儀なくされます。事前計画を元にした長期的な宿泊予約は避け、行程の進行状況によって臨機応変に対応していくことが必要です。宿泊予約後やむを得ずキャンセルや変更をしなければいけなくなった場合は、なるべく早く宿に連絡し、状況を相談しましょう。
小規模運営の遍路宿は、お遍路さんの宿泊が多い季節(春・秋)のみの営業としている場合があったり、定休日が不定期だったり、宿泊者が少ない日は食事が用意できないなど、運営方法がイレギュラーな場合があります。状況を都度確認しながら行程計画を立ててください。
四国の宿泊施設は地域や宿の運営形態によっては、経営者の高齢化や観光客・お遍路さんの減少などの事情で廃業する宿が増えています。旅するタイミングでの最新の情報を入手するように心がけてください。
野宿をする人へ
四国遍路の道中、野宿をしながら巡る人もいます。四国遍路では、野宿の巡礼者が多かった歴史があり、お寺の通夜堂(つやどう)や、遍路小屋、善根宿(ぜんこんやど)など、お遍路さんのための無料の宿泊場所があり、今なお残る「お接待文化」のひとつとして現在でも利用され続けています。
こうした無料宿は、お遍路さんが宿に困らないようにと、お寺や地元の人たちの厚意で運営されているものですが、近年では利用マナーの悪化などから閉鎖する例も増えています。野宿する場合は、施設が運営者の善意で用意されていることを忘れずに、運営者への感謝と他の利用者に対するマナーを守って利用してください。また、定められた場所以外で野宿する場合は、その場所の管理者に必ず許可を得てください。公園や道の駅など公共的で誰でも立ち入れる場所であっても野宿が禁止されていることも多いので、注意してください。
近年では自家用車で車中泊をするお遍路さんも増えていますが、上記と同様、必ず許可されている場所に駐車し、マナーを守って宿泊するようにしてください。
本サイトの宿泊関連情報
本サイトでは、四国遍路の道中で出会う宿や宿坊の情報、実際に訪れた野宿スポットなどを紹介しています。また、四国ならではの特徴的な宿を紹介する四国宿泊予約サイト「お遍路さん家」も姉妹サイトとして運営していますので、宿選びの参考にしてください。
歩き遍路と自転車遍路の参考記事
本サイトでは「歩き遍路」と「自転車遍路」を実施し、そのレポートを掲載しています。
歩き遍路の記事には、歩き遍路でしか通ることができない未舗装の古道遍路道の様子や、食事場所や宿泊場所などの旅に必要不可欠な情報などを紹介しています。
自転車遍路の記事は、四国八十八ヶ所霊場全てを巡礼し結願したものに加えて、1日の短期巡礼も紹介し、自転車ならではの楽しみ方も提案しています。
実際に遍路旅をする際の実践的な情報として、また旅の雰囲気や四国の豊かな自然や風土を感じる紀行文としてもお楽しみください。
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“ごんのすけ”の歩き遍路体験記
2015年に41日で歩き遍路を結願したごんのすけさんの体験記です。巡ったお寺の見どころや遍路古道の様子、遍路道中グルメや宿泊先、遍路旅に役立つ豆知識などを詳細にレポートしています。
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ミニベロ四国八十八ヶ所巡礼
2020年の秋に30日間をかけて折りたたみ式のミニベロ(小径自転車)で実施した四国八十八ヶ所霊場巡礼の記録です。プロの観光ガイドが3人で行程を分担し、それぞれの独自の視点で自転車遍路の楽しみ方をレポートしています。
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撫養街道自転車散歩
昭和初期までは関西から鳴門海峡を舟で渡って四国に上陸するお遍路さんが多くいました。四国の玄関口である撫養港(むやこう/現在の岡崎港)から阿波國の主要旧街道である撫養街道を通って1番札所霊山寺までを自転車でたどった記録です。
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今治6ヶ寺めぐり-ポタリング編
四国八十八ヶ所霊場の6ヶ寺が集積する愛媛県今治市。近年は自転車の街ともいわれる今治の地で、1日自転車遍路に挑戦しました。札所の参拝だけではなく、寄り道しながら進む「ポタリング」スタイルです。
1日遍路もできる短期巡礼エリア
四国八十八ヶ所霊場の札所密集地のいくつかでは、江戸時代より信仰と行楽を兼ねた短期巡礼が行われてきました。四国遍路の巡礼を試してみたい初心者、気楽にお寺巡りをしてみたい人は、短期巡礼に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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徳島県徳島市:徳島5ヶ所まいり(13番大日寺-14番常楽寺-15番国分寺-16番観音寺-17番井戸寺)
江戸時代からの信仰と行楽をかねた庶民の楽しみとして行われていた徳島の5ヶ所まいり。お寺は徳島市西部の国府町、一宮町に集中しています。全長16km。
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高知県室戸市:室戸3ヶ寺まいり(24番最御崎寺-25番津照寺-26番金剛頂寺)
空海が修行した聖地「室戸」を巡る3ヶ寺まいり。各所に空海修行の霊跡が点在しています。札所間の距離は短いですが24番と26番は山を登ります。全長12km。
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愛媛県松山市:松山8ヶ所まいり
(46番浄瑠璃寺-47番八坂寺-48番西林寺-49番浄土寺-50番繁多寺-51番石手寺-52番太山寺-53番円明寺)約2〜5kmおきに札所があるコースで、松山市中心部および道後温泉など有名な観光地を通ります。途中に48番奥の院「杖の淵」があるのでそちらもぜひ参拝を。全長28km。
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愛媛県今治市:今治6ヶ所まいり
(54番延命寺-55番南光坊-56番泰山寺-57番栄福寺-58番仙遊寺-59番国分寺)造船業で栄えた今治をめぐるコース。近年は自転車の街としても有名でレンタサイクルも充実しています。ほぼ平坦な道のりですが、58番のみ山道を登ります。全長20km。
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香川県坂出市周辺:霊峰五色台三霊場参り(80番国分寺-81番白峯寺-82番根香寺)
古の霊峰「五色台」にある3ヶ寺を巡るコースです。白峯寺と根香寺を結ぶ遍路古道は国の史跡にも指定されています。三霊場参り専用の納経帳もあります。
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香川県善通寺市周辺:七ヶ所まいり
(71番弥谷寺-72番曼荼羅寺-73番出釈迦寺-74番甲山寺-75番善通寺-76番金倉寺-77番道隆寺)江戸時代の絵図「四国八十八番寺社名勝」に「四国巡礼に準ずる」と記された、古くから存在する短期巡礼。弘法大師空海生誕の善通寺をはじめ幼少期の空海ゆかりの聖地を巡る由緒正しき巡礼路です。
お遍路用品
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四国遍路ひとり歩き同行二人(地図編・解説編セット)
Wear and Goods
四国遍路の服装と持ち物
「お遍路さん」といえば「白衣に菅笠、金剛杖」という格好をイメージすると思いますが、このような装束の歴史は意外と浅く、昭和の時代に観光バスでの団体遍路が盛んになった時期に広まったものです。四国遍路が大衆化した江戸時代では、普通の旅装束で歩む人が多かったと伝わっています。
現代においても、特に歩き遍路や自転車遍路では、白衣・菅笠・金剛杖は動きを妨げたり季節によっては不便であったりすることもあるので、通例になっている遍路装束以外の機能的で動きやすいウェアやグッズを身に着けた方が安全で快適な遍路旅ができます。
以下でいわゆる遍路装束や遍路用品の解説とあわせて、長期間の旅路により実用的な服装や持ち物もご紹介しますので、移動手段や遍路旅の形態に合う自分なりのスタイルをみつけてみてください。
お遍路さんの服装
通例になっている遍路装束
宗教的な巡礼の意識が高まり、周囲からも「お遍路さん」と認識されやすいのが、こちらの遍路装束です。巡礼中であることが一目でわかるので、お遍路さんをもてなす(お接待)地域の人との交流をしやすかったり、何か困ったことがあったときにサポートを受けやすかったりする要素もあります。
修行中の身であることを意味する格好なので、持ち物それぞれの意味をふまえて、身につけることをおすすめします。
実用性重視の服装とお遍路アレンジ
遍路道のトレッキングを楽しみたい人、宗教的要素が強い遍路装束にこだわらずに遍路旅をしてみたい人は、季節や環境にあった安全で動きやすい服装を選ぶとよいでしょう。
特に歩きお遍路さんは靴選びが重要ですが、遍路道は全体を通して平らなアスファルト舗装の道が大部分で、土の山道(岩場やガレ場はほとんどありません)が一部あるので、舗装路歩行をメインに軽登山にも対応可能な、クッション性が高く軽量のトレッキングシューズがおすすめです。山道をイメージしてハイカットの重い登山靴を選ぶ人もいますが歩き遍路には不向きです。
札所参拝時の服装に決まりはありませんが、修行者の証でありお寺での略式正装である輪袈裟を身につけるなどすれば、お寺での礼儀作法を尊重することができます。臨機応変に遍路用品を取り入れてみてください。
巡礼時の持ち物
お寺巡りの目的が多様化している今日、宗教的な目的を離れた参拝客も増えてきました。他宗教を信仰する外国人や観光目的の参拝者が同じお寺に集まる様子は、様々な背景の巡礼者を受け入れてきたおおらかな四国遍路の現代の姿だといえます。以下では信仰や修行の目的で巡礼する際の一般的な持ち物を紹介します。自身の旅の目的に照らし合わせ、必要に応じて準備してください。
参拝に使用するもの
四国八十八ヶ所霊場の札所では、本尊がまつられている「本堂」と弘法大師がまつられている「大師堂」の2ヶ所にお参りします。それぞれに、ろうそくと線香を供え、納札を納め、お賽銭をして、読経を行います。
その他必要なもの
四国遍路といえば、札所を参拝した証として、納経帳に墨書・朱印をいただき、各札所の巡礼の記録を残していくことも宗教的に重要視され、旅の記念としての楽しみでもあります(「納経」の本来の意味は「写経を納める」ことですが、現代では読経だけでも認められています)。納経帳以外にも掛け軸型のものや白衣(判衣)に朱印をいただくこともできます。
歩き遍路におすすめの地図
旅に持参するもののひとつに「地図」がありますが、スマホが普及した現代では、デジタル地図を活用したり、インターネットで情報検索したりする人が多いと思います。ですが、自分が求める情報がなかなか見つけられなかったり、四国遍路特有の情報はインターネット上にも掲載されていないものもあります。
デジタル地図では表示されない未舗装古道遍路道や弘法大師の霊跡(霊場)など、四国遍路に特化した情報が掲載されたこの「黄色い地図」は、お遍路さんのバイブル的な冊子で、道案内はもとより飲食店や宿、史跡の情報など、四国遍路の旅路に必要な情報がつまっています。
四国遍路ひとり歩き同行二人[地図編]・[解説編]
四国遍路に特化した情報がまとめられているこの黄色い冊子は「へんろみち保存協力会」の発行物で、[地図編]と[解説編]の2冊にわかれています。[地図編]には四国八十八ヶ所霊場全ての道案内(距離表示付き)が記されているほか、遍路宿、遍路休憩所、買い物スポット、飲食店および別格霊場や番外霊場までの道のりが掲載されています。[解説編]には、四国遍路の基礎知識および各霊場の解説、旅の注意事項などが掲載されています。
服装と持ち物についてのQ&A
Q:遍路用品はどこで買えますか?
四国内の札所や遍路用品販売店で買うことができます。1番札所霊山寺に併設している遍路用品店は品揃えが充実しているうえに、遍路作法も教えていただけるので、1番札所から巡礼を始める初心者は利用する人が多いです。他の札所内の売店や遍路道中の遍路用品専門店、四国内の仏具用品店など遍路用品を販売している場所は多くありますので、一度に揃えず、必要に応じて追加しながら巡礼することも可能です。最近はインターネットの通信販売で遍路用品を取り扱う店や用品の種類が増えていますので、旅の前に事前調達することも可能で便利になっていますが、金剛杖など大きな用品やたくさんの数量をそろえなければいけない用品は遠方からの移動だと運搬に苦労することもありますので、現地調達とうまく組み合わせるとよいでしょう。
Q:遍路用品をそろえる費用の目安はどれくらいですか?
金額の目安は、白衣2000円〜3500円、菅笠2000円〜6000円、金剛杖2000円〜3500円、納経帳2000円〜3500円、輪袈裟1500円〜3000円、納め札100円(100枚あたり)、これらに、ライター、ろうそく、お線香、数珠、持ち運び用のバッグなどが追加されます。数珠やバッグなど必ずしも新たに購入する必要がない場合もありますので、一通りの遍路用品は10,000円程度で揃えることができるでしょう。納経帳や納経掛軸の額装など、各人のニーズやこだわりでいろいろな種類(金額も安価なものから高価なものまで)が販売されている用品もあります。
参考商品:四国の職人が心に響く手仕事で仕上げるオーダーメイド納経帳・御朱印帳「千年帳」
https://www.sennencho.jp/
Q:車でお遍路をします。観光旅行をするときと同じような服装で巡ろうと思いますが、気をつけたほうがいいことはありますか?
駐車場からお堂まで距離がある札所が多く、また広い境内や石段など足元が不安定な場所を歩くこともあるので、動きやすい格好、歩きやすい靴であることが望ましいです。
Q:初めてのお遍路で、いろいろな用品を用意していたら、荷物がとても多くなってしまいました。
初心者は必要なものがはっきりわからず荷物が多くなるのは自然なことです。ある程度進んでみて、必要ないものは宿や運送会社(郵便局やコンビニでも郵送可能です)で送り返すとよいでしょう。だいたい2〜3日で必要な用品や荷物の量の感覚がつかめてくると思います。足りないものは現地でも調達可能なものが多いので臨機応変に対応してみてください。
How to Worship
四国遍路の参拝作法
昨今では、お寺巡りの目的は多様化し、宗教的な目的を離れた巡礼者も増えてきました。他宗教を信仰する外国人や観光目的の参拝者が同じお寺に集まる様子は、宗派を超えて様々な来訪者を受け入れてきた四国遍路の現代の姿です。
初めて四国遍路に訪れる人は、お寺での振る舞い方(作法)が気になるかと思います。以下に示すのは一般的な参拝作法ですが、信仰目的ではない場合は、読経など全てを厳守する必要はありません。ただ、これらの作法を行わない場合でも、お寺への敬意と、敬虔な気持ちでお参りしている他の参拝者への配慮は忘れないようにしましょう。
参拝手順
四国八十八ヶ所霊場巡礼での一般的な参拝手順は以下の通りです。「詳しくみる」のリンクをクリックすると、動画と解説記事も見られます。これらの参拝手順については、四国八十八ヶ所霊場会公認先達で遍路ガイド経験が豊富な野瀬照山さん監修のものですが、他にも様々な方法や解釈もあります。訪れたお寺の独自ルールがある場合は、そちらに従ってください。
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- ① 入山〜山門(仁王門)の挨拶
- 山門は俗世界と仏さまたちが暮らす聖界とをわける境界です。帽子などのかぶり物は脱ぎ(菅笠はそのままでも問題ありません)、一礼して門をくぐります。
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- ② 鐘打ち
- 鐘楼堂で鐘をつきます。鐘は必ず参拝前につき、参拝後お寺を出るときにつくと「出鐘」といい縁起が悪いとされています。鐘をつけないお寺もあるので、各寺のルールに従ってください。
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- ③ 手水で身を清める
- お寺は聖域なので、手水舎(ちょうずしゃ・ちょうずや)と呼ばれる場所で手と口を清めます。お香を塗ること(塗香)でも代用可能です。
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- ④ 本堂:灯明・線香
- 本尊がまつられている本堂で、納経前の準備と供物として、ろうそくと線香を供えます。
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- ⑤ 本堂:納札・賽銭
- 巡拝者の名刺に相当する「納札」を納札箱に納め、お賽銭をします。ここまでで納経の準備が完了します。
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- ⑥ 本堂:読経
- 懺悔文を含む一連のお経の後、般若心経を唱え、お寺の御本尊の真言、光明真言、大師宝号、回向文、祈願までの読経で、本尊への納経が完了します。
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- ⑦ 大師堂:灯明・線香、納札・賽銭、読経
- 本堂での納経の後は、弘法大師がまつられている大師堂を参拝します。本堂と同じ作法を繰り返します。読経では本堂でのお経から本尊の真言を省略します。
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- ⑧ 納経
- 納経所で朱印をいただきます。納経は本来は写経をお寺に納めることをさしますが、読経をもって納経とすることが多くの霊場で認められています。
New Attraction
四国遍路のいろいろな魅力
もともと四国遍路は、四国で修行し真言宗を開いた弘法大師空海の威徳にあずかる旅を意味しました。現在でも、弘法大師や仏教への信仰心から巡礼する人は後をたちませんが、一方で宗教的な目的を重視しない、文化体験や観光を目的とした巡礼者も増えてきています。
さまざまな背景を持つ参拝者を受け入れてきた四国遍路の歴史において、新たな巡礼のスタイルが生まれつつある昨今。人々が四国遍路に求めるものが多様化し、新しい魅力も生まれています。ここでは、四国遍路を巡る上での様々な視点と本サイトからのいろいろな魅力・四国遍路のスタイルを提案します。
アドベンチャーとしての四国遍路
古くより多くのお遍路さんが行ってきた「歩き遍路」は、現在でいうと「ロングトレイル」。特に現代の外国人お遍路さんは、未舗装の古道遍路道をネイチャーウォークとして楽しむ人も多いです。また、自転車を使ったサイクリング遍路、散歩のように自転車旅を楽しむポタリング遍路など、遍路旅にアドベンチャー要素やスポーツ要素を加えると、楽しみ方の幅がより広がります。
聖地の成り立ちを学ぶ
弘法大師空海の足跡(霊場)には、古代からの「聖地」とされる場所が数多く存在します。現在に残る札所や霊場は、日本古来の聖地を弘法大師空海が顕在化させ、後の世に伝えた場所が多いといえるでしょう。そうした聖地の意味や成立過程を意識してその地に身をおけば、四国の新しい魅力を発見できるかもしれません。本サイトでは、四国の聖地を「レイライン」をテーマに調査研究し、記事にまとめて掲載しています。
古の遍路文化に触れる
四国遍路の文化は約1200年の歴史を持つといわれ、各時代時代で遍路に関わる人達が文化を発展させるために、次の世代につなげるために活動し、形を変えながら現代まで受け継がれてきました。四国遍路の普及・発展に活躍した偉人が残した痕跡が今なお残り、そのうちのひとつに遍路道に設置された標石があります。明治初期の神仏分離・廃仏毀釈により四国遍路が混迷していた時代に、全国各地の有志が寄進し、遍路道を歩く人達のために尽力しました。古の遍路ルートを示す貴重な史跡でもあります。
長い歴史の証人
四国遍路で巡る札所のお堂や山門などの寺院建築をはじめ、神社建築や長い歴史をもつ公共建築、古民家など、四国にはたくさんの歴史的建造物が遺っています。長い期間をそれぞれの時代の人たちが、建築物を改修したり保護したりして、次世代につなぐ努力をした結晶として、現代にその貴重な文化的価値が引き継がれています。遍路道中で、歴史的建造物にぜひ着目いただき、四国の歴史や文化に触れてみれば、必ずや新しい発見があることでしょう。
四国遍路はとてもシンプル!
普段の生活では宗教を意識することは少ないけれど、お寺でお参りすると気持ちが軽くなったり、リフレッシュできるという声をよく聞きます。四国に数多く存在する弘法大師空海ゆかりの霊場を訪れてその歴史を紐解けば、知的好奇心が刺激されることでしょう。自然豊かな古道遍路道を歩むことで心身ともに健康になったり、道中での偶然の出会いや地域の人のあたたかいお接待が一生の思い出になるかもしれません。
四国遍路に敷居の高さを感じている人も、まずは自分なりの一歩を踏み出し、オリジナルの四国遍路のスタイル・楽しみ方をみつけてみてください。
Useful Information
四国遍路のお役立ち情報
四国遍路を旅するには、様々な情報が必要になります。道に迷わないように(迷いながら進んで偶然の出会いがあるのも四国遍路の魅力のひとつではありますが)遍路道の案内を参考にしたり、食事をする場所や宿をみつけられなければ旅を続けることはできません。さらに、四国遍路に関する豆知識や道中の観光情報なども知っていれば、旅がより楽しいものになります。
本サイトでは、専門知識をもった複数の寄稿者がそれぞれの視点で、旅の必須情報から旅をもっと楽しむ観光情報までを発信しています。
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遍路道中に出会える宿
四国遍路道中にある評判の良い宿を取材し、オーナーの思いや宿の特徴などを記事で紹介したり、実際に宿泊した場所をレポートしています。
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遍路道中のご当地グルメ
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遍路道中に便利な道の駅
休憩や食事、地域特産品購入や観光案内と今では旅に欠かせない存在となった道の駅の情報を四国遍路の視点からまとめています。
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遍路道中の立ち寄り湯
遍路道中の旅の疲れを癒してくれて、休憩や観光の拠点にもなっている様々なタイプの立ち寄り入浴施設をご紹介しています。
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遍路道
遍路道中の見どころや体験レポートの記事をまとめています。遍路古道の状況もこちらを参考にしてください。
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遍路豆知識
四国遍路に関する知識や経験をより深める豆知識を紹介しています。四国遍路を多角的に掘り下げます。
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“ごんのすけ”の歩き遍路体験記
2015年に41日で四国八十八ヶ所霊場巡礼を結願したごんのすけさんの歩き遍路体験記です。たどった道順や立ち寄り場所など旅の詳細がわかります。
お遍路用品
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四国遍路ひとり歩き同行二人(地図編・解説編セット)
遍路装束の解説