令和7年(2025)に放映のNHK連続テレビ小説「あんぱん」の舞台は高知県で、モデルとなった漫画家・やなせたかし先生ゆかりの地を訪ねる旅が人気です。香美市にある土佐山田駅は、列車からアンパンマンラッピングバスの乗換駅で、観光拠点になっています。

アンパンマン観光の拠点になるのが「土佐山田駅」で、ここから「やなせたかし記念館アンパンマンミュージアム」行きの路線バスが発着しています。
アンパンマン観光を担うバスは国鉄の末裔

列車を下りたらアンパンマンベンチがお出迎えしてくれますが、設置されているのは2・3番線のプラットホームなので、少し注意が必要です。
※土佐山田駅の基本情報に関しては、以下リンクの記事でご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
土佐山田駅に本州方面からの列車が発着するのは1番線なので、アンパンマンベンチへ行くには跨線橋を渡らないといけません。アンパンマンミュージアムへ向かう路線バスは、ある程度余裕をもって特急列車に接続しているはずですが(全便ではありません)、そんなこんなしていたらバスは発車してしまうかもしれません。列車の到着とバスの発車時刻を確認してからアンパンマンベンチを楽しまれてください。

土佐山田駅内の跨線橋を渡っている時に上からバスが見え、車両検査等特別な事情がない限り、当路線にはアンパンマンラッピングのバスが運用されます。
アンパンマンラッピングバスの行先である「美良布(びらふ)」は、やなせたかし先生の実家及びアンパンマンミュージアムがある地域です。バス乗り場は土佐山田駅を出てすぐのところにあるので、迷うことは無いと思います。

土佐山田駅前から美良布へは約11km、運賃は550円で、路線名称はJR四国バス大栃(おおとち)線です。
バスがアンパンマンラッピングなので観光路線と思われがちですが、間には高知工科大学があるなど地域住民にとって大切なバス路線です。
運賃表の左から二つ目の地名は「神母の木」と書いて「いげのき」と読み、高知県屈指の難読地名です。現在の国道195号が整備されるまでは、当地の道に代わるものは物部川の水運でした。神母の木は山の物資と里の物資が集まる川の港として栄えた街です。中でも鋸や土佐打刃物の生産は県下一を誇ったそうです。漫画家はらたいらさんの実家は神母の木にあります。
バス路線の歴史は古く、昭和10年(1935)1月に開業した省営自動車大栃線に由来します。「省営(しょうえい)」とはJRの前々身の名称で、鉄道省を省略してそのように呼ばれていました。それが戦後国鉄バスになり、民営化後はJR四国バスに継承されて現在に至ります。
JR四国発足当時は四国各地にいくつか存在した国鉄バス由来の路線ですが、現在は当路線と愛媛県松山市から久万高原町の間で運行されている久万高原線の2路線を残すのみになりました。後者は松山市街から44番札所大寶寺へ向かう唯一の公共交通機関でもあります。
※私が書いている別サイトの記事で、国鉄バス由来の久万高原線終着駅「落出」に関して紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
https://soraumi-doggie.com/stochide-ehime/

平成12年(2000)に開始されたアンパンマンラッピングには、赤塗装と薄紫塗装があり、かつては青塗装もあった気がします。
国鉄バスとは、鉄道敷設の計画がある地域などでそれが時間を要すると判断された場合に、バスを用いて先行開業の形が取られたものが一般的です。地形や技術面から鉄道工事が見送られて、当初からバス路線として開業するケースもありました。
特徴として停留所とは呼ばず「駅」もしくは「自動車駅」と呼びます。なのでここでは終点の美良布は「美良布駅」の名称で、その形状も駅のような造りです。鉄道と同格に扱う観点から、民間から発刊される時刻表にもバスのダイヤが掲載されていました。
路線名称の「大栃」は美良布よりまだ先にある旧物部村の中心集落で、路線名通り近年までそちらが終点でした。しかしながら令和2年(2020)4月1日をもってJR四国バスが美良布-大栃から撤退し、現在同区間は香美市のコミュニティバスによって運行されています。
新しいアンパンマン観光の動き

土佐山田駅前には香美市観光案内所があり、情報収集に訪れ、職員さんにアンパンマン観光の近況を尋ねてみると、好調の様子でした。
アンパンマンミュージアムへの交通手段は、自家用車が大多数で、本州からアンパンマン列車(特急南風)で訪れる人は目立って多いわけではない、とのことでした。
しかしながら、子どもさんと一緒に来県している人たちの中には、高知駅付近に自家用車を停めてそこからアンパンマン列車に短距離乗車して土佐山田駅で下車、アンパンマンバスに乗り換えてやなせたかし記念館アンパンマンミュージアムへ向かう人達もいるそうで、それはこれまであまりなかった動きだとおっしゃっていました。バスより列車のほうが人気とのことで、そこはわかる気がします。
NHK連続小説「あんぱん」は大人が興味ある部分でしょうし、アンパンマンは子どもさんに人気の分野で、それぞれが楽しい旅行になると良いですね。
土佐山田駅グルメ

土佐山田駅の目の前にクラシックな唐揚げ屋さん「ちきんくらぶ」があります。
最初は駅前の自転車預かり所と思って気に留めていなかったのですが、なんか良い匂いがする?お店がある?釣られて来てみたら、大きな鶏の唐揚げがゴロゴロ並べられているじゃないですか。価格は120円~とリーズナブルで、鯛出汁とあご出汁の2種類があったので、試しに一つずつ購入して食べました。それぞれ味が異なりどちらもとても美味しかったです。
帰宅してから調べたのですが、こちら「ちきんくらぶ」さんは、インターネット上の口コミでは称賛する評価しか見当たらないほど人気のお店でした。これは高知に来た時はぜひまた買いに来たいと思いましたが、営業日が土日の週2回だけで、県外からまた訪れるにはなかなかのハードルの高さです。知ってたらもうちょっと買ったのになあ、と後悔しました。
アンパンマン観光であってもなくても、土日に土佐山田駅へ来ることがありましたら、ぜひ鶏の唐揚げを食べてみてください。
【「土佐山田駅」 地図】