一に焼山、二にお鶴、三にお龍… 遍路道で山坂がきつい場所を「遍路ころがし」と呼びますが、とりわけ山のお寺が多い徳島県では、これら3つの札所を「阿波三大遍路ころがし」と呼んでいます。そのうち「二」の20番札所鶴林寺は鶴とゆかりが深い山岳霊場です。
一に焼山…12番札所焼山寺 二にお鶴…20番札所鶴林寺 三にお龍…21番札所太龍寺
—– 記事に登場する主な地名・単語
第20番鶴林寺(だい20ばんかくりんじ)
第12番焼山寺(だい12ばんしょうさんじ)
第21番太龍寺(だい21ばんたいりゅうじ)
遍路ころがし(へんろころがし)
地蔵菩薩(じぞうぼさつ)
仁王像の代わりに…
「二のお鶴」こと20番札所鶴林寺は、その名の通りツルに縁が深い札所。 境内への入口である山門には通常は一対二体の仁王像(金剛力士像)が立ち、巡礼者に混じって悪人が聖域に入り込まないように番人を務めているのですが、鶴林寺に限ってはその役目は鶴。阿吽の呼吸を演じる二羽の鶴をご覧になり、境内へ挨拶して入らせてもらいましょう。
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21番札所太龍寺から見える三重塔
参拝はまず本堂へ。 本堂の横に鶴林寺のシンボル、三重塔があります。創建は文政6年(1823)と古い。 >> ドイツ人シーボルトがオランダ商館員として来日した年
鶴林寺の標高約495m(鶴林寺山は516m)は、四国八十八ヶ所全札所の中で7番目の高さ。続く21番札所太龍寺がある太龍寺山と対になる形で寺が位置しますが、太龍寺から鶴林寺はこの三重塔のおかげで見ることができます。 対して、鶴林寺から太龍寺は寺がある山自体は見えているのですが、境内は林に囲まれた中にあるので、建物は見えません。
本尊降臨の伝説
本堂前にも一対二羽の鶴が居ます。鶴林寺の始まりである寺伝に登場するのですが、
その昔、猟師が猪を追って矢を放ち、命中したのか血のしたたる痕を追ってこの場所に来たところ、こちらの杉の木の下で胸に矢が刺さり血を流している地蔵菩薩が、二羽の鶴に保護されていた。 それを見た猟師は、殺生を悔やみ改心して仏道に入る。鶴に代わって地蔵菩薩を丁重に祀る堂宇一式を建立した。
重要文化財に指定されている平安時代後期作の地蔵菩薩像(明治44年指定時の名称は國寶)の胸には矢を負った傷が残っているとされますが、現在は秘仏となっているため見ることができません(京都国立博物館に寄託)。 表情などの御姿は、本堂と三重塔の前にある青銅の地蔵菩薩像が姿形そのものといわれています。
20番札所鶴林寺には、遍路の歴史を物語る中務茂兵衛の標石も残されており、この貴重な史跡に関しては、以下リンクの記事でご紹介しています。
【20番札所鶴林寺門前】第20番奥の院への方向を示す中務茂兵衛標石
【20番札所】 | 霊鷲山 宝珠院 鶴林寺(りょうじゅざん ほうじゅいん かくりんじ) |
宗派: | 高野山真言宗 |
本尊: | 地蔵菩薩 |
真言: | おん かかかび さんまえい そわか |
開基: | 弘法大師 |
住所: | 徳島県勝浦郡勝浦町生名鷲ヶ尾14 |
電話: | 0885-42-3020 |