36番札所青龍寺から須崎市街へは複数ルートからの選択になります。空海の時代から残るといわれる本当の遍路道は、実は巡航船で海の上を進むルートだったのです。
36番札所青龍寺から須崎市街へは複数ルートから選択
36番札所青龍寺を参拝し、私は36番奥の院近くの「国民宿舎 土佐」に宿泊し、翌朝須崎市街方面に出発しました。
ここからは複数ルートから選択になり
●宇佐大橋を打ち戻り、浦ノ内湾北岸(県道23号)を進むルート
→距離が少し長くなるが、負担の少ない平坦な道
●横浪半島を横浪スカイライン(県道47号)を進むルート
→アップダウンがあり、少々苦労はするが、半島からの海・湾の景色を楽しめる道
から選ぶのが一般的です。
なのですが、私が選択したのは、宿に掲示されていた新聞記事で発見したもうひとつのルートで、
●浦ノ内湾を巡航船で進むルート
です。
新聞記事や宿の支配人さんの話によると、空海が青龍寺を開創した時代に、このあたりは道がほとんど整備されておらず、弟子をこの地に残して渡し船を出すように命じ、遍路道としても船を使うことが認められていたそうです。
それが現代まで残っているのが、浦ノ内湾の埋立~横浪を結ぶ巡航船なのだそうです。
ということで、この道が公式遍路道であり、旧道であると理解し、貴重な体験でもあるので、遠慮なく海の上を進ませていただくことにしました。
宿から埋立の巡航船乗り場へは、進んできた宇佐大橋を打ち戻りになるので、支配人が車で送っていただけるとのお言葉にも甘えて、ワープもしてしまいました。
巡航船乗り場見逃しと運航時間に要注意
巡航船は「埋立」の乗り場から乗船しますが、ここが少々わかりづらいので、見逃さないように注意が必要です。目印は「有限会社 武市水産」で、この水産加工場の裏側海沿いに乗り場がありますが、県道からは直接見えません。
ちなみに、この乗り場手前に今は使われていないバス停を改造した遍路小屋があり、畳があって宿泊もできるようになっていますが、ここは「国民宿舎 土佐」の支配人が整備して、地元の方々によって運営・管理されているとのことです。
たいへんありがたい施設で、ここで一夜宿をお借りして、翌朝巡航船に乗るのもよいと思います。
また、この巡航船は1日に4往復の運航で便数が少ないので、その時間に合わせて歩行計画を立てる必要もあるので、しっかり事前にチェックをしておいてください。
埋立発は「7:05」「10:05」「13:47」「16:00」で、日曜・祝日は運休であることも要注意です。
埋立から横浪の運賃は620円、約1時間の船旅です。
※須崎市の巡航船案内ページのリンクもはっておくので、ご参照ください。
須崎市営巡航船: http://www.city.susaki.lg.jp/life/detail.php?hdnKey=340
浦ノ内湾は真鯛の養殖がさかん
ということで、埋立の乗り場から出航です。
船には「国民宿舎 土佐」から一緒だった先達さん5人とともに乗りました。
公認先達の中で最も上級の「大先達」さんがいらっしゃったり、83歳にして一日5時間のウォーキングトレーニングで歩き遍路を続けている方がいらっしゃったり、経験豊かな皆さまにいろいろな話を聞かせていただきました。
公認先達にのみ許される朱塗りの錫杖金剛杖もまじまじ拝見することができました。
このあとの道程でもお会いすることが多く、2月の歩き遍路が少ない時期の中では、貴重なご縁をいただけたのが、この巡航船でもありました。
船で進んでいく浦ノ内湾は、太平洋から横浪半島で完全にさえぎられているので、とてもおだやかな海面で、湾内にはいかだや海上小屋がたくさんあって、真鯛の養殖がさかんなのだそうです。
この巡航船ですが、入り組んだ浦ノ内湾に複数の船着場があり、地元の方々の通勤、通学、生活の足として活用されているそうです。
この日は、それぞれの乗り場を船上から確認して、乗船客がいたら着岸するそうなのですが、この日は横浪まで誰も乗船客がおらず、ノンストップで進んでいき、1時間ほどで横浪乗り場に到着です。
青龍寺から歩くと約14kmの距離を1時間の船旅でワープ完了です。
須崎市街には「岩不動」経由で
横浪乗り場からもさらに2ルートからの選択になり、私は先達さんにオススメされた「岩不動」経由の山の中を進むルートを選びました。
のどかな山の中の舗装県道を4kmほど進むと番外霊場「仏坂不動尊 光明峯寺(ほとけざかふどうそん こうみょうみねじ)」があり、このお寺は空海がこの地の山の中を進んでいたときに、大空に紫雲がたなびき、諸仏が現れ、感激して目の前にあった岩に触れると、岩に不動明王が現れたという伝説が残っています。
川沿いを進むもうひとつのルートに比べるとアップダウンはありますが、高知県のルートでは少ない山の雰囲気を感じることができる風情のあるルートですのでオススメです。
横浪から約6km、90分ほどで須崎市街に到着です。
青龍寺からは、巡航船の運航タイミングと歩行ペースが合致すれば、昔から続く海上の遍路道をぜひ選択してみてください。他のルートもそれぞれに良いところがあるそうなので、私は次回は別ルートを歩いてみたいと思っています。
【須崎市営巡航船 問い合わせ先】
須崎市企画政策課企画政策係: 電話 0889-42-5691
【須崎市営巡航船 埋立待合所(有限会社 武市水産 裏) 地図】