82番札所根香寺からの山下り道は「盆栽通り」という盆栽生産が盛んな地域です。その先にはたくさんのお地蔵さんがお遍路さんを見守ってくれていて、ありがたい休憩スポットもあります。
「根香寺」からの山下りは「盆栽」をながめながら
82番札所根香寺参拝後は、標高400mから一気に山を下ります。
カーブが多い山道舗装路を歩き、時々未舗装路でショートカットしながらの下り道の途中では、ふもとの景色を眺めることができるビュースポットがいくつかあります。
この下り道の途中で、興味をひかれる看板を発見しました。
ここは「鬼無(きなし)」という地域で、実は世界一の盆栽の生産地なのだそうです。
200年以上前から瀬戸内海に自生している松を掘って鉢植えにして販売していたそうで、全国の松盆栽の生産の80%を占めているとのこと。
近年は海外でも盆栽人気が高まり、鬼無の盆栽は世界のBONSAIとして輸出されることも多くなっているようです。
ちなみに「鬼無」という地名は、この地域に伝わる「桃太郎」伝説と関連していて、桃太郎がおじいさんとおばあさんと住んでいたのがこのあたりの地域で、鬼退治をして鬼がいなくなったことから鬼無という名になったという説があるそうです。
遍路道からは少し外れますが「桃太郎神社」が近くにあり、桃太郎と猿・雉・犬、おじいさん・おばあさんのお墓があるようです。
お地蔵さん密集地域を歩く
鬼無にはJR鬼無駅があり、線路を渡って南東方向に進んでいきます。
このあたりの入り組んだ遍路道沿いにはお地蔵さんがたくさんあり、地元の方々が維持管理・お参りを長くされてきた様子がうかがえます。
ふたつほど特徴的なお地蔵さんをご紹介します。
まず、1カ所目が線路を渡ってすぐの細道沿いの立派なお堂を構えるお地蔵さんです。
2カ所目は、少し進んだ先の「岩田神社」を右折した先にあるお地蔵さんです。
このような、台に乗った大きなお地蔵さんは遍路道沿いで時々見かけますが、「高地蔵(たかじぞう)」というそうで、特に川沿いにおられることが多く、川が氾濫した際にも流されないように台の上に安置されていたそうです。
このお地蔵さんの手前には確かに川があり、橋で対岸に渡ってきてすぐのところでした。
その他にもお地蔵さんや地蔵堂がたくさんありますので、どのようなお地蔵さんなのかを確かめながら歩いてみるのもよいと思います。
「接待橋」と「飯田お遍路休憩所」
先ほどご紹介した細道お堂のお地蔵さんと高地蔵の間の道のりで、川を渡ります。
この川は「本津川(ほんづがわ)」といい、鬼無の桃太郎伝説においては、おばあさんが洗濯に出かけて、どんぶらこっと桃が流れてきたところなのだそうです。
この川をまたぐ「永代橋」は、昔は「接待橋」と呼ばれていて、遍路道にかかる橋で、地域住民の方がお遍路さんにお接待をしていたようです。
そして、そのお接待文化を現在にも残す休憩所がすぐ先にありました。
私が通ったのが早朝だったので、開いていませんでしたが、とても立派な施設で、根香寺からの山下りで疲れた足を休めるのに立地も最高です。
このような休憩所を見ると、地域の方々に助けていただきながら歩かせていただいていることを強く実感します。
【「飯田お遍路休憩所」 地図】
ということで、根香寺からの山下りとふもとの鬼無地域は、「盆栽」「桃太郎」「お地蔵さん」「休憩所」と、意識しながら歩けば、ネタが豊富なおもしろい遍路道です。
次の83番札所「一宮寺」までは、そこそこ距離がありますので、地域の見どころやお接待文化に触れながら、ゆっくりと進みたいものです。