【55番札所南光坊】今治市の中心部の伊予一宮別当寺は四天王が守る山門と納経所に注目

今治市の中心部にある55番札所南光坊は、伊予一宮の別当寺として創建された歴史あるお寺です。四天王が守る珍しい山門と、運が良ければ納経所でうれしい出会いがあるかもしれません。

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54番札所延命寺からさわやかな墓地をぬけて今治市中心部へ

54番札所延命寺を参拝したあとは、今治市の中心部に向けて進みますが、お寺の境内の看板でもおすすめされている旧遍路道をぜひ歩いてみてください。

延命寺 旧遍路道地図

私が訪れた際は延命寺が大改修中だったため、危うくこの看板を見逃すところでした。進んできた県道38号に戻らず、境内から山手を東方向に進むのが旧遍路道です。

上の写真の地図にもあるように、お堂やお地蔵さま、古い道標が点在している風情のある住宅街を抜けていくと、遍路道ではあまり見ることのないひらけた小高い丘が見えます。

延命寺 大谷霊園 階段 旧遍路道

こういう整備された階段をのぼることは遍路道では意外と少ないです。しかも公園のようなさわやかな丘に導かれていきます。

延命寺 大谷霊園 広場 旧遍路道

階段をのぼったきれいに整備された広場があります。「遍路道」の札がちゃんとかかってるれっきとした旧遍路道です。

延命寺 大谷霊園 墓地 旧遍路道

このさわやかな丘は、実は墓地だったのです。遍路道で恐ろしい雰囲気の墓地を通り抜けることは何回かありましたが、こんなに明るくさわやかな墓地は初めてです。

「大谷霊園」のある丘を下ると、今治北高校があって県道38号に戻ってきます。
ここまでたどり着けば、今治市の中心街に到着で、55番札所南光坊は目の前です。

 

南光坊は伊予一宮「大山積神社」の別当寺

55番札所南光坊は、今治市役所やJR今治駅がすぐ近くの今治市の中心部に位置しています。
江戸時代には今治城の城下町として発展したエリアでもあるので、道は碁盤の目のように張り巡らされていて、前出の今治北高校の前から南光坊までもいくつも道はあるのですが、ぜひ以下地図のルートを進んでみてください。

※「今治北高校交差点」から県道38号をまっすぐ進み、「南光坊西交差点」を右折して、国道317号に入ります。

国道317号に入って右手に南光坊とも関わりが深い「別宮大山積神社(べっくおおやまづみじんじゃ)」があります。
この神社は、瀬戸内海に浮かぶ大三島(おおみしま)にある伊予一宮「大山積神社」の別宮として大宝3年(703年)に創建されたそうです。
そして、お遍路的にたいへん興味深いのは、大三島の「大山積神社」が元々札所だったとのことで、島に渡って参拝するのが不便だったために、鎌倉時代に「別宮大山積神社」が前札所となり、別当寺(神仏習合が行われていた時代に、神社を管理するために置かれた寺のこと)の役割を果たし納経をつかさどっていたのが現在の南光坊とのことなのです。
阿波一宮の別当寺である13番札所大日寺、土佐一宮の別当寺である30番札所善楽寺でも、神社との関わりに注目しましたが、ここ南光坊の神社と関係する歴史は深いものがありそうです。
ご興味ある方は、詳細を調べてみるとおもしろいかもしれません。
私からの情報は、概要だけにとどめておきます。
※13番札所大日寺、30番札所善楽寺の詳細情報は、以下リンクの記事もぜひご覧ください。

【13番札所大日寺】神仏習合の歴史を感じるお寺

【30番札所善楽寺】土佐一宮「土佐神社」の「別当寺」としての混迷の歴史を学ぶ

 

南光坊には四天王が守る「山門」からアプローチ

県道38号から国道317号のルートをオススメした理由のメインは、ぜひ「山門」をくぐってお寺にアプローチしてほしかったからなのです。
南光坊の山門は、持国天、増長天、広目天、多聞天の四天王が守る珍しい門で、その迫力に圧倒されます。

南光坊 山門 表 四天王

国道317号側から見た山門の表の様子です。山門をくぐることなく境内に入ることができる道も複数あるのですが、ぜひ山門の迫力を体感してから、お寺にアプローチしてください。

南光坊 山門 裏 四天王

この写真は、お寺の境内から見た山門の裏の様子です。「四天王」が表裏両方を守っているので、表と裏の様子が似ていますね。

南光坊 山門 持国天

目を見開き、今にもしゃべりだしそうな表情の「持国天」

南光坊 山門 増長天

剣を振り上げた姿が勇ましい「増長天」

南光坊 山門 広目天

目を閉じ、巻物をもって、人を諭すがごとき「広目天」

南光坊 山門 多聞天

にらみつけているようにも見えながら、広い心で受け入れてくれそうな「多聞天」

 

四国霊場唯一の御本尊「大通智勝如来」と空襲から住民を守った「大師堂」

南光坊の見どころはたくさんあるのですが、山門に続いて注目なのが、御本尊が「大通智勝如来(だいつうちしょうにょらい)」であることで、四国霊場の御本尊としては唯一だそうです。
大通智勝如来は、「釈迦如来」の過去世における父であり師ともされていて、「法華経第七化城喩品」に説かれているとのことです。

南光坊 本堂

ひらけた境内の中に多くのお堂があり、その中でも御本尊「大通智勝如来」がいらっしゃる本堂は堂々とした佇まいです。

また、「大師堂」は、第二次世界大戦時の空襲で境内の大部分の堂宇が焼失した際に、「金毘羅堂」とともにその戦禍を免れた歴史ある建物で、数多の焼夷弾が境内に落とされる中、そのいずれもが大師堂の屋根を滑り落ち、堂内にいた避難者の全員が無事であったと伝えられているありがたいお堂なのです。

南光坊 大師堂 山門

山門から境内に入ってすぐの大師堂は、屋根飾りと正方形のすっきりした形が特徴で、このお堂が戦禍を免れたと思うと感慨深いです。

 

運が良ければ納経所でお楽しみイベントがあるかも

そして、南光坊は歩き遍路さんの一部に熱烈なファンがいるのですが、その理由は納経所にあります。
私が南光坊にたどり着いたのは、納経所終了時間の17時直前で、参拝前に無理言って先に納経所に駆け込んだのですが、そこにいらっしゃったお寺の方がとても親切で、いろいろな話を聞かせてくださったり、特別サービスをいただいたりしてしまいました。
熱烈なファンを集めるのは、この納経所にいる方が理由なのです。
諸事情あってここでは詳細情報を公開することを控えますが、納経所でのお寺の方とのコミュニケーションは、最近多い観光バス遍路さんは味わうことができない(ツアー添乗員がまとめて納経)ことで、札所で観光バスツアーの一行を見かけるたびに、もったいないことをしているなと思ったりしていました。
ここ南光坊はその最たる例で、納経所での時間のうれしさ楽しさは札所の中でNo1でした。

南光坊 納経所

納経所でどのような出会いがあるかお楽しみ。ただし、必ず遭遇できるわけでもなく、混み具合にもよるので、運試ししてみてください。

 

55番札所南光坊は、今治市の中心部に位置する見どころが多いお寺です。
伊予一宮「大山積神社」の別当寺の歴史を感じ、四天王が守る山門からアプローチして、運が良ければ納経所での素敵な出会いが待っているかもしれません。

 

【55番札所】  別宮山 金剛院 南光坊(べっくざん こんごういん なんこうぼう)
宗派: 真言宗醍醐派
本尊: 大通智勝如来
真言: なむ だいつうちしょう ぶつ
開基: 行基菩薩
住所: 愛媛県今治市別宮町3丁目1番地
電話: 0898-22-2916

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この記事を書いた人

お遍路さん初心者です。  2015年1月20日(火)に1番札所を出発し、2015年3月1日(日)に41日間で88番札所で通し歩き結願を果たすことができました。 2015年4月12・13日の2日間で、開創1200年で盛り上がる高野山にお礼参りにも行ってきました。 自身の通し歩き遍路体験を元にお役立ち情報を発信しています。