かつては寺領が室戸全域にわたり隆盛を極めた26番札所金剛頂寺では、いかついお大師さまがお出迎えしてくれます。お大師さまが炊いた米が一万倍になり、住民を飢えから救ったといわれる「一粒万倍の釜」の伝説がありました。
再度の山登りはさすがに心構えをして臨む
室戸市街の25番札所津照寺を出発し、街中といえる風景は束の間、再度海岸線の田舎道に復帰です。
約3kmほど進むと26番札所「金剛頂寺」への道標に従い、海岸から山の方向へ。
24番札所最御崎寺の想定していなかった突然の山登りは精神的にダメージを受けましたが、ここは「頂」というぐらいなので登りを覚悟していた分、気持ちは楽に山に登り始めることができました。
ちなみに、札所を通過してからの山下り道も野性味あふれる未舗装遍路道ですが、ここでは野うさぎと遭遇しました。
野生動物といえば、ここまでに2度「猿」と遭遇しましたが、それに比べればかわいいもんで、写真を撮ろうとスマホを取り出しましたが、もちろん間に合わず、一瞬で走り去ってしまいました。こういう旧道は歩き遍路ならではの体験です。
室戸全域をおさめていた通称「西寺」
現在の室戸市内には、ここ金剛頂寺と最御崎寺、津照寺の3つの札所がそれぞれが地域で重要な役割を果たし、立派な縁起があるのですが、なかでも金剛頂寺は平安後期には室戸全域を寺領におさめる隆盛をほこっていたそうです。
室戸岬の東西に対峙するお寺として、金剛頂寺は「西寺(にしでら)」、最御崎寺は「東寺(ひがしでら)」、間にある津照寺は「津寺(つでら)」の通称で、地域の方々に親しまれ、信仰されてきました。
空海が平安時代に全国各地を旅したときに使用していた唯一の遺品「金銅旅壇具」が収蔵されていたり、国指定重要文化財が多く遺っていることからもかつての寺勢を感じることができます。
境内には、室戸で盛んだった捕鯨によって捕えられた鯨の供養塔があったり、現在は枯れてしまっていますが大きなこぶのある「がん封じの椿御霊木」があり、それを撫でると癌封じなるといわれていたり、地域の人にとっていろいろな意味での信仰・祈願の対象になっているようです。
札所の大師像の中でも屈指のいかつさと「一粒万倍の釜」の伝説
わたし的なお寺の見どころとして印象に残っているのは「修行大師像」と「一粒万倍の釜」です。
まずは金剛頂寺でお出迎えしてくれる修行大師像の写真をご覧ください。
ここまでの道のりでは、5番札所地蔵寺のあたたかく見守ってくれるお大師さまや、「焼山寺への遍路ころがし」の「一本杉」でお出迎えしてくれるお大師さま、18番札所恩山寺の後ろ姿を拝むお大師さま、あたりが印象に残っていたのですが、ここ金剛頂寺のお大師さまのいかつさは強烈に目にやきついています。
このいかつさと関係しているのかはわかりませんが、お大師さまが炊いた米が一万倍になり、住民を飢えから救ったという「一粒万倍の釜」が残っており、大きな包容力で地域を救ってきたお大師さまがしのばれます。
ここで参考情報ですが、金剛頂寺には立派な「宿坊」があり、遍路中に出会った公認先達さんが、札所宿坊の中でトップレベルの環境とサービスの良さだということでした。
私は宿泊していないので評価はできませんが、ご興味ある方はぜひお試しあれ。
玄関前にある「丸型ポスト」がいい味を出していて、注目ポイントです。
遍路道中に私は丸型ポストを見つけると、必ず写真に残していったのですが、ご興味ある方は以下タグリンクの記事もぜひご覧ください。
お遍路道中の中でも重要な意味を持つ室戸岬の歴史を学びつつ、いかついお大師さまに勇気をもらい、まだまだ始まったばかりの土佐の國「修行の道場」をひた歩きます。
【26番札所】 | 龍頭山 光明院 金剛頂寺(りゅうずざん こうみょういん こんごうちょうじ) |
宗派: | 真言宗豊山派 |
本尊: | 薬師如来 |
真言: | おん ころころ せんだり まとうぎ そわか |
開基: | 弘法大師 |
住所: | 高知県室戸市元乙523 |
電話: | 0887-23-0026 |