88番札所大窪寺から1番札所霊山寺に向かうルートのひとつ、県道2号線を南下し10番札所切幡寺方面に抜けるルートの途中に「犬墓大師堂」があります。弘法大師空海を守った犬の伝承があり、地域の人が大切に守り続けている史跡です。
香川徳島県境「境目」から県道2号線を南下するルート
88番札所大窪寺から1番札所霊山寺に向かうルートは複数ありますが、香川徳島県境「境目」をこえて、県道2号線を南下して10番札所切幡寺方面に向かうルートもそのうちのひとつで、特に近年はこのルートを選択するお遍路さんが多いように思います。
※境目周辺の様子は、以下リンクの記事で紹介されていますので、こちらもぜひご覧ください。
【阿波-讃岐の県境】香川県と徳島県の県境「境目」に立つ中務茂兵衛最晩年の標石
【88番札所大窪寺→1番札所霊山寺】香川徳島県境「境目」の歩き遍路古道
境目から約4km進んだ先の岩野トンネルを通る手前に湊庄市記念碑公園があり、特に歩きお遍路さんにとってはとても充実した休憩スポットになっています。
公園名に名前がついている「湊庄市(みなとしょういち)」は、大正11年(1922年)に現在の阿波市市場町で生まれ、柔道家として活躍し、のちに徳島県議会議員・徳島県議会議長も務めた、阿波市の名士です。
「犬墓大師堂」への分岐交差点
湊庄市記念碑公園と岩野トンネルを過ぎ、県道2号線をどんどん南下していきます。県道2号線は日開谷川(ひがいだにがわ)沿いを通るよく整備された道で、通りやすく谷あいの自然の景色も楽しむことができます。
湊庄市記念碑公園から約3km進んだ先に、以下地図・写真の交差点があります。10番札所切幡寺方面には直進なのですが、歩きお遍路さんは右に曲がって細い農道に入りぜひ立ち寄っていただきたい場所があります。
分岐交差点から約400m進んだ先にあるのが、おすすめの立ち寄りスポット「犬墓大師堂(いぬのはかだいしどう)」です。
弘法大師空海を守った犬を祀る「犬墓大師堂」
弘法大師空海にまつわる地域の伝承が元になり、犬墓大師堂が建立されました。
弘法大師空海が犬を連れてこの地の山を訪れた際に猪と遭遇し襲われ、その際に犬が空海を猪から守りましたが、誤って滝壺に落ちて命を落としてしまいました。その犬の死を憐れんだ空海が犬の墓を建てて、山を犬嶽、土地を犬墓と名づけたという物語がこの地域で伝承されているそうです。
江戸時代中期に地域の庄屋が大師堂を築き、犬の墓と伝わる自然石を大切に守り続けているそうです。
昭和時代中期からは、地域の人達がみんなで犬墓大師堂を守っていくために「お茶当番」という制度をつくり、毎日交代でお茶やお菓子、花などを供えているそうです。
お堂の周辺には、10番札所切幡寺への距離を示す「丁石(ちょうせき)」があったり、古い墓石があったりして、犬墓大師堂が地域の拠点であり、県道2号線が整備されるまではここがお遍路道沿いで、お遍路さんが行き交い、休憩をしたり地域の人と交流をしたりしていたのだと思います。
犬墓大師堂は、弘法大師空海に関係する地域の人にとって大切な場所であると同時に、各地から訪れるお遍路さんにとっても88番札所大窪寺から1番札所霊山寺に向かう途中の拠点的な役割を果たしてきたであろう歴史を知ることができる場所です。
県道2号線を進んでいると、気がつかずに通過してしまいますので、この記事で犬墓大師堂の存在を知ったお遍路さんは、少し回り道をしてぜひ立ち寄ってみてください。
【「犬墓大師堂」 地図】