【88番札所大窪寺→1番札所霊山寺】香川徳島県境「境目」の歩き遍路古道

88番札所大窪寺から1番札所霊山寺に向かうには香川県と徳島県の県境を越える必要があります。県境のひとつ「境目」の手前に、四国のみちにも指定されている峠越えの昔の雰囲気を感じることができる遍路古道が残されています。

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88番札所大窪寺から1番札所霊山寺へのルート

四国八十八ヶ所霊場巡礼を徳島県鳴門市の1番札所霊山寺から順打ちでスタートしたお遍路さんは、香川県さぬき市の88番札所大窪寺で結願(けちがん)をはたします。

88番札所大窪寺でお遍路の旅を終え、帰路に着くお遍路さんも多いですが、四国八十八ヶ所霊場巡礼の特徴はぐるっと1周の円循環になっていることですので、1番札所霊山寺まで戻って1周が完成しますし、そもそもスタートとゴールの札所は決まっておらず、どこからスタートしてゴールしても1周の巡礼が完成するので、88番札所でお遍路道が終わるわけではなく、次の札所である1番札所への道が続きます。
※88番札所大窪寺周辺にある、1番札所霊山寺方面を案内する史跡に関して、以下リンクの記事で紹介されていますので、こちらもぜひご覧ください。

【88番札所大窪寺】目的は結願だけに限らず「円」で次につながる

1番札所霊山寺に向かうルートは今も昔も複数ありますが、いずれにしても讃岐國(現在の香川県)から阿波國(現在の徳島県)の県境をこえる必要があり、県境の中のひとつ「境目(さかいめ)」の近くに、かつてはお遍路さんもよく通っていた古道がありますで、この記事でご紹介しようと思います。

 

国道377号線から遍路古道方面へ分岐

88番札所大窪寺から国道377号線を東に進むこと約4kmで、遍路古道の分岐点で起点の目印になるのが長野屋という農産物の無人販売所です。

境目遍路古道_長野屋

長野屋は古い家屋を活用した農産物無人販売所で、僕が訪れた日は多種の農産物が陳列されていました。

境目遍路古道_国道377号線分岐交差点

長野屋から国道377号線をはさんで南東側のこの交差点を旧道に入っていきます。写真右側のカーブミラーの下に、へんろ道保存協力会さん設置の遍路道標も見えます。

境目遍路古道_国道377号線分岐_遍路石

交差点のトタン倉庫の横には、10番札所切幡寺への距離を示す遍路石があり、分岐の目印がたくさんあるので、見落とすことはないと思います。

この交差点を分岐せずにそのまま国道377号線を東に進んで行くと、平成13年(2001年)開通で比較的新しい全長468mの五名トンネルがあり、ガードレール付の広めの歩道もあって、県境方面に安全に抜けることができるので、未舗装峠道歩行が不安な人はこちらに進むのもありです。
以下の地図の場所が分岐交差点です。

 

四国のみちにも指定されている遍路古道

分岐交差点から、田畑の間を縫うように通る舗装路を約250m進むと、以下写真の建物の裏側の方にまわっていく細い側道への分岐があり、ここから遍路古道に入っていきます。

境目遍路古道_遍路古道分岐点

遍路古道区間は「四国のみち」にも指定されている区間で、四国のみちの道標も設置されていて目印になります。

境目遍路古道_遍路古道分岐点_遍路石

石製の古い標石やへんろ道保存協力会さん設置の道標も遍路古道方面を知らせてくれています。

この遍路古道への分岐点は以下地図の場所です。

ちなみに10番札所切幡寺方面の南方向に向かうのであれば、上の写真のへんろ道保存協力会さんの道標が示してくれているように、この分岐点を側道に入らずにそのまま直進する方が距離が短く傾斜もありません。したがって、この遍路古道は、香川徳島県境を越えずに、香川県内を東方向に向かっていくためのルートになります。

分岐点から小川沿いの農道を少し進んでいくと、小川を渡る橋があり、これを渡って山側に進んでいきます。

境目遍路古道_小川を渡る橋

手作り感満載の小さな橋で小川を渡ると、越えなければいけない山が目の前に迫ってきます。

さらに少し進んだ先に山に入っていく分岐点があり、ここからいよいよ未舗装路のスタートです。

境目遍路古道_遍路古道入口

四国のみちの道標と石碑が遍路古道の入口を示してくれています。

未舗装路入口には集落への害獣の侵入を防ぐ防護柵が設置されていて、初めて見る人は少したじろいでしまうかもしれませんが、扉状になっているので開けて通り、通った後はきちんと閉めておけば問題なく通行できます。
四国内のどこの地域でも害獣被害は深刻になってきていて、山道遍路道と集落の境目にこのような防護柵が設置されているのをいろいろな地域でよく目にするようになりました。

境目遍路古道_害獣防護柵

外国人の歩きお遍路さんが増えていることもあり、柵を開け閉めできることと、気をつけて通行してくださいということが英語で表記されていました。

 

しっかりと整備された未舗装峠道

遍路古道に入って、しばらくは峠に向かって登り坂が続きますが、傾斜はそれほどでもなく、よく整備された自然道を気持ちよく歩いていくことができました。

境目遍路古道_遍路古道登り坂

僕が歩いたのは冬の時期だったので、落ち葉がふかふかで気持ちよかったです。

境目遍路古道_峠頂上休憩ベンチ

峠の頂上には休憩用の木製ベンチが設置されていました。

峠の頂上で少し休憩をして、そこからは登りよりも傾斜が急な坂を一気に下っていきます。

境目遍路古道_遍路古道下り坂

下り坂は傾斜が急なので十分注意して通行してください。

境目遍路古道_遍路古道遍路石

下り坂途中の遍路石には白鳥と3番札所方面への距離が記されていました。

境目遍路古道_遍路古道出口

遍路古道の出口は舗装下り坂になっていて、目下に県道2号線があって舗装路に合流します。

この遍路古道は未舗装区間約1kmの峠道で、四国のみちに指定されていることや、地元の人がおそらくしっかり管理してくださっていることもあって、とても歩きやすく整備されていました。道中では、四国のみちの道標や、昔の遍路石などもあるので、道に迷うことはないでしょうし、かつてはたくさんのお遍路さんが通っていたであろう歴史や雰囲気も感じることができました。

 

香川徳島県境「境目」

県道2号線に合流した地点が香川県と徳島県の県境「境目」です。地図でみると以下が合流地点で、厳密にいうと香川県から県境を越えて、徳島県に入ったところになります。

※境目にある中務茂兵衛標石や大いちょうに関して、以下リンクの記事で紹介されていますので、こちらもぜひご覧ください。

【阿波-讃岐の県境】香川県と徳島県の県境「境目」に立つ中務茂兵衛最晩年の標石

【阿波-讃岐の県境】「境目」の大銀杏の見事な紅葉

この境目からは、香川県内を東に進んで海沿いの三本松・白鳥方面に向かうルートと、徳島県に入って県道2号を南下して10番札所切幡寺方面に進むルート(南方向には遍路古道入口の分岐を直進する方が近道なので、遍路古道を通って境目にはたどり着かないかもしれませんが)の選択になります。
※県道2号を南下するルートの様子は、以下リンクの記事でご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。

【88番札所大窪寺→1番札所霊山寺】弘法大師空海を守った犬を祀る「犬墓大師堂」

 

88番札所大窪寺から1番札所霊山寺に向かうルートは複数あり、近年は道路やトンネルの整備が進んだことで、車などを含めいろいろな移動手段でのアクセスが向上していますが、部分的に昔ながらの遍路古道もその雰囲気を現代に留めていますので、ぜひ歩いてみていただければと思います。

 

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この記事を書いた人

四国遍路情報サイト「四国遍路」を運営する株式会社四国遍路(https://shikokuhenro.co.jp/)の代表取締役。四国遍路の文化をより良い形で引き継いでいくために、四国遍路に新しい付加価値を生み出すべく日々奮闘中。