果てしなく長くも、あっという間のようでもあった四国遍路旅は、88番札所大窪寺で結願です。しかし、遍路は終わりなき旅であり、結願所が新たな始まりでもあるのです。
お大師さまが虚空蔵求聞持法を修法された結願所
88番札所大窪寺は、言わずと知れた遍路旅最後の札所で結願所です。
「結願」は「けちがん」と読みますが、仏教用語で日数を定めて神仏に祈願、または修行し、その日数が満ちることを意味する言葉です。
お遍路においても、それぞれに願いを込めて四国88ヶ所の札所をまわり、大窪寺までたどり着けば、願いを結ぶことができるといわれています。
ここまでの果てしなくも長く、それでいてあっという間でもあったような41日間の遍路旅を思い起こしながら、「大窪寺」手前の「丁石道」で、最後の最後でこれこそ遍路道という道なき道に迷い込みながら、無事お寺にたどり着きました。
※「丁石道」の様子は、以下リンクの記事もぜひご覧ください。
【道の駅ながお→88番札所大窪寺】道なき道を進む「丁石道」を通って結願にまっしぐら
大窪寺の縁起によると、奈良時代の養老元年(717年)に行基菩薩がこの地を訪れた際に、霊夢を感得し草庵を建て修行をしたことが起源とされ、その後平安時代の弘仁7年(816年)に唐から帰国した空海が、現在の奥の院近くの胎蔵ヶ峰という岩窟で虚空蔵求聞持法を修法し堂宇を建立、等身大の薬師如来坐像を彫造し本尊とされ、唐の恵果阿闍梨より授かった三国(印度、唐、日本)伝来の錫杖を納めて四国霊場の結願所と定めたといわれています。
「女体山」ルートで「大窪寺」まで歩くお遍路さんは、奥の院「胎蔵峯寺」に立ち寄り、空海が本尊に水を捧げるために独鈷で加持すると清水が湧き出たと伝えらる「加持水」のご利益もいただいてからお寺にたどり着くと、お大師さまの修行の歴史をより身近に感じられると思います。
終わりなき旅を告げる法螺貝を持つ「薬師如来」
大窪寺の御本尊「薬師如来」は、他所の薬師如来像とは違った珍しいものであることで知られています。
通常は左手に薬壺を持っていて、人々を病苦から救う仏ですが、大窪寺の薬師如来像は法螺貝を持っていて、人々の悩みや心の霧を吹き飛ばしてくれるご利益があるという説があります。
本堂で「薬師如来」にお参りする際に、ぜひ注目していただきたいのが、御本尊を示す木札です。
よく見ると「薬」の文字が未完成です。
これは、遍路旅はここで結願であるけれども、完成するものではなく、旅(人生)は終わりのないものであるという意味が込められているともいわれています。
この発見と演出に、遍路の本質をよく表していると感じ、結願の達成感をより強く感じるとともに、結願が新たな始まりでもあることに気づかされました。
結願所の「薬師如来」のメッセージにぜひ耳を傾けてみてください。
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お大師さまの化身「金剛杖」を納める「寳杖堂」
「大窪寺」の納経所の前には、たくさんの「金剛杖(こんごうづえ)」が置かれていました。
弘法大師の化身としての役割を持ち、弘法大師がともに旅をしてくださっているという「同行二人」の象徴でもある金剛杖ですが、遍路旅を終えたここ「大窪寺」に奉納していかれるお遍路さんが多いようです。
この「金剛杖」は「大師堂」の横にある「寳杖堂(ほうじょうどう)」に保管され、毎年春分の日と8月20日に柴灯護摩供の焚き上げが行われているそうです。
ただし、必ずしも金剛杖を奉納しなければならないわけではなく、お大師さまの化身であり、遍路旅を支えてくれた杖であるので、むしろ大事に持ち帰る、次の遍路旅でも使い続けるという考え方もあるようです。
大師堂には、空海が自身が四国を巡礼した際に使っていたともいわれる鉄製の杖がまつられており、このこともあって金剛杖が奉納される習慣が起こったのかもしれません。
結願の証の代わりではないですが、大窪寺では結願証を発行してもらうことができ(納経所にて。2,000円。)、私も書いていただきました。
2015年1月20日にスタートした私の遍路旅は、2015年3月1日に88番札所大窪寺で無事通し歩き遍路結願をすることができました。
しかしながら、遍路旅は終わりなき旅。
そして、ここから新たな始まりでもあります。
ということで、遍路旅の記録記事もまだ少々続きがありますので、あと数記事お付き合いください。
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【88番札所】 | 医王山 遍照光院 大窪寺(いおうざん へんじょうこういん おおくぼじ) |
宗派: | 真言宗 |
本尊: | 薬師如来 |
真言: | おん ころころ せんだり まとうぎ そわか |
開基: | 行基菩薩 |
住所: | 香川県さぬき市多和兼割96 |
電話: | 0879-56-2278 |