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春には参道至る所で桜が咲き誇る箸蔵寺。その中間処、現在はあまり訪れる人がいないこの場所は箸蔵寺の歴史を秘めた文化財の宝庫です。

寺院に向かう参道の中間処にある、箸蔵寺を代表する二つの歴史的建造物

 

水上交通安全の願いを込めて建てられた高燈籠

地元で事業を営む方々によって建立されたものが文化財に

別格15番箸蔵寺(はしくらじ)の始まりは天長5年(828)頃に四国を巡錫(じゅんしゃく)していた空海がこの場所を訪れた際、金毘羅大権現(こんぴらだいごんげん)が現れ「箸を挙ぐる者、我誓ってこれを救はん」と告げたことに始まります。

「箸を拳ぐる者(はしをあぐるもの)」
とは、お箸を使用する人。すなわち全ての人間。それを分け隔てなく救う場所として建立されました。

明治以前、現在の金刀比羅宮(ことひらぐう、通称こんぴらさん)が「象頭山金毘羅大権現(ぞうずさんこんぴらだいごんげん)」と呼ばれていた頃は同じ本尊が祀られていたため、より厚いご利益を求めて香川/徳島県境の「猪之鼻峠(いのはなとうげ/標高550m)」を越えて訪れる巡礼者も多く、箸蔵寺は「こんぴら奥の院」と称されました。

寺院の繁栄を受けてそのご利益にあやかったのが、地元池田で刻みタバコの製造を営む人ら。この場所から製品を出荷するためには、吉野川に浮かべた船にそれを乗せて往来する必要があり、金毘羅大権現のご利益の一つである「水上安全」を願って明治17年(1884)に高燈籠を建立しました。
眺めが良い丘の上に立つ高燈籠に往時は灯が点され、川の上を往来する船の上からもその光がよく見えたといわれています。

ロープウェイ乗車中に横目に見る高燈籠も一興

第二次世界大戦を契機にケーブルカーが廃止の憂き目に遭うなど、箸蔵寺へ向かう交通機関は幾度も変わりましたが、現在は二代目ロープウェイが乗換無しでふもとと境内を結んでいます。
※箸蔵寺へ向かう交通機関の変遷は、以下リンクの記事で詳しくご紹介しています。

山寺である箸蔵寺へ向かう交通機関の変遷【別格15番札所「箸蔵寺」への箸蔵山ロープウェイ】

箸蔵山ロープウェイに乗車すると、まずその背後の吉野川が流れる風景に目が行きますが、この付近からが車窓のハイライトシーン。これまで数多くの参拝者が目にした高燈籠を通り過ぎると今度は仁王門。そして戦前は無かった深い谷を空中散歩しながら本坊に到着と、一息つく暇がないほど景色が移り変わります。

 

仁王門前にある野口雨情歌碑

門前の商店がかつてクロスポイントだったこの場所の名残

この場所「カザミノ丘」の二大スポットのもう一つが、高燈籠と対になる形で存在する「仁王門」
交通の変遷等により、今ではこの場所を通る巡礼者は少なくなってしまいましたが、かつては活気ある場所であったことが門前の商店の存在から伝わります。

仁王門下に置かれている石碑には野口雨情の歌が記されている

見たか蔵谷千畳敷や不治の根元の笠の水 雨情

「しゃぼん玉」「赤い靴」「青い眼の人形」など数多くの童謡作詞を行った「野口雨情(のぐちうじょう/1882-1945)」が、箸蔵を訪れて詠んだ歌。

野口雨情が訪れたのは昭和11年(1936)2月14日

それまで波乱万丈に満ちた人生を送っていたが、この頃は詩作に精を出しており後年歌い継がれる数多くの童謡を生んでいます。

野口雨情は四国を訪れ八十八ヶ所を回った感じではないようですが、昭和12年(1937)に柏村(現愛媛県愛南町柏)を訪れた記録が残されていることから、この時期は四国で活動していたことを窺い知ることができます。柏坂道中には遍路道の整備に合わせて、野口雨情が柏坂で詠んだ歌が記された標木が立てられています。

 

箸蔵寺仁王門

上重(じょうじゅう、2F)にある蓮の花を模した「花頭窓(かとうまど)」が特徴の一つ

春が訪れると周辺に植えられた桜が咲き、山門が実際の花に覆われます。

高燈籠と同じく国指定の登録有形文化財に指定されている山門

木造二重門様式の山門は、上層にある棟札には明治13年(1880)建立と記されているようです。しかしながら当地の郷土資料には明治41年(1908)以前に高知県から移築されたと記録されている書物があり、意見が分かれます。
箸蔵寺には高燈籠とこちらの仁王門の他に4つ、合計6点の堂宇が登録有形文化財の指定を受けています。

天井に吊るされた大きな草鞋

草鞋(わらじ)は健脚にご利益があるものとして奉納される他、材料である稲藁を得ることができた豊穣感謝を神仏に表す意味であったり、大きな草鞋であればその足のサイズの大男がその場に居ることを示す魔除けの意味もある。
こちらに奉納されている草鞋はいずれも新しいことから、年ごとに新しく挿げ替えられているものでしょうか。

箸蔵寺の正参道であり正門

左右に金剛力士像を安置されている門をくぐると、

山の上とは思えない広い道幅の参道が寺に向かって延びています

箸蔵寺境内はこんぴらさんに勝るとも劣らない段数の階段が存在しますが、この時点では階段があるようには感じません。安堵して参道を進んだところで、境内直下から「こんぴららしさ」を感じることができる階段が始まります。

 

日本で初めて導入されたフニテル式ロープウェイ

仁王門横、桜の木の間から15分おきに運転されるロープウェイが見える

二代目箸蔵山ロープウェイは、二線の支曳索(しえいさく)がゴンドラを支えて運行される「フニテル」と呼ばれる新方式。ヨーロッパのスキーリゾート等で運用実績を積み、日本では平成11年(1999)4月に箸蔵山ロープウェイで初めて導入されました。
フニテルには複式単線自動循環式と複式単線交走式があり、前者はリフトのように上下それぞれの駅で支曳索に沿って転回して随時発車を行う方式。後者は指定された時刻に上下同時発車を行うケーブルカーと同じ方式。箸蔵山ロープウェイは後者の方式が採用されていますが、国内で二例目以降に導入されたロープウェイはいずれも循環式のため、並走式の同ロープウェイは国内で非常に珍しい存在です。

フニテル最大の特徴は「風に強い」
悪天候時の定時発車確保に大きく寄与しており、箸蔵寺を訪れる巡礼者たちを毎日安全に境内へ輸送しています。

 

【「箸蔵寺仁王門・高灯籠」 地図】

 

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野瀬 照山

四国遍路案内人・先達。四国八十八ヶ所結願50回、うち歩き遍路15回。四国六番安楽寺出家得度。四国八十八ヶ所霊場会公認先達。 高松市一宮町で「だんらん旅人宿そらうみ(http://www.sanuki-soraumi.jp/)」を運営。