別格8番札所十夜ヶ橋は、空海が巡錫中に橋の下で野宿をしたという霊跡です。お大師さまが寝ておられるかもしれないから橋では杖をつかないというお遍路さんの習わしはこの地が由来といわれています。
大洲市の交通の要所にある永徳寺境外仏堂
別格8番札所十夜ヶ橋(とよがはし)は、江戸時代の城下町風情を残し「伊予の小京都」ともよばれる愛媛県大洲市にあります。
大洲市の交通の要所で周辺開発も進む松山自動車道「大洲IC」のすぐ近くの国道56号沿いに十夜ヶ橋は位置していて、お寺がある場所としては少々違和感があります。
十夜ヶ橋は、大洲ICから南へ1.5kmほどの「永徳寺(えいとくじ)」の境外仏堂で、昔は田園が広がり民家もまばらな大洲の中心部からは離れた片田舎だったようです。
【永徳寺 地図】
お大師さまが橋の下で野宿をした霊跡
十夜ヶ橋が別格霊場となり、その名前の由来にもなっているエピソードがあります。
四国を巡錫中の空海が久万高原の菅生山(大寶寺)に向かう途中、この地で日が暮れ、このとき周囲は田園で、宿泊場所となる民家が見あたらなかったので、空海は小川に架かる橋を見つけ、仕方なくその橋の下で一夜を過ごすことにしたところ、暗く長い一夜が十夜にも思えたとこのと。
そこで、この寺の御詠歌となっている「行き悩む浮世の人を渡さずば/一夜も十夜の橋とおもほゆ」という歌を詠んだと伝わっていて、そののちこの地には大師堂がむすばれ、空海ゆかりの信仰の地となったそうです。
橋を渡ると、橋の下に行くことができる階段があり、そこにはこのエピソードを現代に伝える遺跡になっています。
この場所は、修行として野宿することが認められているそうで、お寺でござの貸し出しもしてくださるとのこと。
野宿までせずとも、橋の下にきてお大師さまと同じ気持ちになって、昔の巡礼の苦難を感じてみるとよいと思います。
また、多くのお遍路さんは金剛杖をお大師さまの分身としてたずさえて巡礼しますが、橋の上では杖をつかないという習わしがあります。
これは、この十夜ヶ橋のエピソードが元になっていて、お大師さまが橋の下で寝ておられるかもしれないから、橋で杖をついて音をたてないようにという意味なのだそうです。
別格8番札所十夜ヶ橋は、お大師さまの巡錫の様子を体感できる珍しい霊跡です。
昔の厳しい巡礼環境、修行の様子を思い浮かべながら、参拝してみてください。
※十夜ヶ橋の野宿や通夜堂に関して、以下リンクの記事で紹介されていますので、こちらもぜひご覧ください。
【別格8番札所十夜ヶ橋・通夜堂】お大師さまが橋の下で野宿した場所の通夜堂
【別格8番札所】 | 十夜ヶ橋(とよがはし) [正法山 永徳寺(しょうほうざん えいとくじ)] |
宗派: | 真言宗御室派 |
本尊: | 弥勒菩薩 |
真言: | おん まいたれいや そわか |
開基: | 弘法大師 |
住所: | 愛媛県大洲市東大洲1808 |
電話: | 0893-25-2530 |