知多四国霊場の札所で、近接で5つの札所がかたまっている札所群が3ヶ所のうち、南知多町の「大井の5ヶ寺」をご紹介します。知多四国霊場の開創にも所縁がある知多四国霊場30番札所医王寺を中心にした札所群です。
風光明媚な港町・南知多町にある通称「大井の5ヶ寺」
愛知県の知多半島の南端に位置する南知多町は、半島の先端で海に囲まれた風光明媚な街です。南知多町の中でも港町の大井(おおい)エリアに、知多四国霊場の札所が近接して5ヶ寺かたまっており、通称「大井の5ヶ寺」と呼ばれています。
※知多四国霊場の「5ヶ寺」に関しては、以下リンクの記事で詳しくご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
【知多四国霊場】札所が近接でかたまっている大井・野間・佐布里の「5ヶ寺」
大井の5ヶ寺の中心的存在の30番札所医王寺
大井の5ヶ寺の中心となっているのが知多四国霊場30番札所医王寺(いおうじ)です。
神亀2年(735年)に行基が薬師如来像を安置して開基したと伝わる古刹で、隆盛期には十二坊をもつ大きな規模の寺院であったそうです。元々は大井港から約1.5km西方にある、現在は「仏山(ほとけやま)」と呼ばれるの山中に寺域があったそうですが、火災により全山焼失してしまい、鎌倉時代初期の建歴2年(1212年)に寺院と円蔵坊、浄光坊、東光坊、宝泉坊を現在地に再建し、塔頭は他のエリアに移転したそうです。
これらの坊が現代ではそれぞれ寺院として知多四国霊場の札所になっていることから、近接して札所がかたまっているのです。
医王寺といえば、知多四国霊場の開創に貢献した「武田安兵衛(たけたやすべえ)」の墓がありますので、知多四国霊場巡拝の際はぜひこちらにもお参りいただきたいと思います。
※知多四国霊場開創のエピソードは以下リンクの記事で詳しくご紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。
【知多四国霊場】開創を成し遂げた三開祖の強い想いと大きな苦労・努力のエピソード
大井の5ヶ寺の中心である医王寺なのですが、現在は無住になっていて、寺院の管理は以下でご紹介する宝乗院、北室院、性慶院が2年ごとに交代制で務めていますので、納経印や御朱印は管理担当寺院でいただくことになります。2023年現在は北室院が担当されており、管理担当寺院は看板を設置して表示してくれています。
4つの坊がそれぞれ知多四国霊場の札所に
●知多四国霊場31番札所利生院
医王寺一山十二坊のうちの「東方坊」が、現在は利生院(りしょういん)となり、知多四国霊場31番札所です。本堂と弘法堂があり、現在は無住で、32番札所宝乗院が管理されています。
●知多四国霊場32番札所宝乗院
医王寺一山十二坊のうち「宝泉坊」が、現在は宝乗院(ほうじょういん)となり、知多四国霊場32番札所です。前述の武田安兵衛が約3年間滞在したと伝わっています。
納経所で31番利生院と32番宝乗院の両方の納経印や御朱印がいただけます。
●知多四国霊場33番札所北室院
医王寺一山十二坊のうち「浄光坊」が、現在は北室院(きたむろいん)となり、知多四国霊場33番札所です。北室院には大井聖崎にある「上陸大師」の上陸大師奉賛会があり、上陸大師の維持管理に尽力されています。上陸大師の御朱印もいただくことができ、毎年春には上陸大師法要も他寺院と協力して行われています。
※弘法大師空海の知多半島上陸の伝承は、以下リンクの記事で詳しくご紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。
●知多四国霊場34番札所性慶院
医王寺一山十二坊のうち「円蔵坊」が、現在は性慶院(しょうけいいん)となり、知多四国霊場34番札所です。33番札所北室院から西に徒歩約1分の距離に近接しています。境内には稲荷神社もあります。
大井の5ヶ寺の立地と参拝時注意事項
- 大井の5ヶ寺は、元々はひとつの敷地であったのですが、昭和30年代に敷地を横切る形で県道281号が設置され、医王寺・利生院・宝乗院と北室院・性慶院がふたつに分断されるような配置となり、現在はこの県道を渡ってふたつのエリアを行き来するようになりました。
ただ、それぞれの寺院の塀の色を統一にすることにより、昔はひとつのお寺であったことを伝えていく努力をされています。
自家用車で参拝をする人用に、医王寺、北室院、性慶院に参拝者用駐車場がありますが、それぞれ狭い敷地なので利用の際は安全に十分ご注意ください。北室院の駐車場は法事などでうまっていることが多いので、その際には性慶院の駐車場が比較的空いてる場合が多いので、そちらを利用し、5ヶ寺をすべて参拝されるのがよいと思います。
自転車で参拝される人には、利生院にロードバイク専用のバイクスタンドが設置されています。最近は自転車で知多四国霊場を巡拝される人が増えてきて、スタンドが無いロードバイクのサイクリストもみかけるようになってきました。
ご自分なりのスタイルで知多四国霊場の巡拝を楽しむ人が増えているのはうれしい限りです。
医王寺に関連する移転寺院
ご紹介した大井の5ヶ寺以外にも実は医王寺に関連する寺院があり、知多四国霊場の札所になっていて、36番札所遍照寺(へんじょうじ)、37番札所大光院(だいこういん)、39番札所医徳院(いとくいん)がそれにあたります。
医王寺が火災により焼失し、鎌倉時代に再建され塔頭が移転したことを先にお伝えしましたが、それがこれらの寺院だといわれています。遍照寺は知多半島の最南端の師崎(もろざき)へ、大光院は日間賀島(ひまかじま)、医徳院は篠島(しのじま)とそれぞれ離島に移され、医王寺からはかなり距離があります。
なぜこんな離れた場所にと思いますが、はっきりした理由はわかっていません。再建時には寺院を建立するのに適した場所と資金、地域住民の協力が必要なので、いろいろな事情を考慮した上で、それぞれの場所が選定されたことでしょう。
ただ、このような珍しい移転が行われたことで、知多四国霊場の札所が半島の先端や離島といった珍しい場所にも設定されることになり、今では知多四国霊場の特徴にもなっていることは、巡拝者からすると喜ばしいことだと思います。
愛知名物「モーニング」が食べられる「喫茶店YAMABIKO」
31番札所利生院の隣にある「喫茶店YAMABIKO」は、その立地がら、知多四国霊場の巡拝者や寺院の職員さんにも人気です。このお店に立ち寄ったら、寺院の住職さんに会えるかもしれません。
このお店では愛知名物「モーニング」がいただけます。モーニングとは、コーヒーを頼むと、トーストやちょっとした軽食がついてくるお得なセットメニューで、愛知県北部の一宮市が発祥といわれ、名古屋市をはじめとした愛知県全域に広がり、ひとつの食文化になっています。
早朝から巡拝される人もいらっしゃると思うので、巡拝途中にモーニングで気力・体力を充実させるのもよいと思います。
モーニング以外にも定食やスイーツも人気で、私のおすすめはハンバーグ定食です。
知多半島の南端の南知多町にある「大井の5ヶ寺」は、海に囲まれた景色が気持ちよく、昔ながらの港町の雰囲気も残すエリアにあります。札所が近接でかたまっていて、短時間でいくつものお寺を参拝することができるので、知多四国霊場巡拝の初心者がお遍路体験してみるのにも最適だと思います。
名産の海産物を扱うお土産屋や飲食店などもたくさんあり、観光やグルメも楽しみながらの巡拝もおすすめです。
※知多四国霊場の他の5ヶ寺について、以下リンクの記事でご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
【知多四国霊場】知多半島の人気観光スポットにもなっている源氏ゆかりの「野間の5ヶ寺」
【知多四国霊場】のどかな田園地帯の雨乞いの聖地「佐布里の5ヶ寺」
【「大井の5ヶ寺」 地図】