知多四国霊場の札所で、近接で5つの札所がかたまっている札所群が3ヶ所のうち、知多市の「佐布里の5ヶ寺」をご紹介します。のどかな田園地帯にある雨乞いの聖地である76番札所如意寺を中心にした札所群です。
知多半島の北西部・知多市にある「佐布里の5ヶ寺」
愛知県知多市は、知多半島の北西部に位置し、市域の大半が標高20mから70mの丘陵になっていて、たくさんの農業用ため池がある田園地帯です。江戸時代から木綿の名産地として産業が栄え、趣ある街並みが保存されていたり、梅の名所として知られる大規模な公園もあります。
知多市の佐布里(そうり)エリアに、知多四国霊場の札所が近接して5ヶ寺かたまっており、通称「佐布里の5ヶ寺」と呼ばれています。
※知多四国霊場の「5ヶ寺」に関しては、以下リンクの記事で詳しくご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
【知多四国霊場】札所が近接でかたまっている大井・野間・佐布里の「5ヶ寺」
のどかな田園地帯の雨乞いの聖地の76番札所如意寺
佐布里の5ヶ寺の中心となっているのが知多四国霊場76番札所如意寺(にょいじ)です。
元歴元年(1184年)に創建したとされ、第82代後鳥羽天皇の勅願寺となり、隆盛期には正法院、実相坊、法性坊、松本坊、法蔵坊、成就坊、泉蔵坊、密厳坊、浄蓮坊の九坊を持つ広大な寺領だったと伝わっています。
しかし、戦国時代の兵火によりほとんど焼失し、唯一本堂だけが難を逃れましたが、昭和63年(1988年)に火災で失われ、平成6年(1994年)に再建されています。
現在の如意寺は、元々は実相坊がルーツですが、廃寺となったときに如意寺と統合されました。
如意寺の正式名称は「雨宝山如意寺正法院」で、雨宝山という山号は、雨乞いの御本尊として数多くの霊験が伝わる地蔵菩薩を御本尊としているからだといわれています。
知多市の佐布里周辺は、古くから梅林や緑豊かな田園風景が広がるのどかな地域です。今でこそ作物がよく育つ農業が盛んなエリアですが、昔は日照りや干ばつがたびたび発生し、お米などの農作物が育たない時期もよくありました。雨乞いの加持祈祷を行い、雨を宝と考える地域の農民の方々から絶大な崇拝を集めていたことから、この山号がついたと考えられています。
現在ではお寺の周辺にも大きな農業用ため池も整備されています。
この如意寺から佐布里の5ヶ寺の他の4ヶ寺を見渡すことができる立地で、眺めを楽しむことができます。如意寺にはふたつの山門があり、南側の朱色の門は、特に昔の面影を今に残す名所になっています。
4つの坊がそれぞれ知多四国霊場の札所に
●知多四国霊場73番札所正法院
如意寺一山九坊のうちの「本坊」が正法院(しょうぼういん)となっています。往時は壮大な伽藍で、数多くの優れた僧を輩出したと伝えられています。現在75番札所誕生堂と76番札所如意寺は無住で、正法院が管理されおり、納経印や御朱印も正法院でいただくことができます。
●知多四国霊場74番札所密厳寺
如意寺一山九坊のうち「密厳坊」が密厳寺(みつごんじ)となっています。御本尊の十一面観世音菩薩は、知多市最古の仏像として、市の文化財に指定されています。隆盛期の一山九坊が示された地図が密厳寺にあり、往時の歴史を伝える貴重な史料です。
本堂の十一面観音菩薩と弘法大師、不動明王、境内には薬師堂、天神社、白山社と複数の神様仏様がまつられていて、いろいろなご利益を授かれるといわれています。中でも天神社と白山社は人気で、地域の人の信仰を集めていて、神仏習合の姿を現在にも色濃くのこしています。
●知多四国霊場75番札所誕生堂
如意寺一山九坊のうち「泉蔵坊」が、明治維新の廃仏毀釈により廃寺になり、その後、本坊の正法院境内に移転され、弘法大師像を安置したのが、現在の誕生堂(たんじょうどう)です。
長い階段を登った先にあり、眺めが良く、絶好のフォトスポットです。
●知多四国霊場77番札所浄蓮寺
如意寺一山九坊のうち「浄蓮坊」が、戦時中の昭和16年(1941年)に浄蓮寺(じょうれんじ)に改称され現在に至ります。佐布里の5ヶ寺の敷地の入口に立地しているので、参拝時に最初に視界に入る寺院です。
境内にある納経所の前に五葉松があり、何十年に一度だけ「白蛇」が現れ、見た人には素晴らしい幸運が訪れるという言い伝えがあります。私はまだ見たことはありませんが、参拝の際には注視してみてください。
知多市内の札所で完結する「知多十弘法」
知多四国霊場は知多半島を一周する霊場で、今でこそ多種多様な手段で巡拝が可能になりましたが、昔はそう簡単にはいきません。身体の弱い場合や、様々な事情で、巡拝するのが困難な人がたくさんいました。
そこで、現在の知多市エリアには、正確な記録は残っていませんが大正時代から「知多十弘法(ちたとこうぼう)」と呼ばれる、知多四国霊場の中の10ヶ寺のみを巡拝する霊場が存在し、佐布里の5ヶ寺も含まれています。
知多十弘法
72番札所慈雲寺(じうんじ) 73番札所正法院(しょうぼういん) 74番札所密厳寺(みつごんじ) 75番札所誕生堂(たんじょうどう) 76番札所如意寺(にょいじ) 77番札所浄蓮寺(じょうれんじ) 78番札所福生寺(ふくしょうじ) 79番札所妙楽寺(みょうらくじ) 80番札所栖光院(せいこういん) 81番札所龍蔵寺(りゅうぞうじ)
比較的狭い地域に札所が集中していて、達成感も味わえるので、知多十弘法だけを巡拝されている人も多くいらっしゃいます。
知多十弘法専用の集印帳も用意されていて、正法院、密厳寺、浄蓮寺で購入することができます。
知多半島の北西部の知多市にある「佐布里の5ヶ寺」の中心的存在である如意寺は、雨乞いの聖地として地域の人の信仰を集めてきた歴史があります。田園風景が広がり、近くの佐布里池周辺の梅林は名所として有名なスポットですので、周辺散策も含めのんびりと巡拝していただきたいエリアです。
※知多四国霊場の他の5ヶ寺について、以下リンクの記事でご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
【知多四国霊場】風光明媚な港町・南知多町にある札所群「大井の5ヶ寺」
【知多四国霊場】知多半島の人気観光スポットにもなっている源氏ゆかりの「野間の5ヶ寺」
【「佐布里の5ヶ寺」 地図】