知多四国霊場28番札所永寿寺から29番札所正法寺までのお遍路古道区間に、かつてお遍路さんをお接待していた休憩小屋が弘法大師堂として整備してのこされています。江戸時代後期から明治時代にかけての知多四国霊場のお接待文化を今に伝える貴重な史跡です。
お接待文化を現代に伝える弘法大師堂がのこるお遍路古道
知多四国霊場の札所間を結ぶお遍路道のなかには、昔からお遍路さんが通っていたお遍路古道がいくつかのこっています。
そのなかで、知多四国霊場28番札所永寿寺(えいじゅじ)から29番札所正法寺(しょうぼうじ)までの道中の、愛知県美浜町豊丘から南知多町豊丘まで南下する区間にあたるお遍路古道は、昔は多くのお遍路さんが行き交い、たいへんにぎわっていたそうです。
知多四国霊場が開創された江戸時代後期頃、現在の美浜町東部の海沿いの地域は、地形の起伏が激しく、この地形活かした農業が盛んではありましたが、海沿いを通る道がありませんでした。そのため、当時のお遍路さんは村人が主に使っていた内陸部にある小道や田んぼ道を歩いていたそうです。
明治時代に入る頃には、お遍路さんが増えるにつれ、この道は札所間を最短で移動できるお遍路道としての役割が強くなりました。お遍路さんを民家の庭先でもてなしたり、休憩場所としても利用できるような納屋も設置されるなどしたことから、この道がお遍路さんと地域住民との交流の場所としても機能していきます。道標や丁石も設置され、地域でお遍路さんをもてなす文化が広がりました。
昭和時代には、知多半島各地で交通網が発達し、自動車社会が到来したことから、知多四国霊場でも団体で車やバスで巡礼する団体講が増え、歩いて巡礼する人が大幅に減少しました。この変化に伴い、28番札所永寿寺から29番札所正法寺の区間でも従来のお遍路道を歩くお遍路さんが少なくなり、お接待を行う小屋もほとんど姿を消してしまいました。
しかし、そのなかで一つの小屋が地域住民の善意により弘法大師を祀る御堂としてのこされ、今でもお遍路さんの道中の安全を見守り、休息の場として利用されています。
近年は知多四国霊場の先達が中心となり、お遍路の文化を守るために竹林区間を整備・保存する活動も行われ、この古道が大事に守られています。
本記事では、このお遍路古道区間の順路や見どころを詳細にご紹介します。

お遍路古道の起点となる分岐点には古くからある大きな石製の道標がのこされています。

お遍路古道道中にのこされている弘法大師堂がお接待文化を現代にも伝えています。
昔からのこる石製の道標や丁石
このお遍路古道を、28番札所永寿寺から順を追ってご紹介していきます。
28番札所永寿寺の山門を出て左折し、細い路地を東方面に約10m進むと南に入る路地が見えてきますので、右折し南方面に道なりに進みます。

民家の塀と街路灯の脇に大きな石製の道標がありますので、これを目印に右方向に進みます。
上の写真の道標からさらに南方向に坂道を約900m進むと、鉄塔が見えてきますので、そのまま直進し竹林の坂を下ります。鉄塔を過ぎると丁石が3ヶ所設置されていますので、目印にして道なりに進みます。

丘の上に鉄塔がありますので、これを目印に竹林を進んでいきます。

お遍路古道にのこされている、目的地までの距離を示す丁石は貴重な史跡です。
昔のお接待小屋を整備した弘法大師堂
山林を約600m下ると、分岐の目印にもなる、このお遍路古道でぜひ注目していただきたい御堂があります。
この御堂は、昔のお接待小屋に弘法大師を祀り弘法大師堂として整備し、のこされているものです。お遍路さんの往来の歴史を感じながら、昔のお遍路文化を思い起こすことができる貴重な史跡です。

分岐の目印にもなる弘法大師堂が、このお遍路古道の注目スポットです。
かつては知多四国霊場のお遍路道中に多くのお接待小屋が存在していたそうで、28番札所永寿寺から29番札所正法寺に向かうこの区間でも複数あったようですが、この区間では現代までのこっているのはこの御堂のみとなりました。
地域の皆さんのご厚意によって御堂として整備・保存されていますので、この区間を歩く際にはぜひ立ち寄って、知多四国霊場のお接待文化の歴史を肌で感じてみてください。
29番札所正法寺への道のり
お遍路古道を抜けてからは、住宅地の中の生活道路を進んでいきます。

お遍路古道の区間を地図上で表示するとこのようになります。

お遍路古道から抜けてくると県道280号線と合流しますので、左折し東方面に約280m進みます。

県道280号線から「アグリス」を目印に右折し南方面に進みます。

県道280号線から分岐し、南に約450m進むと丘の頂上で二股にわかれますので、左方向に進んでください。

丘の上から進んだ先の十字路は、まっすぐ南方面に進みます。

十字路を過ぎるとすぐ左手に29番札所正法寺の山門が見えます。
28番札所永寿寺から29番札所正法寺までの全行程は約2.9kmで、徒歩で進むとおおよそ60分ほどかかる道のりです。この区間は知多四国霊場のお遍路古道のなかでは比較的距離があり、知多半島の風光明媚な景色を眺めながらのんびりと歩き遍路できるのでおすすめです。

現行版の知多四国霊場歩き遍路マップにこのお遍路古道が記載されており、現在でも歩きお遍路さんにはメインルートです。
知多四国霊場28番札所永寿寺から29番札所正法寺までのお遍路古道は、地元の人々が大切に守ってきたお接待文化を現代に伝える重要な役割を担っています。この道を歩けば、知多四国霊場の歴史の一端を感じることができると思いますので、伝統を受け継いできてくださったいろいろな人に感謝の気持ちを持ってお遍路を楽しんでください。