85番札所八栗寺は八栗山の中腹にあり、ケーブルカーを横目に坂道を登っていきます。登り坂遍路道の途中には、癒し系のおねえさんがいらっしゃる休憩所がありますので、ぜひ立ち寄ってみてください。
戦前の「八栗登山鉄道」がベースの「八栗ケーブル」
84番札所屋島寺がある「屋島」を下り、遍路の父「真念」の墓がある「洲崎寺」がある遍路道を通り、「うどん本陣 山田家」で「ざるぶっかけ」を食べて、85番札所八栗寺がある「五剣山(ごけんざん)」のふもとまで進んできました。
※「屋島」からの下り遍路道と「うどん本陣 山田家」の様子は、以下リンクの記事もぜひご覧ください。
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「五剣山」は西から一ノ剣、二ノ剣、三ノ剣、四ノ剣、五ノ剣と山上に5つの大きな峰があることから名づけられたそうで、この山の中腹に「八栗寺」があり、地元の人は「八栗山(やくりさん)」とも呼んでいるとのことです。
山麓では「日本三大花崗岩」として有名な「庵治石(あじいし)」が採石され、墓石などの高級石材として加工されており、この地域には多くの石材店が軒を連ねています。
八栗寺へのアプローチは、ケーブルカー「八栗ケーブル」があります。
八栗ケーブルは1964年(昭和39年)に開業しているのですが、元をたどれば1931年(昭和6年)に「八栗登山鉄道」として運行を開始しており、戦中に運行廃止していたものを戦後高度経済成長期に復活させた歴史を持ち、古くから八栗寺参拝の重要な足となっていたそうです。
四国遍路道中で、ケーブルカーに乗る機会はここ「八栗ケーブル」だけなので、乗ってみたい気持ちはありましたが、もちろん歩き登山道を進みます。
癒し系遍路休憩所「仁庵」であたたかいおもてなしを受ける
八栗寺への登山遍路道は、舗装されていて道沿いに数軒の民家や商店もあり、他の場所の登山道とは趣が異なります。
標高差150m程度、距離1kmほどでそれほどの難所ではないので、車遍路さんも「八栗ケーブル」の駐車場に車を止めて、歩いて山に登ってみるのもよいかもしれません。
この遍路道を歩いていると、民家から「お遍路さん~」と声をかけてくれる人がいらっしゃいました。
ここは「遍路休憩所 仁庵」で、八栗寺に歩いて登るお遍路さんにいつもお接待をされているとのことで、立ち寄らせていただきました。
遍路道にたくさんのありがたい遍路休憩所がありますが、常に人がいらっしゃって、お接待をしてくださったりお話できる場所は希少です。
ぜひ立ち寄ってみてもらいたい癒しスポットのひとつです。
登山後は「お迎え大師」のお出迎え
「遍路休憩所 仁庵」に立ち寄ったあとは、ひたすら坂を登り、徐々に視界が開けて、八栗寺に到着です。
ここでお出迎えしてくれるのが「お迎え大師」です。
この大師像は、空海が山岳修行でこの地を訪れた際に、岩間からあふれる清水でのどを潤したそうで、地域の住民はその水辺に木造大師像をまつり「水大師」として信仰していたそうで、それを石造し平成22年(2010年)にこの地にまつったものであるとのこと。
山を登り終えた達成感、ふもとの景色を見下ろしながらお大師さまのお出迎えを受けるという経験は思い出深いものになりました。
ケーブルカーを使うと、お寺の裏側から参拝する経路になるので、お大師さまのお出迎えは受けられません。
このようなことも歩き遍路の特権のひとつですね。
85番札所八栗寺への登山遍路道は、それほどの難所ではなく、癒し系の休憩所やお大師さまのお出迎えも受けられる趣きがある道のりです。
車遍路さんが、少しだけ歩き遍路の気分を味わうのにもオススメの遍路道だと思います。