徳島県三好市にある「箸蔵寺(はしくらじ)」は、四国別格二十霊場の15番札所で、金毘羅大権現をまつる「こんぴら奥の院」として知られています。山深く自然が豊かな寺院で、四季折々の風景が楽しめますが、特に秋の紅葉の名所で、多くの観光客・参拝者が訪れます。
箸蔵寺とは
徳島県三好市の標高約700mの箸蔵山の山頂付近にある「箸蔵寺(はしくらじ)」は、真言宗御室派別格本山の寺院です。
寺伝によれば、平安時代前期の天長5年(828年)に四国を巡錫していた弘法大師空海(こうぼうだいしくうかい)が、当地に霊気を感じ山上に登ると、金毘羅大権現(こんぴらだいごんげん)が現れ「箸を挙ぐる者、我誓ってこれを救はん(お箸を使うものを救いましょう)」というお告げを授かったそうです。そこで、空海は自ら金毘羅大権現の像を刻み堂宇を建立したことが箸蔵寺の始まりとされています。
現在も御本尊である金毘羅大権現は、箸蔵寺から峠をこえて香川県に入ったところにある、「こんぴらさん」として親しまれ全国的に有名な「金刀比羅宮(ことひらぐう)」が総本宮にあたります。
地域の伝承で、箸蔵山に棲む天狗が金刀比羅宮のお祭りの時に使われたお膳の箸をその晩のうちに箸蔵寺に運び納めたというものがあることなどから、箸蔵寺は金刀比羅宮と昔から関係が深く、「こんぴら奥の院」としても信仰をあつめてきました。
江戸時代後期以降、一般大衆の旅行として「こんぴら参り」が流行し、こんぴらさんへの参拝者が全国各地から訪れるようになり、金刀比羅宮とあわせて箸蔵寺をお参りする「両参り」をするとご利益が倍増するとのふれこみで、隆盛した歴史があります。
箸蔵寺は、四国の弘法大師空海ゆかりの地を巡る四国別格二十霊場巡礼の15番札所になっているほか、、四国三十六不動霊場、四国三十三観音霊場、阿波西国三十三観音霊場(西部)、四国阿波八供養菩薩霊場といった複数の霊場巡礼の札所になっていて、巡礼者がたくさん訪れる寺院でもあります。
また、長い歴史の中で数度の火災に見舞われていますが、都度復興を果たし、江戸時代末期に建立された複数の建造物は、規模が大きく壮麗で歴史的価値が高いことから、国の重要文化財に指定されています。
山肌の斜面にそびえる広大な境内にある各種建造物は、一見の価値があります。
さらに、山深く自然が豊かな寺院でもあることから、四季折々の風景が楽しめるので、参拝者のみならずたくさんの観光客が訪れる観光名所でもありますが、特に秋の紅葉が美しいことで知られています。
本記事では、箸蔵寺の紅葉の魅力・見どころ・見頃などを詳細に紹介します。
箸蔵寺の紅葉の魅力と見どころ
箸蔵寺の紅葉の最大の魅力は、数々の歴史的建造物と紅葉のコンビネーションです。
木々に囲まれた広い境内には、特徴的な寺院建築がたくさんあり、その建造物に寄り添うように、また、覆うように木々が配置されていて、いろいろな風景・表情を楽しむことができます。
まず、境内に入って目に飛び込んでくるのは、堂々とした護摩堂を取り囲む木々と紅葉です。
参道では紅葉のトンネルをくぐっていくような光景も目にすることができます。
護摩堂から急な石段を登った先に本殿があります。傾斜地に建っていて、土地の高低差を利用して複数の建物が複合している構造で、とても立派な寺院建築です。細かく複雑な彫り物の装飾も見事で、紅葉と寺院建築の美しさの融合は箸蔵寺ならではの光景だと思います。
本殿に向かって左方向に進んでいくと、境内の最奥部にあたる場所に、弘法大師空海を祀る大師堂と、その裏には四国八十八ヶ所霊場の御本尊の石像が並ぶお砂踏み道場があり、こちらでも他所とは趣の異なる紅葉を楽しむことができます。
山深く広大な境内を有する箸蔵寺には、多種の植物があり、色とりどりの紅葉を楽しむことができます。境内を進んでいくと、多彩な建築物が立ち並び、景色がダイナミックに変化していくので、紅葉と建築物のコンビネーションの様々な光景を目にすることができるでしょう。
自分なりのお気に入りスポット・写真スポットをぜひ見つけてみてください。
箸蔵寺の紅葉の見頃
箸蔵寺の紅葉は、例年11月上旬頃から色づき始め、11月中旬から下旬頃に見頃を迎えることが多いです。標高が高い場所に立地しているので、平地に比べると見頃を迎えるのが早めになる傾向があります。
ただし、気候条件や年によって変動がありますので、訪れる前には最新の情報をチェックしてください。紅葉の進行は、一般的に気温の変化に大きく影響されます。秋が深まり、朝晩の冷え込みが強くなると、紅葉が一気に進みます。
また、日中と夜間の寒暖差が特に大きい時期に紅葉のピークが訪れるので、この時期は最も鮮やかな紅葉を楽しむことができるとされています。また、朝の光が差し込む時間帯や、夕方の柔らかい光が紅葉を照らす時間帯は特に美しいので、これらの時間帯を狙うと良いでしょう。
箸蔵寺への公共交通機関でのアクセス
箸蔵寺への公共交通機関でのアクセスは、JR土讃線・箸蔵駅が最寄り駅です。地域の拠点駅であるJR土讃線・阿波池田駅からも路線バスが出ていて、約30分で箸蔵山の麓に到着できます。
箸蔵駅から徒歩5分程度の場所に、箸蔵山の麓から山頂付近の箸蔵寺に向かう箸蔵山ロープウェイの登山口駅がありますので、ロープウェイを使って箸蔵寺境内に向かいます。
箸蔵山ロープウェイは、箸蔵山の麓から箸蔵寺境内までの全長約950m・高低差約350mを5分程度でたどり着くことができます。運行中には、山の傾斜にそってのびる箸蔵寺の参道や、箸蔵山の豊かな自然、吉野川の雄大な流れなどを眼下に見ることができ、箸蔵寺参拝の見どころのひとつでもあります。
4月~11月は8時~17時、12月~3月は9時~17時の毎時15分おきに運行されていて、祭時や年末年始など参拝者が多いときには臨時便も運行されるので、スムーズに箸蔵寺にアクセスすることができます。
紅葉の時期には、箸蔵山ロープウェイからの紅葉の景色もぜひ楽しんでください。
箸蔵寺への自家用車でのアクセス
最寄りのJR箸蔵駅がありますが、特急は停車せず、運行本数が限られていて、JR阿波池田駅からの路線バスも運行本数が少なく、あまり便利ではないので、多くの人が自家用車で箸蔵山ロープウェイ登山口駅までアクセスしています。
徳島自動車道・井川池田ICからは、約4km・5分程度で箸蔵山ロープウェイ登山口駅に到着できますので、高速道路でのアクセスは良好です。箸蔵山ロープウェイ登山口駅には約200台分の無料駐車場がありますので、駐車も安心です。
なお、ロープウェイを使わず自家用車で、箸蔵山の中腹の参道途中の仁王門まで行って、そこから歩いて境内に向かうことも可能ですが、仁王門までの車道が道幅が狭い山道で、さらに仁王門からはかなりの距離の登り道参道と約500段の石段をあがらなければいけないので、往復しなければいけないことも考慮すると、あまりおすすめはできません。
箸蔵山ロープウェイの景色も楽しみながら境内に向かうのが、安全で快適です。
箸蔵寺訪問時の注意事項
秋の山深い箸蔵寺は、平地に比べて気温が低く、特に朝晩の冷え込みが強くなることが多いため、防寒対策をしっかりと行うことが重要です。脱ぎ着しやすいはおりものやマフラー、手袋、携帯用カイロなどを準備しておくと安心でしょう。
また、境内は石段や未舗装で凹凸のある場所があり、特に雨の日や落葉時期は足元が滑りやすくなりますので、履き慣れた歩きやすい靴で散策されることをおすすめします。
箸蔵寺は寺院ですので、お遍路さんをはじめ、信仰のための参拝に訪れる人がたくさんいらっしゃいます。礼儀作法や他の訪問者への配慮を忘れずに、寺院の静謐な雰囲気を楽しんでいただければと思います。
箸蔵寺の紅葉は、自然の美しさと歴史的な建造物が織りなす絶景が魅力です。箸蔵山ロープウェイでの空中散歩で、山々が色づく様子と吉野川の雄大な流れを見下ろすことができるのも、箸蔵寺の紅葉狩りならではです。秋の訪れを感じながら、箸蔵寺で特別な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
※徳島県の紅葉の名所を以下リンクの記事でまとめてご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
※箸蔵寺や周辺の情報は、以下リンクの記事でもご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
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