【別格15番箸蔵寺】節分・立春の「星供養」の護摩祈祷と大般若転読法要

四国別格二十霊場15番札所箸蔵寺では、毎年節分・立春の日をまたいで「星供養」が行われています。令和6年(2024年)2月3・4日の星供養に参加し、迫力ある護摩祈祷と大般若転読法要で神秘的な体験をした様子をご紹介します。

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「こんぴら奥の院」と称される神仏習合の「箸蔵寺」

徳島県三好市の標高約700mの箸蔵山の頂上付近にある四国別格二十霊場15番札所箸蔵寺は、弘法大師空海が金毘羅大権現の神託を受けて創建したと伝わる古刹です。香川県琴平町の海上交通の神様として全国的に有名な「金刀比羅宮(通称:こんぴらさん)」との縁が深く、昔からこんぴらさんと合わせて参拝する人が多いことから「こんぴら奥の院」とも称されています。

現在でも神仏習合の歴史・風習が色濃くのこっていて、長い歴史をもつ立派な建造物の数々は、6棟が国指定重要文化財、4棟が国登録有形文化財、1棟が県指定有形文化財に指定され、建造物の造作や豪華絢爛な彫刻は一見の価値があります。
※箸蔵寺の歴史や建造物に関しては、以下リンクの記事でも詳しく紹介されていますので、ぜひこちらもご覧ください。

【別格15番札所箸蔵寺】神仏習合の影響を色濃く残す金毘羅大権現のこんぴら奥の院

【別格15番札所箸蔵寺】江戸時代に再建された建造物から当時の隆盛を想像する

 

毎年節分・立春の日をまたいで行われる「星供養」

箸蔵寺では毎年節分の深夜から日をまたいで立春の早朝にかけて「星供養(ほしくよう)」が行われます。

星供養とは、本命星と呼ばれる持って生まれた星とは別に、当年星と呼ばれる1年ごとに巡ってくる星を供養し、その年1年を幸せに暮らせますようにと願いを込めて行われる行事です。
節分は節のわかれ目であり、立春はかつての新年を迎える日であることから、もっとも願いが届くとされていて、箸蔵寺では昔からの風習を今でも受け継ぎ、このタイミングで星供養が実施されています。

 

炎が立ち上り太鼓が響く「護摩祈祷」

私は以前に箸蔵寺を参拝した際に、納経所にいらっしゃったお寺の人から星供養のことを聞き、参加のお誘いをいただいたことから、令和6年(2024年)の星供養に初めて参加しました。

令和6年2月3日節分の日に、ロープウェイ(星供養当日は21:00~2:00まで特別運航)を利用して23:00頃に本坊に入りました。護摩木(300円/本)にお願い事を書いた後、本坊の待機部屋にて星供養が始まるのを待ちます。
当日の天候は雨で、標高が高い箸蔵寺ということもあり外気温0℃。待機部屋に設置された囲炉裏とストーブが特別に暖かく感じます。

23:20頃になると、本坊の通路を通って護摩殿まで移動します。
護摩殿の中は、祭壇のろうそくと提灯の明かりのみの柔らかい光で照らし出されていて、心が落ち着きました。

静かな堂内で、祭壇に座った10名の僧侶による読経が始まり、その後は太鼓の重厚音も響く中で「護摩祈祷」が行われました。護摩木を燃やし、大きな炎が2ヶ所立ち上ります。
箸蔵寺では護摩祈祷が毎日朝夕2回行われる他、月例の護摩祈祷や、今回の星供養のような行事の際に行われるなど、回数が多く、立派な護摩殿での伝統的で迫力がある護摩祈祷で知られています。炎があまりに大きいことから年に数回は火災報知器が作動してしまうほどだそうです。

私は祭壇から一番遠い場所にいたため、屋外からの冷気を受け、とても寒かったのですが、祭壇の近くに座っていた人は炎の熱気を感じていたようで、中央付近に座っていた人は「暖かかったね」とおっしゃっていました。

50名程の参拝者が堂内に座りともに祈願し、0:00頃まで護摩祈祷が行われました。

箸蔵寺_護摩殿

護摩祈祷が行われる護摩殿は国の重要文化財に指定されています。

箸蔵寺_護摩殿_提灯

護摩殿内部の天井絵や鮮やかなデザインの提灯も見どころです。

 

幻想的な雰囲気の「大般若転読法要」

日をまたいで立春を迎え、護摩殿での護摩祈祷が終わると本坊の待機部屋に戻ります。待機部屋は、蛍光灯の明かり、ストーブ、座布団があり、急に日常の空間へ引き戻された感覚になりました。中央には10畳ほどの部屋が襖で3方面覆われており、かすかに白檀の香りが漏れていました。

箸蔵寺_大般若転読_待機部屋

待機部屋の襖で仕切られた間に向かって参拝者は待機します。

0:15頃から護摩祈祷を終えた僧侶10名が襖で仕切られた部屋に入り、般若心経の読経が始まります。私は般若心経は覚えているので、一緒に読経させていただき、読経が終わると同時に蛍光灯の明かりが消え、真暗な状態となりました。
一瞬驚きましたが、次の瞬間、中央の部屋の襖はすべて取り外され、部屋に充満していた線香などの煙が一気に待機部屋に広がりました。

祭壇には、ろうそくが揺れており、煙とも相まって、黄金が輝いて見えました。読経の声が煙とともに待機部屋全体を包み込んでいきます。襖を取り払った直後は煙でぼやけていたろうそくの火も輪郭を次第にとらえることができ、まるで霧の中にいるような、蜃気楼でも見ているような、幻想的な雰囲気です。私は、その光景にただただ圧倒され、言葉を失い、目を奪われていました。

箸蔵寺_大般若転読

襖がとられると煙の中に祭壇と僧侶の姿が浮かび上がりました。

この雰囲気の中で、僧侶による大声の大般若転読が始まりました。経巻をめくり、机をたたく光景は、初めて大般若転読に参加した私にとっては衝撃的で、このような祈願の方法があるのかとあっけにとらわれてしまいました。

大般若転読の途中、節分の豆を参拝者に向かって3度投げていただけますが、暗闇の中なので私は全く拾うことができませんでした。しかし、私の近くで豆を拾った人が「よかったらどうぞ」とわけてくださいました。
困っている人がいれば手を差し伸べる、当たり前のことですが、日常の生活では自分中心になりがちでなかなかできないことでもあると思います。箸蔵寺で祈願・法要に参加したことで、同じ立場の参拝者さんからもあたたかい気持ちをいただくことができ、日頃の自分の言動を見直し、小さなことからでも始めようと考えさせられる機会にもなりました。

 

私はこの箸蔵寺の星供養が初めての星供養体験だったので、ほかの寺院の星供養との比較はできませんが、箸蔵寺の星供養はとても神秘的であり驚きもあった貴重な体験で、皆さまにも自信をもっておすすめできる行事であると思いました。
寺院のこのような行事はあまり体験したことがないので、箸蔵寺の納経所のお寺の人に参加をすすめられた際は、正直それほど乗り気ではなかったのですが、今後は寺院の行事にも興味をもってみようと思うきっかけになりました。

 

【別格15番札所】  宝珠山 真光院 箸蔵寺(ほうしゅざん しんこういん はしくらじ)
宗派: 真言宗御室派
本尊: 金毘羅大権現
真言: おん くびらや そわか
開基: 弘法大師
住所: 徳島県三好市池田町州津字蔵谷1006
電話: 0883-72-0812

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この記事を書いた人

40歳をこえてロードバイクの魅力にハマり、月に1・2回ほど走行距離100~200kmを目安に自転車で日帰り遍路をしています。標高の高い山へ自転車で登って景色を見ることが好きで、遍路関連では焼山寺・雲辺寺・小豆島寒霞渓を制覇済で、今後もチャレンジを続けていきます。