40番札所観自在寺を出発し、しばらく進むと、愛南町旧内海村から宇和島市旧津島町への峠越えがあります。自然と景色が豊かな旧遍路道「柏坂」もありますが、海沿いを進んで、珍しい歩行者専用トンネルを通るルートもありです。
南予は峠越えの多い難所
この日は宿泊していた宿毛市街の「ホテルアバン宿毛」を早朝に出発し、高知県と愛媛県の県境「松尾峠」を越えて伊予の國に入り、40番札所観自在寺を参拝し、「道の駅 みしょうMIC」で昼食休憩をとりました。
ここからは国道56号を北上していきますが、私は海近くの海岸線の平坦な道をイメージしていたのですが、意外にアップダウンが多い峠道が続きます。
それもそのはず、南予は海岸まで崖が迫るリアス式海岸なので、海のすぐそばは山で、海岸を歩いていたと思えば、すぐに山道に入っていくという状態です。
今でこそ国道56号が整備され、車でも歩きでも容易に通行が可能になっていますが、昔の歩き遍路さんにとっては相当な難所であったことが想像されます。
ということで、「道の駅みしょうMIC」を出発してから、約5km地点で愛南町の「御荘平城(みしょうひらじょう)地区」から「御荘菊川(みしょうきくがわ)地区」へ八百坂(はっぴゃくざか)峠を越えていきます。約9km地点の「御荘菊川地区」から「柏(かしわ)地区」にかけては、山の峠道からいきなり海に出ていくというアップダウンもありました。
由良半島をのぞむ絶景の「柏坂へんろみち」
室手からほどなくして「柏」という集落にたどり着きます。ここが昭和60年に復旧整備された旧道「柏坂へんろみち」の入口です。
この道は、愛南町旧内海村から宇和島市旧津島町に入るために、標高460mの峠を越える約10kmにわたる旧道未舗装路で、かなりの難所ではありますが、峠の頂上からは海に突き出す由良半島をのぞみ、天気のよい日には宇和海の先の九州まで見渡すことができる絶景で有名です。
私が柏に到着したのは16時で、この時間から山の中に入っていったら、確実に日没遭難します…ということで、これはこの日の当初予定通りではあるのですが、国道56号をそのまま進むことにしました。
ここからの国道56号ルートは、遍路地図「四国遍路ひとり歩き同行二人」には遍路道としては示されていませんが、私は歩き遍路に適した立ち寄りスポットがあるよい道だと思い、こちらを選択しました。
その理由の詳細は、別の記事も含め、おいおいご紹介していきます。
ちなみに、「柏坂へんろみち」に関しては、愛南町で通過してきた最強休憩所「上大道お遍路休憩所」に設置されていた、地元「内海中学校」の生徒が制作した手作り案内マップを見て、通った気にさせていただきました。
※「手作り案内マップ」に関しては、以下リンクの記事もぜひご覧ください。
【上大道お遍路休憩所】愛媛県に入ってすぐの「癒しの里道」にはトイレで宿泊できる最強休憩所
珍しい歩行者専用「内海ふれあいトンネル」
国道56号ルートを選択した理由のまずひとつめは、珍しい長距離の歩行者専用トンネル「内海ふれあいトンネル」があることです。
柏の分岐点からほどなくで「内海トンネル」があり、「柏坂へんろみち」を通ると峠の上から眺められる由良半島の付け根を、低い位置でぶち抜いています。
昭和45年に整備された全長859m・全幅8mの内海トンネルは、主要幹線道路としての役割だけではなく、地域の生活道路としても重宝されていますが、平成に入ってこの地域の小中学校の統廃合があり、子どもが通学でこのトンネルを通らざるをえなくなり、歩道が狭いトンネルはたいへん危険だという問題が発生しました。
そこで、トンネル横に歩行者専用のトンネルをもう1本整備することになり、平成4年に完成したのが「内海ふれあいトンネル」なのです。
この珍しいトンネルを通ることができるのは、当然のことながら「歩き」遍路の特権ですので、ここを通るだけでも、国道56号ルートを選択する価値は十分にあると私は思います。
「ふれあい」と名前がついているだけあって、すれ違った地元の方々とは挨拶を交わし、夕方遅い時間だったので食事や宿泊場所の心配までしていただきました。
【内海ふれあいトンネル 地図】
そして、柏から国道56号ルートを選択した理由は他にもあるのですが、それは以下リンクの記事でご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
【ゆらり内海】小学生考案「タイレッ丼」と「ひおうぎ貝」と「蕾菜」と愛南町特産品フルコース
【針木ふれあい広場】ゲートボール広場に鍵付き・電気あり・フローリングの個室遍路小屋
南予の道のりは海岸でありながら峠をいくつも越えていく難所ですので、油断せずに進んでいきたいものです。