温暖な印象のある四国内でも、冬になると雪が積もる場所があります。愛媛県西予市の宇和盆地、JR予讃線・伊予石城駅近くで、冬ならでは雪化粧をほどこした迫力ある「わらマンモス」に出会いました。

雪が積もった平原にわらで作られた巨大なマンモスが立っています。
※違う季節にわらマンモスを見に訪れた様子を以下リンクの記事でご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
線路沿いに現れる「わらマンモス」

わらマンモスが設置されているのは、JR予讃線の伊予石城駅からほど近い場所です。
伊予石城は「いよいわき」と読み、愛媛県南部の西予市宇和町に位置します。
西予市には43番札所明石寺があり、四国遍路とも深く関わる土地です。 宇和町は周囲を山々に囲まれた盆地にあり、中心となる卯之町(うのまち)駅の標高は208mと比較的高い場所にあります。そのため冬季は雪が降りやすく、温暖な印象の強い四国内でも、寒さを感じる地域のひとつです。
四国内で似た環境としては、高知県四万十町窪川が挙げられます。37番札所岩本寺のあるこの地域も、標高の高い盆地に市街地が広がり、大きな川が流れることで霧が発生しやすく、冬には雪が積もることがあります。 いずれの土地も寒暖差が大きく、その気候を生かした米どころとして知られています。

JR予讃線の列車はわらマンモスのすぐ横を通過し、車窓からもその姿をはっきりと確認することができます。
この場所に突然現れる巨大なわらの造形物は、初めて目にする人に強い印象を残します。特に松山方面から訪れる場合、その前が港町である八幡浜なので冬でも雪は積もっていないことが多いのですが、卯之町方面に向かって山間部へと入り、トンネルを抜けた途端に銀世界が広がるなど、環境が一変することがあります。
そんな雪景色の中に、巨大なわらのマンモスが姿を現します。雪に包まれたわらマンモスという、四国らしからぬ光景が、訪れる人の記憶に強く刻まれる場所です。
学生と地域がつくる「わらアート」

わらマンモスは武蔵野美術大学の学生と地域の協力によって制作されました。
このわらマンモスは、東京の武蔵美術大学の学生と地域住民の協働によって生み出された作品です。地域に残る稲作文化と、若い感性が融合し、圧倒的な存在感を放つ作品として世に現れました。
制作には多くのわらが使用され、骨組みから形づくる工程には高い技術と根気が必要です。一過性のイベントで終わらせず、地域の風景として根付かせようとする意図も感じられます。

雪を巻き上げながら疾走する特急列車とわらマンモスの対比が印象的です。
雪の日には、走行する列車が舞い上げる雪煙とわらマンモスが重なり、より迫力のある光景が生まれます。無機質な列車の車体と、自然素材であるわらの対比が、この場所ならではの魅力を際立たせています。
時間帯で変わるわらマンモスの表情

朝日を浴びわらマンモスの造形がくっきりと浮かび上がる瞬間をとらえました。
私が訪れたのは、まだ薄暗さが残る早朝の時間帯でした。この場所でしばらく待っていると、やがて東の空が明るみはじめ、日の出の時刻がやってきました。朝日に照らされて、わらマンモスの表情が少しずつ変化していく場面を見ることができました。
鉄道風景とともに記憶に残る場所

今となっては希少な車両がわらマンモスの横を通過しました。
滞在していたのは小一時間ほどでしたが、朝の時間帯ということもあり、列車は思いのほか頻繁に通過していきます。現在では数を減らした国鉄キハ185系気動車が、わらマンモスのすぐ横を走る姿を見ることができました。 この車両は、四国ならではの運用の利便性を追求し、JR化直前に大量導入された国鉄のいわば「置き土産」ともいえる存在です。現在は第一線からは退き、普通列車としての運用のほか、「四国まんなか千年ものがたり」などの観光列車に改造されるなど、導入当初とは異なる役割を担う車両もあります。つい先日には保有車両の一部がJR九州へ譲渡されたことがニュースで報じられましたが、JR四国内での保有台数は減少の一途をたどっており、こうして現役で走る姿を目にできる機会は、年々貴重なものになっています。
宇和盆地で暮らす住民の方々にとっては、雪景色は見慣れたものかもしれませんが、県外や島外から四国八十八ヶ所霊場巡礼で訪れる者にとっては、四国で雪景色はイメージができないもので、そんな日に遭遇すると強く印象に残ります。そこにわらのマンモスが数体居ると一層そのように思えます。
列車内からわらマンモスを眺める場合、伊予石城駅通過時に上り列車(松山方面)は車窓左手、下り列車(宇和島方面)は車窓右手に見える位置にあります。特急列車は伊予石城駅に停車しないため車内放送がなく、一瞬で通過してしまうので注意が必要です。
列車で訪問する場合、最寄り駅はJR予讃線・伊予石城駅となりますが、停車するのは普通列車のみで、本数も多くはありません。事前にダイヤや乗り継ぎを確認した上での利用をおすすめします。
歩き遍路道中から向かう場合は、国道56号の上松葉駐在所交差点から西へ進むと一本道でたどり着くことができます。ただし片道約3.5kmの距離があり、歩き遍路道へ戻るには同じ道を引き返す必要があります。そのため、歩き遍路行程の途中に組み込むには、あまり現実的とはいえない印象です。
※わらマンモスを空撮した映像を以下に公開していますので、こちらもぜひご覧ください。
【「わらマンモス」 地図】










