【75番札所善通寺】弘法大師空海生誕の地の大規模な寺院建築と歴史的価値のある宝物

75番札所善通寺は弘法大師空海生誕の地で、空海三大霊蹟で真言宗善通寺派総本山にふさわしい大規模な寺院建築が多数あります。中でも、金堂、五重塔、御影堂は建造の歴史的背景も含め、じっくりと見ていただきたい建築物です。

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巨大な薬師如来像を祀る金堂と日本で3番目の高さの五重塔

75番札所善通寺は大同2年(807年)に、唐から帰国した弘法大師空海によって創建されたと伝わり、弘法大師空海誕生の地でもあります。善通寺という寺名は、空海の父の名前が佐伯善通(よしみち)であったことから名付けられたといいます。
約45,000㎡の広大な境内は、金堂(こんどう)や五重塔などの伽藍が並ぶ東院(とういん)と、大師堂にあたる御影堂(みえどう)がある西院(さいいん)にわかれています。

東院の南大門を入ると正面に金堂、右手に五重塔があります。南大門は戦国の兵火で永禄元年(1558年)に焼失し、約350年後の明治時代に再建されました。

金堂は江戸時代の元禄13年(1700年)に再建されたもので、二層入母屋造り、本瓦葺きです。金堂なので内部は石畳み、床が貼られていないので柱が礎石から立ち上がっているところが直接見えています。基壇の石積みは約1200年前の創建当初の礎石がそのまま使われていると伝わり、中央の大きな須弥壇に座る御本尊の薬師如来は座像ですが3mを越える、巨大な仏像です。
※本堂が金堂と呼ばれる理由は、以下リンクの記事で詳しくご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。

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善通寺_金堂

四国八十八ヶ所霊場の札所の中で随一の大きさを誇る薬師如来像を祀る金堂。

創建当初の弘仁4年(813年)に弘法大師空海が建立したと伝わる五重塔は、何度か焼失と再建を繰り返し、現在の五重塔は明治時代の1902年に完成した4代目になります。高さは45.5メートル、日本一高い京都の東寺よりは低いものの、法隆寺や醍醐寺より高い立派な五重塔です。
各層に高欄と呼ばれる手摺りの欄干を回した和様の建築で、逓減率は少なめですーっとシャープな印象です。
※寺院建築の逓減率に関しては、以下リンクの記事で詳しくご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。

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善通寺_五重塔

木造の五重塔では、京都・東寺、奈良・興福寺に次ぐ3番目の高さです。

毎年ゴールデンウィークに内部の特別公開を行っていて、2層目まで上がれるようになっています。
五重塔の近くには樹齢1000年を越えるといわれる大楠があります。おそらく弘法大師空海が生きていた時代からあったものといわれていて、空海が登って遊んだりしたのかもしれません。

 

弘法大師空海を祀る総本山の御影堂と歴史的価値がある貴重な宝物の数々

東院から中門を通り、二十日橋を渡って仁王門から西院に入ります。
御影堂を中心にした西院は、江戸時代以降に再建された20以上の建物が並びます。弘法大師空海の生まれである佐伯家のお屋敷があった場所で、誕生院とも呼ばれます。中央に御影堂・奥殿と宝物殿、南側に表書院と宸殿、北側に聖霊殿と護摩堂などが並びます。

御影堂は四国八十八ヶ所霊場の他札所でいう大師堂にあたり、弘法大師空海が祀られています。入母屋造りに千鳥破風が付いています。御影堂という呼び方は各宗派の本山に多く、宗祖を祀った建物で、京都の東西の本願寺や知恩院でもそう呼ばれています。
宗祖を祀る御影堂は立派な建物で、寺の行事などを行う場所になることも多いことから人がたくさん入れるように規模が大きいので、参拝者は御影堂が本堂と勘違いすることがしばしばありますが、御本尊をお祀りしているのが本堂なので、善通寺においても、東院の金堂(本堂)をお参りしてから、御影堂の弘法大師空海をお参りするのが、一般的な順序となります。
善通寺は、参拝者駐車場が御影堂がある西院に隣接していることもあり、駐車場から境内に入る人は御影堂の方が金堂よりも先にたどり着くので、さらに勘違いしやすい配置になっていると思います。

善通寺_御影堂

真言宗善通寺派の総本山として、多くの僧侶が集まって大規模な法要がたびたび行われる御影堂。

宝物殿には、国宝の金銅錫杖頭(こんどうしゃくじょうとう)と一字一仏法華経序品(いちじいちぶつほけきょうじょぼん)が保存されています。
金銅錫杖頭は、空海が遣唐使の際に唐の密教の師匠・恵果和尚から受け継いだもので中央の阿弥陀如来三尊の左右に四天王が配置されます。善通寺はこの恵果和尚に学んだ唐の青龍寺というお寺の伽藍配置を再現したともいわれます。
一字一仏法華経序品は、仏さまの絵が一字ずつに配された国内唯一のもので、空海が経文を書き、母の玉寄御前がその横に仏さまの絵を書いたと伝わっています。
他にも仏像では重要文化財の木造地蔵菩薩立像、木造吉祥天立像、経典・聖教(しょうぎょう)・古文書をふくめると約20,000点の歴史的な物品を収蔵していて、そのうち約30点を常設展示しています。

 

広い境内にはいくつもの寺院建築が点在しています。中には浄土宗の宗祖・法然上人や浄土真宗の宗祖・親鸞聖人ゆかりの場所もあります。法然上人は四国へ流罪になった際にこの善通寺へ参拝したといいます。
宗派を超えてリスペクトされていた弘法大師空海の誕生の地は、他宗派も受け入れる懐の深い聖地でもありますので、様々な歴史的建築物・宝物を時間の許す限りゆっくりご覧いただきたいと思います。

 

【75番札所】  五岳山 誕生院 善通寺(ごがくざん たんじょういん ぜんつうじ)
宗派: 真言宗善通寺派
本尊: 薬師如来
真言: おん ころころ せんだり まとうぎ そわか
開基: 弘法大師
住所: 香川県善通寺市善通寺町3-3-1
電話: 0877-62-0111

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この記事を書いた人

建築・不動産・旅のテーマが得意なライター。社寺系ゼネコンに勤務経験があり、四国八十八ヶ所霊場の札所建築物の改修工事に携わったことがあります。仏教に興味があり、2022年には四国のお遍路巡礼もしました。ライターとは別名義で作家として小説も書いています。