【80番札所国分寺】奈良時代当時は全国屈指の大規模な寺院であったことを示す遺構

80番札所国分寺は、奈良時代に全国に建立された国分寺の中でも屈指の大きな規模であったと伝わり、それを示す史跡がのこされています。現代の寺院建築や併設の資料館・史跡公園からも往時の面影をうかがい知ることができます。

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全国屈指の規模を誇った讃岐国分寺

香川県高松市にある80番札所国分寺は天平13年(741年)、聖武天皇の勅願により全国に建立された国分寺のひとつです。行基菩薩が十一面千手観世音菩薩像を安置して開基したと伝わります。 その後、弘法大師が本尊、伽藍を補修したとされています。

讃岐の国分寺は全国の国分寺の中でも大規模なもので、当時は東西220m、 南北240mの広大な寺域をもち、金堂や鐘楼、七重塔、僧房などが建ち並ぶ大寺院であったといいます。戦国時代には兵火にかかり、本堂と鐘楼を残して焼失しましたが、後に讃岐国守の生駒家や高松藩主の松平家によって復興されました。 境内には、国の史跡に指定された旧金堂の礎石があり、境内から北東2㎞の場所には国分尼寺の跡地もあるなど、往時の隆盛を今に伝えています。

仁王門を入ると、参道の両側には八十八ヶ所の本尊の石仏が並んでいます。
正面には鎌倉中期の建築で、国指定の重要文化財である本堂があります。正面5間、入母屋造りの本葺き、向拝なし、全体に軒反りなどは抑えめで品がありシンプルな造りですが、柱と柱とをつなぐ貫(ぬき)が多用された機能的な建物です。
※貫に関しては、以下リンクの記事で詳しくご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。

【寺院建築の楽しみ方⑤】地震による倒壊を防ぐ基礎・土壁・接合部の工夫

讃岐国分寺_本堂

往時の金堂に比べると規模が小さくなっている現在の本堂ですが、鎌倉時代の建築様式を現代に伝える立派で貴重な建築物です。

伝統的な寺院建築では地震が来た時に梁や貫が外れたり、ズレたりすることで、柱が動きやすくなり、揺れを逃がしたり吸収しやすくなるようにしているので、貫は意外に大事な部材です。柱に開けられた穴に通されているだけで、固定はされていません。釘を打ち込んで固定することは少ないのですが、よく、釘を一本も使っていない、といった言い方がされることがありますが、あれは間違いです。実際には屋根の垂木(たるき)と桁(けた)などを固定する際には釘を打っています。1000年以上前の建物でも釘は使われています。
日本では5世紀から6世紀にはすでに製鉄する技術があったようなのですが、今の釘と昔の釘では材料の質が違いますし、形も大きさも違います。昔の大工さんはよく釘を口にくわえていて、打つときに取り出しているイメージがありますが、あれは手がふさがっているからではなく錆びやすくすることで釘が抜けにくいようにするためでした。今はそのようなシーンはほとんど見られません。テッポウといわれる自動くぎ打ち機で、パシッ・パシッと早く打てるようになったためです。

本堂に祀られている御本尊・千手観世音菩薩像は、欅の一木造りの国指定重要文化財で、60年に一度御開帳されます。
境内には地蔵堂や閻魔堂、縁結社など様々なお寺や社が点在します。 讃岐国分寺の周辺は、昔から松盆栽の生産が盛んな土地柄で、境内にも高さ20mを超すクロマツなどの立派な松が目をひくのも特徴です。

 

珍しい多宝塔式の大師堂と往時の面影を残す史跡

本堂に向かって右手には多宝塔形式の大師堂が見えます。コンクリート造りの銅板葺きで、大師堂が多宝塔というのは四国八十八ヶ所霊場の札所の中で唯一のものです。大師堂は中門をくぐり、塀の向こうの拝殿(納経所)からお参りします。

讃岐国分寺_多宝塔式大師堂

多宝塔式の大師堂はたいへん珍しい造りです。

鐘楼にかかる梵鐘は、創建当時の平安前期に鋳造されたものと伝わり、香川県内では最古、四国でも最古級といわれ、 国の重要文化財に指定されています。 昔、大蛇がかぶっていたものを、 弓の名人が退治し寺に寄進したという伝説があります。

参道脇に点在する石は、讃岐国分寺金堂の礎石です。 33個がほぼ元の位置で残っており、これをもとに復元すれば東西28m、南北14mの建物となります。 その規模は奈良の唐招提寺金堂に匹敵します。地蔵堂前には塔跡の礎石15個があり、 高さ63m、1辺10mの七重塔であったと推測されています。いずれも国指定の史跡です。

現在の国分寺の境内を含む、東西330m、南北227mが国指定の特別史跡になっています。讃岐国分寺跡資料館が境内から徒歩5分程度のところにあり、発掘調査での出土品や国分寺金堂模型などが展示されています。
資料館の西側は史跡公園として整備され、一部を復元した建物跡や10分の1サイズの伽藍配置模型など創建当時をイメージできるようになっています。創建当時の平城京式鬼面文鬼瓦の展示もあります。
讃岐国分寺の往時の隆盛を知ることができますので、お寺参拝時にぜひ立ち寄っていただきたいと思います。

 

80番札所国分寺では、境内や資料館・史跡公園をじっくり見てみると、奈良時代創建当時の姿が思い浮かんでくるはずです。往時の隆盛を想像しながらお参りいただきたいお寺です。

 

【80番札所】  白牛山 千手院 国分寺(はくぎゅうざん せんじゅいん こくぶんじ)
宗派: 真言宗御室派
本尊: 十一面千手観世音菩薩
真言: おん ばさら たらま きりく
開基: 行基菩薩
住所: 香川県高松市国分寺町国分2065
電話: 087-874-0033

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この記事を書いた人

建築・不動産・旅のテーマが得意なライター。社寺系ゼネコンに勤務経験があり、四国八十八ヶ所霊場の札所建築物の改修工事に携わったことがあります。仏教に興味があり、2022年には四国のお遍路巡礼もしました。ライターとは別名義で作家として小説も書いています。