愛媛県の遍路道がクライマックスをむかえ、県境の「境目峠」の風情のある旧峠道がオススメです。あたたかいお接待や歴史を感じる石柱を体感して峠を越えた先は「香川県」ではなく「徳島県」でした。
愛媛県の県境は曼陀峠道・境目峠道・佐野道の3ルート
65番札所三角寺を出発して、標高430mからの下り遍路道沿いには、いくつかの野宿・休憩スポットがあり、約9km進んでくると、いよいよ愛媛県の県境付近に近づいてきます。
※「三角寺」からの下り遍路道の様子は、以下リンクの記事もぜひご覧ください。
伊予國最後の野宿スポット「ハト小屋」「しんきん庵・法皇」【65番札所「三角寺」→66番札所「雲辺寺」】
ここから県境を越えるルートとして遍路地図「四国遍路ひとり歩き同行二人」には3ルートが示されています。
1.遍路小屋「しんきん庵・法皇」を過ぎてしばらく進んだところで、国道192号から左方向の山に入っていって「曼陀峠」を越える「曼陀峠道」
2.「曼陀峠道」方向に分岐せず、国道192号を直進して、「境目トンネル」手前、「七田バス停」地点を右方向の旧峠道に入り、「境目峠(さかいめとうげ)」の頂上を越えてから、山の尾根づたいに「曼陀峠」方面の北方向に進む「境目峠道」
3.「境目峠」までは2番ルートと同じで、東へ峠から下り、再度国道192号に合流して佐野集落方面に進む「佐野道」
※国道192号をひたすら直進し、「境目トンネル」を抜けて「佐野道」に進むこともできます。
1番ルートが旧来の遍路道だそうですが、近年は宿泊や休憩をしやすい3番ルートの「佐野道」を選択するお遍路さんが多いようで、しかもアップダウンが少ない「境目トンネル」を抜けるのがポピュラーだそうです。
私が選択したのは3番ルートで、「境目トンネル」は通らずに、旧峠道で「境目峠」を越えたのですが、この道がとても風情があってオススメできる遍路道だったので、以下道中の様子をご紹介していきます。
急坂を登った先にはあたたかいお接待
旧峠道に入ってすぐに急な登り坂の洗礼が待っていて、「境目トンネル」に進んだ方がよかったかなと心が折れそうになりましたが、這い上がるように進んで頭の上方向に生活道路らしき道が見えたところで、あたたかいメッセージをいただきました。
このお接待を受けただけで、この旧峠道を選んでよかったと思ったのですが、この先にはさらにイベントが待っていました。
境目峠の歴史を感じる石柱には「徳島県」の標記
休憩ベンチのところから生活道路に入り、幾分なだらかになった登り道を進んだ先が、いよいよ伊予國のクライマックスの県境「境目峠」の頂上です。
そして、愛媛県を歩ききった達成感を感じつつ、県境をまたいでから、あらためて石柱を見てみると、まさかの表示が。
愛媛県の次は当然のごとく香川県だと思っていたのですが、この県境では愛媛県から徳島県に入るのです。
また阿波國に戻るのかと心配になりますが、ここから一時的に徳島県三好市を進み、次の66番札所「雲辺寺」から香川県に入ることになります。
伊予國「菩提の道場」を歩ききりはしましたが、讃岐國「涅槃の道場」に入るには、まだ修行の道のりが必要だということでしょう。
香川県に入ることができないことに少々がっかりはしましたが、この境目峠は、伊予國の旅路を締めくくるのにふさわしい思い出に残る場所になりました。
境目峠越えのあとは「お食事処 水車」でひと休み
境目峠を越えて佐野道を進むメリットは、「曼陀峠道」「境目峠道」がどんどん山の中に入っていくのに対して、「佐野道」は雲辺寺前のベースキャンプとなりうる「佐野」の集落に立ち寄ることができるところです。
佐野には、自動販売機や民宿がありますので、ここで休憩・宿泊をして準備を整えてから雲辺寺に向かうのもよい選択だと思います。
私は、境目峠を下ったところの佐野集落より手前にある「お食事処 水車」で昼食休憩をとりました。
「水車」という店名を見て、高知県の足摺岬に向かう途中の「ドライブイン 水車」を思い出し、このような中継・休憩地点には「水車」はつきものなのかと思ってしまいました。
※「足摺岬」に向かう途中の「ドライブイン 水車」に関しては、以下リンクの記事もご覧ください。
【四万十市→土佐清水市】四国遍路の父「真念」ゆかりの「真念庵」と「ドライブイン水車」は足摺岬への中継基地
徳島県三好市は四国山地の山中にあたり、特に南部は渓谷が続く秘境のような雰囲気で観光地としても有名ですが、三好市の「祖谷(いや)地域」は質の良いそばの実が育つことでも知られ、つなぎをほとんど使わない太くて短くそば本来の風味を味わえる「祖谷そば」が名物になっています。
「お食事処 水車」のそばが「祖谷そば」だったかは不明ですが、太くて短く、もぐもぐとそばを噛みしめて味わう感じではありました。
【「お食事処 水車」 地図】
愛媛県から一時的に入る徳島県の県境は、複数のルートからの選択になりますので、スケジュールや体調に合わせて選んでください。
旧峠道で境目峠に登った際には、途中のお接待と峠の石柱をお見逃しなく。