香川県さぬき市にある西教寺は、奈良時代に行基菩薩が開創、弘法大師が堂宇を建てた伝承のある番外霊場です。お寺の縁起や境内の建造物からは弘法大師空海とのつながりを強く感じることができます。
四国八十八番前霊場とされる番外札所「西教寺」
香川県さぬき市富田にある西教寺は、奈良時代の僧侶「行基菩薩」の開創、弘法大師空海が堂宇を建立したと伝わるお寺で、お寺の背後にある標高 245mの「火山(ひやま)」の中腹には、弘法大師が一夜で刻んだ伝承の残る磨崖仏があり、西教寺奥の院とされています。
この磨崖仏の伝承は下記のように伝えられています。
"磨涯佛は弘法大師が修行の途中、当山奥ノ院に立ち寄られ、一夜建立の祈願をかけ、薬師如来像を彫っていたそうだ。ところが、天の邪鬼が悪戯をし、夜が明けていないのにも関わらず鶏の鳴き声をまねて、鶏鳴を発してしまった。そこで、一夜建立の祈願がむなしく破れたと勘違いした弘法大師は、薬師如来を途中彫り差しのまま大窪寺へ向かわれたという。"(新四国曼荼羅霊場会HPより)
このことから西教寺では、自寺を88番札所大窪寺の「前霊場」としているそうです。
西教寺本堂
門前の大きな木を抜け山門をくぐり、境内に入ると、立派なお堂が正面に見えてきます。
境内はコンパクトながら、本堂は大きく風格が感じられます。印象的だったのは、少しユニークでひねりの効いた瓦や彫刻。こうしたディティールには、お堂を建てた職人の腕や住職の感性が表れるので、お寺や地域の個性を知るいい手掛かりになります。
西教寺大師堂ほか
本堂の右横には大師堂があります。
お寺は少し高台にあるので、境内からは爽やかな空の広がりを感じることができました。
弘法大師を輩出した佐伯家ゆかりの「三羽雀紋」を発見
個人的に嬉しかったのが、弘法大師空海の父方の豪族「佐伯家」が使っていた「三羽雀紋」を見つけられたことです。
三羽雀紋は弘法大師に縁深い紋であることから、香川県には三羽雀紋を使う寺が多いとのことで、以前に調査したことがあります。
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弘法大師空海御生誕の地で佐伯家の敷地に建てられた75番札所善通寺の現在の寺紋は「菊に善」ですが、以前は三羽雀紋を使っていたことがわかっています。こちらの西教寺も善通寺派の寺院であるので、善通寺との縁が寺紋にあらわれているのかもしれません。
西教寺での参拝を済ませ、続いて背後の火山(ひやま)にある奥の院へと向かいます。
※奥の院のご紹介は、以下リンクの記事に続きます。
【西教寺奥の院】火山中腹に鎮座する弘法大師が刻んだ磨崖仏と穴薬師
コンパクトながら空に抜ける景色が心地よい西教寺では、個性的な彫刻や三羽雀紋に出会うことができました。新四国曼荼羅霊場の8番札所でもあるため、納経所で御朱印もいただけます。奥の院とともに霊場巡りをお楽しみいただけると思います。
【「西教寺」 地図】