香川県坂出市にある松浦寺(遍照院)は、弘法大師空海が42歳の厄除祈願を行った寺で「厄除け大師」の元祖として知られています。霊峰五色台の麓にあり、81番札所白峯寺参拝前に立ち寄るお遍路さんもいます。
弘法大師自ら厄除祈願を行った厄除寺の元祖
香川県坂出市、霊峰五色台の麓にある遍照院松浦寺は、弘法大師が自らの像を刻み、大岩の上で42歳の厄除祈願の秘法を修せられたと伝わるお寺です。弘法大師はこの地に堂宇を建て、阿弥陀如来像と自像を安置します。寺は七堂伽藍を持つほどに栄えましたが、14世紀の戦火で御影堂を残して全て焼失してしまったそうです。
松浦寺は81番札所白峯寺の前札所であり、弘法大師が自ら厄除祈願を行った伝承から、厄除け寺、厄除け大師の元祖とも呼ばれています。
松浦寺で一番目を惹く大岩の上のお大師さま
松浦寺で一番インパクトがあるのが、まーるい大岩とその上に鎮座するお大師さま。この大岩が弘法大師自ら厄除祈願を行った岩で「求聞持石」と呼ばれているそうです。
松浦寺の境内の様子
松浦寺を訪れて感じたのが「空気の抜けの良さ」。独立した高台の上にあるので景色も四方にひらけており、風通りの良い雰囲気です。周囲には墓地が広がっていますが、全体的に明るく爽やかな印象を受けました。
もう一つ気になったのが、本堂左手奥にある閻魔堂。金網の間から中を除くと、なかなか豪華な地獄メンバーが揃っています。
仏教の「あの世」観では、人が死ぬと「浄土」に行くか、地獄行きを含め「輪廻」を続けるかの裁判が行われるのですが、決定までには10回もの審判があり、3回忌の頃にやっと行き先が決まるそうです。その審判をするのが地獄の十王たち。閻魔さまもそのうちの一人で、10回ある裁判の5番目を担当しています。
松浦寺の閻魔堂にも、閻魔さまを中心に彩色された地獄の十王が並んでいて、なかなか見ごたえがあります(写真には全部写っていません)。昔の人はこのお堂を前に「悪いことしたら地獄に落ちて十王たちに裁かれるよ」なんて教えていたのかもしれません。
ちなみに閻魔様の裁判で輪廻を続けるか浄土に行くかが決められるので、ここで裁判を終えても良さそうですが、その後もさまざまな判決を経て、3回忌の頃に最終的な行き先が決まるとのこと。途中で再審請求も可能で、救済措置も用意された慎重な裁判システムになっています。仏教の死後の概念は興味深いですね。
巨石信仰の痕跡が遺る五色台周辺において、巨石そのものを祀っている遍照院松浦寺。厄除け寺としても知られているので、四国八十八ヶ所霊場巡礼の途中で訪れてみてはいかがでしょうか。インパクトのある大岩と彩色が残る十王像など、このエリアならではの信仰に触れられるお寺です。
【「遍照院松浦寺」 地図】