【10番札所切幡寺】珍しい形の本堂でお参りしたあとは豊臣家の貴重な遺構である大塔の絶景へ

10番札所切幡寺は機織り娘の千手観音伝説が寺名の由来です。入母屋の銅板屋根、流れ向拝に唐破風が組み合わさった珍しい本堂でお参りしたあとは、豊臣家の貴重な遺構である国指定重要文化財の大塔まで登って絶景も楽しんでください。

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機織り娘の千手観音伝説

10番札所切幡寺は、標高155mの切幡山の中腹に境内があり、ふもとの山門から境内までは坂道で石段が300段以上あります。建立は古く、平安時代の815年に遡ります。

本尊は千手観世音菩薩です。実際に手が1000本あるわけではありませんが、それくらい多くの人々を苦しみや悲しみから救うことができるということを表し、観音様の慈悲の心がとても広いことを示しています。また、1本の手でひとつの世界を救うともいわれます。千手観世音菩薩はそれぞれの手のひらに眼を持っていることから千手千眼観世音菩薩ともいわれます。
さらに十一面観音のように、頭の上にはいくつかのパターンのお顔を備えていることもあります。像によって違いはありますが、手に蓮華や宝珠、錫杖などを持ち、前の2本の手は合掌しています。開運、運気上昇、無病息災、病気平癒、恋愛成就、子宝、災難厄除けなど現世利益も絶大な観音さまです。

切幡寺の縁起では、修行中の空海が衣がほころんで困っていると、村の機織り娘が織りかけの布を切って差し出し、それに感謝した空海が娘の望みを聞くと、仏門に入りたいと答えたので、空海は千手観音を掘り、娘を得度させたところ、その娘は千手観音に即身成仏したといいます。さらに、この話を聞いた嵯峨天皇が千手観音を本尊として切幡寺をここに創建するよう命じたと伝わっています。この1000年以上の歴史をもつ千手観世音菩薩像は秘仏として切幡寺で大切に保存されています。
本堂の横にあるはたきり観音像は銅像で、手にハサミと布を持ち、寺伝をあらわしています。

 

大屋根・向拝・唐破風が3段階になっている珍しい本堂

石段を登り切ったら正面に見える本堂は銅板屋根で、少し角度をつけて斜めから見ると、大屋根から流れ向拝(こうはい)、さらに唐破風(からはふ)と3段階になっていることがよくわかります。
普通は向拝をつけるとしても流れ向拝か唐破風かどちらかなのですが、このふたつが合体してどちらも同時に見られるというのは非常に珍しい形です。
瓦屋根ではたまに見かけますし、切幡寺の大師堂は入母屋で向拝が切妻破風(きりづまはふ)に唐破風の合体タイプになっている瓦屋根です。銅板屋根の大師堂でこのような形は他でもそこそこ見ますが、本堂で入母屋・銅板屋根のこの形となると事例がかなり絞られてきます。
※寺院建築の屋根の特徴や装飾に関しては、以下リンクの記事で詳しくご紹介しているので、ぜひこちらもご覧ください。

【寺院建築の楽しみ方④】屋根の種類とその形状からわかること

切幡寺_本堂

切幡寺の本堂は少し斜めの角度から見ると、屋根の特徴がわかりやすいので、ぜひお試しください。

四国八十八ヶ所霊場の札所を訪ねたら、正面から見るだけでなく、少し角度をつけて斜めから見てみると、イメージが変わったり意外な発見ができることがあります。

 

大塔は大阪から移築された豊臣家の遺構

切幡寺参拝時には、本堂や大師堂がある境内からさらに100段以上の階段を登ったところにある国指定重要文化財の大塔もぜひご覧ください。慶長12年(1607年)に豊臣秀吉の跡継ぎの豊臣秀頼によって大阪の住吉大社・神宮寺に建立され、明治6年(1873年)に解体移築してきたものです。
建立当時の豊臣秀頼はまだ子供で、徳川家康の勧めで各地の神社仏閣の造営を推進していました。家康は豊臣家の資金を減らそうとしていたのです。1600年の関ヶ原の戦いで勝利した家康でしたが、まだまだ豊臣家は健在で、天下を取ったとはいえなかったのです。父の秀吉の菩提を弔うために塔を建ててはいかがと進言してお金を使わせました。
五重塔や多宝塔などの仏塔を建てる目的は、もともとはお釈迦様の骨を祀ったお墓からはじまったとされています。つまり亡くなった人の供養のために仏塔が建てられました。供養塔として石塔を建てられているのはよく見かけますが、それが大規模になったイメージです。
仏塔のメインは実は先端に取り付けられる相輪(そうりん)のほんの一部で、建物自体は付属品です。相輪をなるべく高い場所へ祀るために高い塔を作っているということになります。

移築されたこの切幡寺の大塔は、最初は1層の塔でしたが後に2層目を当時の住職が10年がかりで作ったそうです。よく見る2層目が円形の塔とは違い、1層目も2層目も四角い形で、日本で唯一の形になります。

移築されたとはいえ建物そのものは400年以上前の戦国時代の遺構です。豊臣家が建立した建物の遺構は京都周辺にいくつか残っていますが、四国で見られるものはほとんどなく貴重です。切幡山の頂上近くの高い位置に移築されたため、大塔から望むことができる吉野川や四国山地が美しく絶景でもありますので、登るのに少し苦労しますが、ぜひ訪れてみてください。

切幡寺_大塔

2層目も四角いどっしりした形の大塔は珍しいです。

 

10番札所切幡寺は、境内にたどり着くのに苦労しますが、機織り娘の伝説や、珍しい形の本堂、戦国時代の貴重な遺構であり絶景を望むことができる大塔と見どころがたくさんあります。境内で、じっくりと歴史や建物を味わってもらいたいお寺です。

 

【10番札所】  得度山 灌頂院 切幡寺(とくどざん かんじょういん きりはたじ)
宗派: 高野山真言宗
本尊: 千手観世音菩薩
真言: おん ばざらたらま きりく
開基: 弘法大師
住所: 徳島県阿波市市場町切幡字観音129
電話: 0883-36-3010

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この記事を書いた人

建築・不動産・旅のテーマが得意なライター。社寺系ゼネコンに勤務経験があり、四国八十八ヶ所霊場の札所建築物の改修工事に携わったことがあります。仏教に興味があり、2022年には四国のお遍路巡礼もしました。ライターとは別名義で作家として小説も書いています。