白山の東には八ヶ峰と呼ばれる小高い丘があり、その麓には眞行寺と勅使神社が並んでいます。新川沿いの聖地を結ぶ二至ライン上に位置し、レイライン的ネットワークの重要地点でもあります。
眞行寺
新川を遡上した先にそびえる白山の東に八ヶ峰があり、その麓にあるのが「眞行寺(しんぎょうじ)」です。
※新川の起点から、白山までに関しては以下リンクの記事をご覧ください。
【屋島〜新川上流】豊玉姫の聖地とレイライン-白山・白山神社編
眞行寺の正式な寺号は、宝積山光正院眞行寺。
真言宗善通寺派で、本尊は阿弥陀如来です。
本殿は東向きで、目視はできませんが白山を背負う形になっています。
この構造は、白山を西方浄土の入り口として、西方浄土の守り本尊である阿弥陀如来をその前立とするもので、参拝者は西面して本尊を拝むことで西方浄土への成仏を願う形をしているものでしょう。
境内には室町時代初期の板碑があります。
高さ121cm、幅30-37cm、厚さ3-6cm、通称「阿波の青石」と呼ばれる緑泥片岩で、「南無阿弥陀仏」の六字の名号とその下に蓮華座が彫られています。
地元では「お大師さんの爪彫りの名号」と呼ばれて親しまれています。
青石は徳島の特産で、それを板碑にする習慣は徳島ではポピュラーですが、香川ではほとんど見られません。
このことから、眞行寺と徳島と関係の深さがうかがえます。
また、板碑の近くに「鎌倉塚」と呼ばれる塚がありますが、これは足利10代将軍義稙(よしたね)の墓と伝えられています。
義稙は、細川高国に将軍職を追われ、淡路から阿波に逃げ、鳴門で亡くなったと伝えられています。
その墓とされるものがあることも、当寺と阿波との繋がりの深さを物語っています。
【「眞行寺」 地図】
八ヶ峰・勅使神社
本堂の北方は八ヶ峰で、その頂上へ向かって四国八十八ヶ所写し霊場と西国三十三観音写し霊場の道がつけられています。
八ヶ峰の頂上には八ヶ峰神社の小祠があり、この祠は冬至の日出方向を指しています。
「八ヶ峰」もしくは「八ヶ崎」といった地名は、「鉢ヶ峰」や「鉢ヶ崎」の表記が変化したケースが多いのですが、「鉢」というのは、経を入れた鉢のことで、この鉢を埋設することは地鎮の意味があります。
この八ヶ峰も経鉢を埋設した峰という意味ではないかと考えられます。
八ヶ峰神社を管理しているのは眞行寺ではなく、眞行寺の南西に隣接する勅使神社です。
勅使神社は南面して高仙山と正対しています。
また、俯瞰してみると、八ヶ峰は、長尾寺-八ヶ峰-天野八幡宮-池戸八幡宮-金崎神社-石清尾山と浄願寺山の鞍部を結ぶ冬至日出と夏至日入の二至ライン上に位置しており、大規模なレイライン的ネットワークのキーポイントの一つであることがわかります。
【「勅使神社」 地図】
【「八ヶ峰 頂上」 地図】
白山の東側の「八ヶ峰」は、著名な白山に隠れてしまいがちですが、眞行寺の弘法大師信仰・徳島県阿波國とのつながり、勅使神社と高仙山との関係、経塚の存在をにおわせる名前、そして新川沿いの聖地と二至ラインと、多くの聖地性を秘めた興味深い場所です。
さらに詳しく調べてみると、まだ知られていない新しい発見があるかもしれません。
※「豊玉姫の聖地とレイライン―屋島から新川を辿る―」は以下リンクの記事に続きます。
【屋島〜新川上流】豊玉姫の聖地とレイライン-鰐河神社・和爾賀波神社編