【56番札所泰山寺】お大師さまが川の氾濫をおさめ創建したお寺

56番札所泰山寺は、お大師さまが川の氾濫をおさめ創建したといわれているお寺です。お寺の見どころの、創建時にお大師さまお手植えの「不忘の松」と、珍しい場所に安置されている仁王像を見つけることができるでしょうか。

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今治市ののどかな田園地帯とかつての暴れ川「蒼社川」

55番札所南光坊がある今治市の中心街から、住宅や学校が並ぶ生活道を南西方向に進み、今治インターチェンジ近くの国道196号を渡れば、街の様子が一変し、田園地帯が広がります。
のどかな雰囲気の地域の小高い丘の上に、56番札所泰山寺があります。

この一帯は今治平野を形成する蒼社川(そうじゃがわ)の流域で、昔から稲作が盛んに行われていたようですが、雨が多い梅雨時期にはたびたび氾濫する川だったそうで、空海がこの地を訪れた平安初期には、多くの人命を奪う「人取川」と呼ばれ、悪霊のしわざとも思われていたほどとのこと。
川の氾濫を恐れ苦しむ住民のために空海が堤防を築き、「土砂加持」の秘法を七座にわたり修法したところ、満願の日に延命地蔵菩薩を空中に感得し、治水祈願が成就したことを告げ、このことをきっかけに現在の「泰山寺」が創建されたそうです。

遍路道中で、お大師さまが渇水の地域では水脈を探し当て井戸を掘るといった「御加持水」の伝説の地とたくさん遭遇してきましたが、ここ今治では治水の伝説が残り、空海が当時では最先端の水に関する技術や知識を備えていたことがうかがえます。

 

お大師さまお手植えの「不忘の松」

お寺の創建時に空海が自ら植えたといわれる「不忘(わすれず)の松」があり、現在は枯れてしまい切り株だけが残っており、これに腰掛けると腰痛回復のご利益があるとのことなのですが、私はこのことをあとから知り、完全に見逃してしまいました。
残念に思いながら、お寺で撮った写真を見返していると、なんと「不忘の松」が写りこんでいたのです。

泰山寺 境内 不忘の松

左奥の本堂と右側の客殿(宿坊)を写した写真の手前側に、石柱と松がちらっと写っています。お寺の境内に入ってすぐ右側ですので、お見逃しなく。

枯れたといいながら立派な松が写っているのですが、これは子株が植えられたものだそうです。
納経所には「不忘松千枚通護符」があり、それを水に浮かべて飲むと、心と体の不安を取り除いてくれるといわれているそうなので、ご興味のある方はお試しください。

 

珍しい場所に安置されている「仁王像」

泰山寺は、石垣の上の白い漆喰壁に囲まれた境内で山門がなく、上の写真に写っている石柱がお寺の入口なのですが、通常山門に安置されていることが多い「仁王像」は、実はお寺の中に安置されているのです。
これも私は見逃していたのですが、仁王像を意識せずに撮った写真にこれまた写りこんでいました。

泰山寺 本堂 仁王像

本堂を写した写真なのですが、この写真のどこかに「仁王像」が写っています。どこかわかりますか?

わかりづらいと思いますが、本堂右側の客殿との間の廊下に、2体の仁王像が安置されています。
創建時は、現在の境内の場所の裏山で山号にもなっている「金輪山(きんりんざん)」の山頂にお寺があったそうで、天長元年(824年)には淳和天皇の勅願所となり、七堂伽藍を備え10坊を持つ規模となったものの数度の兵火により衰退し、金輪山の山上より麓の現在の場所へ移築されたとのことで、このあたりの事情も「山門」がなく「仁王像」があることに関連しているのかもしれません。

理由はとにかく、珍しい場所に仁王像が安置されており、意識しておかないと私のように見逃してしまいますので、本堂参拝時には右側の廊下に注目してみてください。

泰山寺 四観音像

境内には4体の観音様もいらっしゃいました。

泰山寺 記念碑 鐘楼

立派な記念碑の奥の歴史を感じる鐘楼は、明治14年(1881年)に今治城内の太鼓楼の古材で再建されたそうです。

 

56番札所泰山寺では、お大師さまの治水の功績をしのび、「不忘の松」や「仁王像」を見逃すことなく、お寺の歴史を感じてみてください。

 

【56番札所】  金輪山 勅王院 泰山寺(きんりんざん ちょくおういん たいさんじ)
宗派: 真言宗醍醐派
本尊: 地蔵菩薩
真言: おん かかかび さんまえい そわか
開基: 弘法大師
住所: 愛媛県今治市小泉1-9-18
電話: 0898−22-5959

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この記事を書いた人

お遍路さん初心者です。  2015年1月20日(火)に1番札所を出発し、2015年3月1日(日)に41日間で88番札所で通し歩き結願を果たすことができました。 2015年4月12・13日の2日間で、開創1200年で盛り上がる高野山にお礼参りにも行ってきました。 自身の通し歩き遍路体験を元にお役立ち情報を発信しています。