【総本山善通寺宿坊「いろは会館」】弘法大師空海生誕の地に宿泊して仏教体験

75番札所善通寺の宿坊「いろは会館」は、最大250名が収容できる大きな宿坊です。早朝の勤行や、宿泊者だけが利用できる天然温泉「大師の里湯」など、善通寺ならではの体験ができるので、お遍路さんにとても人気があります。

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総本山善通寺宿坊「いろは会館」について

お遍路さんが泊まる宿の歴史や運営コンセプトについてインタビューする遍路宿紹介シリーズ。真言宗善通寺派の総本山である75番札所善通寺は、弘法大師ご生誕の地として四国八十八ヶ所霊場の中でも特別な場所ですが、その善通寺に泊まれる宿坊が「いろは会館」。50室余の客室を持ち、最大250名が収容できる大きな宿坊です。

総本山善通寺公式HP 「宿坊」: https://www.zentsuji.com/shukubou/

善通寺宿坊 いろは館外観

御影堂の左手奥にある善通寺宿坊「いろは会館」

この「いろは会館」について、善通寺の僧侶で広報を担当しておられる安藤誠啓さんに、歴史や宿坊を営む上で大切にしていることなどをうかがってみました。

善通寺 安藤誠啓氏

善通寺で広報を担当しておられる安藤氏。

 

いろは会館の歴史−「四国遍路」の一般化と宿坊の始まり

安藤さんによると、善通寺に宿坊ができたのは、四国遍路の歴史から見ると実はかなり最近のことだとか。

弘法大師の足跡を辿る「四国遍路」自体は古くから行われていたものの、修行者ではない一般のお遍路さんが増え始めたのは昭和48年に行われた弘法大師生誕1200年記念事業がきっかけとのこと。高度成長期を経て国内旅行が普及した時代背景も手伝って、四国における巡礼者が急増したそうです。

善通寺では、このような事情で増加したお遍路さんの宿泊需要に応えるため、最初は「善通寺宗務庁」の奥手にある「宸殿」の大広間にマットを敷き、男女共同雑魚寝スタイルでお遍路さんを泊めていたそうですが、その後段階的に宿泊施設の整備を進め、3回の増改築を経て平成10年に現在の姿になったとのことでした。

善通寺 いろは会館 館内案内図

3度の増築を繰り返した「いろは会館」の館内案内図。最初にお遍路さんを泊めた「宸殿」の文字も見えます。

 

俗世から離れた「お遍路さんのための運営スタイル」を守り続ける

そのように整備された歴史を持つ「いろは会館」。宿坊に泊まるお遍路さんについて、安藤さんは次のように語ります。

「いろは会館で徹底しているのは《お遍路さんのための宿》という姿勢です。宿坊は一般の宿泊者も受け入れていますが、泊まられるのはほぼ四国遍路の巡礼者。お遍路さんはたいてい早朝から巡礼を始めるので、夜は早くお休みになります。夜の騒音が睡眠の邪魔になってはいけないので、いろは会館では門限・消灯を21時に定めるなど、お遍路さんに配慮した運営スタイルになっています。この点が普通の旅館とは違うところです。」

また、この宿坊に泊まる間は俗世の時間を忘れてほしいという安藤さん。ほんの2〜3年前までは部屋にテレビもなかったそうです。日常の世事から離れる経験をここでは大切にしているとのお話でした。

善通寺 いろは会館 共有スペース

受付前の共有スペースはお遍路さん同士の交流の場。昔はここにしかテレビを置いていませんでした。

 

お遍路さんに朝の勤行と境内の清々しさを体験してほしい

「いろは会館」のおすすめについてお聞きすると、「早朝に行われる勤行」との答えがかえってきました。朝の勤行は自由参加ですが、ほとんどの宿泊者が参加されるそうです。お寺で目覚め、早朝の清々しさの中で勤行に参加し、身も心も清めた後に「戒壇巡り」でお大師さまとの縁を結ぶ。それこそが、善通寺でしかできない経験だと安藤さんは言います。

他におすすめしたいのは、宿泊者だけが利用できる天然温泉「大師の里湯」の大浴場。この温泉も元々あったものではなく、ゆったりくつろいでほしいとの思いからお遍路さんのために掘った温泉なのだとか。安藤さんいわく「私も利用しますが、広々としていてよく温まるので、家のお風呂には入れなくなりました。」とのこと。宿泊者のためだけに掘られた温泉ときくと、利用しないわけにはいかないですね。

善通寺 朝勤行

御影堂(大師堂)で毎朝行われている勤行は、宿泊者以外の人も自由に参加できます。

 

【「総本山善通寺宿坊 いろは会館」 基礎情報】

名 称 総本山善通寺宿坊  いろは会館
宿の形態 宿坊
住所 香川県善通寺市善通寺町3丁目3−1

総本山善通寺宿坊「いろは会館」の詳細情報とご予約はこちらから↓
四国宿泊予約サイト「お遍路さん家」【総本山善通寺宿坊 いろは会館】

 

弘法大師ご生誕の地を訪れるお遍路さんの信仰心に応えるように、「お遍路さんのための」運営スタイルを守り続ける総本山善通寺宿坊「いろは会館」。安藤氏の言葉の端々からも、巡礼者への配慮が感じられました。四国八十八ヶ所霊場の中でも、弘法大師のご生誕の地に泊まるという貴重な体験ができる特別な宿です。

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この記事を書いた人

札幌で生まれ育ち、東京にて都市計画コンサルタントに従事。結婚を機に香川に移住し、地方自治体勤務などを経て現在に至る。お遍路文化を通じた新しい四国の楽しみ方を模索しています。日本酒とワインが好き。