【74番札所甲山寺】空海が幼少期を過ごした地のお寺は「満濃池」と深き縁

74番札所甲山寺は、空海が幼いときによく遊んだ地に建てられたお寺だといわれています。お寺の創建には、空海の治水技術と日本最大の灌漑用ため池「満濃池」が深く関わっています。

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不思議な自動販売機の休憩スポット

73番札所出釈迦寺の参拝を終え、72番札所曼陀羅寺方向に坂を下って打ち戻り、次の74番札所甲山寺方面には田園地帯を進んでいきます。
約1kmほど進んだ県道48号と県道217号のT字交差点付近で、不思議な自動販売機を発見しました。

善通寺市吉原 自動販売機看板

自動販売機がたくさん並んだ広場があり、ベンチや椅子も設置されていて休憩スポットになっているところで、怪しい看板を発見。

善通寺市吉原 自動販売機

上の看板が示していた自動販売機の正体はこれ。「三流コーヒー」がとても気になりましたが、8周年御礼のサイダーを買いました。

お遍路さんへのお接待の意味もあるのかどうかはわかりませんが、思わず買ってしまう魔力を秘めた自動販売機ではありました。

この自動販売機がある場所から、東方向を見るとこんもりとした小さな山が見え、ここが甲山寺で、田んぼの間の道をさらに1kmほど進むと到着です。

【善通寺市吉原 「不思議な自動販売機」 地図】

 

お大師さまが幼少期によく遊んだ有縁の地

お大師さまの出生地は、現在の香川県善通寺市で、甲山寺がある地域は幼少期によく遊んだ場所だといわれています。
甲山寺の近くには、お大師さまが幼少時に泥土で仏像をつくっていたとされるゆかりの地が「仙遊寺」としても残っています。

お寺の縁起によると、壮年期の空海が曼陀羅寺と善通寺の間で伽藍を建立する霊地を探して、幼少期によく遊んだ地域を探索していると、山の麓の岩窟から老人が現れ、この地にお寺を建立すべしとお告げをしたそうです。
この老人が毘沙門天の化身と悟った空海は、この岩窟に毘沙門天をまつったとされ、これが現在の甲山寺の境内にある岩窟と毘沙門天像とのこと。
境内裏山のこんもりとした山が「甲山」と名付けられたのも、山の形が毘沙門天の兜の形に似ていたことからだといわれています。

 

甲山寺 甲山 毘沙門天岩窟

標高90mほどの小さい「甲山」の麓に甲山寺はあり、本堂横に岩窟があります。お寺に歩いてくる途中の遠くから見た山を思い出すと、たしかに兜の形に似ていたかもしれません。

 

日本最大の灌漑用ため池「満濃池」とお大師さま

甲山寺の創建は、甲山寺の南東約15kmのところにある日本最大の灌漑用ため池「満濃池(まんのういけ)」が深く関わっています。

香川県は全国の都道府県で一番面積が小さい県で大きな川がないため、昔から農業用水の確保に苦労していた歴史があり、多くのため池がつくられてきました。
その中でも最大規模のため池が「満濃池」で、奈良時代に入る前の大宝年間(700年頃)に創築されたといわれています。
その後、洪水による決壊がたびたび起こっているのですが、平安時代の弘仁12年(821年)に嵯峨天皇の勅命で改修工事を指揮したのが空海だったそうです。
この工事は、朝廷が派遣した築池使さえも達成できなかった難しい工事で、空海は甲山の岩窟で修復工事の完成を祈願し、薬師如来像を刻んで修法したところ、空海を慕って数万人の人々が集まり、力を合わせてわずか3ヶ月で完成することができたとのこと。
朝廷からこの功績を称えられ、金2万銭を与えられた空海が、その一部を使って伽藍堂宇を建立し、工事完成祈願をこめて刻んだ薬師如来を御本尊として創建されたのが「甲山寺」なのだそうです。

お遍路をしているとお大師さまの水にまつわる伝説にたびたび遭遇しますが、ここ甲山寺には実務として空海が治水工事を行ったエピソードが明確に残っています。
このエピソードが曲解されたのか、地元では「空海が渇水にあえぐ民のため、地に釈杖をついて湧き出させた水が池となった」という伝説も語り継がれているとか。

甲山寺 本堂 薬師如来

満濃池とゆかりが深い本堂の御本尊「薬師如来」は拝顔もできます。

 

74番札所甲山寺は、お大師さまの幼少期と、壮年期の満濃池にまつわるエピソードを思い浮かべながら参拝したいお寺です。

 

【74番札所】  医王山 多宝院 甲山寺(いおうざん たほういん こうやまじ)
宗派: 真言宗善通寺派
本尊: 薬師如来
真言: おん ころころ せんだり まとうぎ そわか
開基: 弘法大師
住所: 香川県善通寺市弘田町1765-1
電話: 0877-63-0074

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この記事を書いた人

お遍路さん初心者です。  2015年1月20日(火)に1番札所を出発し、2015年3月1日(日)に41日間で88番札所で通し歩き結願を果たすことができました。 2015年4月12・13日の2日間で、開創1200年で盛り上がる高野山にお礼参りにも行ってきました。 自身の通し歩き遍路体験を元にお役立ち情報を発信しています。