74番札所甲山寺は、弘法大師空海とゆかりが深いお寺で、別名「うさぎ寺」として近年特に若い女性から人気を集めています。季節ごとに様々な花で彩られる境内で、うさぎにちなんだものを探してみてください。
弘法大師空海とゆかりが深い甲山寺
74番札所甲山寺の周辺は、弘法大師空海が幼い頃によく遊んでいた場所と伝説があります。昔は自然豊かな地域だったそうで、幼少期の空海は土や草木を使って仏像や小さなお堂を造って過ごしていたとのこと。その後、真言宗を開祖し、高僧となった空海が満濃池を修築した際に朝廷から賜った報償金の一部で甲山寺を建てたと伝わっています。
江戸時代中期の享保元年(1716年)に建立された本堂には、空海が自作した肥松一本造りの薬師如来が祀られています。また、本尊の左右には、日光菩薩と月光菩薩が祀られています。
本堂の隣には大師堂があり、黒衣をまとった弘法大師がまつられています。黒衣は修業中の僧が身に付けるもので、他のお寺にはない珍しい弘法大師像だそうです。
また、大師堂のさらに隣には毘沙門天の岩窟があります。奥行12mもある岩窟には、毘沙門天、妻の吉祥天、息子の禅膩師童子(ぜんにしどうじ)が安置されています。福寿円満や家庭円満のご利益があるそうです。
境内にはその他にも、あらゆる女性の病気を癒やし、女性を守ってくれると言われている淡島大明神や、親子地蔵像、子安地蔵なども祀られています。
月から飛び出したうさぎの言い伝えがある「うさぎ寺」
甲山寺は別名「うさぎ寺」としても話題になっています。
うさぎ寺と呼ばれるようになったのには、本尊の左側に祀られている月光菩薩と関係があります。月光菩薩が持つ月輪にうさぎが描かれており、そのうさぎが飛び出してきたという言い伝えがあり、それにちなんで、境内のいろいろなところにうさぎが置かれるようになったからだそうです。
境内の建物には江戸時代に作られたうさぎ瓦が使われており、その数は全部で14羽。どこにうさぎがいるのか、ぜひ探してみてください。今にもこちらに飛び込んできそうな躍動的な姿や、背伸びをしてこちらを見つめている姿など、様々な姿を見ることができます。
また、うさぎ瓦とは別に、大門をくぐった正面に2羽の親子うさぎの姿があります。甲山寺の顔として参拝者を出迎えてくれる2羽は、なで仏として愛されています。
うさぎ寺ならではのお守りや授与品
最近は、甲山寺でしか購入できない、うさぎをモチーフとしたお守りやおみくじがお遍路女子の心を魅了しています。白とピンクの可愛らしい「うさぎみくじ」は、持ち帰っても奉納してもどちらでも構わないそうで、持ち帰らない場合は、2羽の親子うさぎの周りに奉納されている人が多いそうです。
うさぎに関係するもの以外でも、カラーバリエーションが豊富なミニサイズの「おふく」、願いごとを書いて袋におさめる「そわか守」なども人気を集めています。特に「そわか守り」は予約をしないと購入できないことがあるそうなので、甲山寺のホームページやインスタグラムなどをチェックしてみてください。
季節の花に彩られる境内
甲山寺は、季節ごとのイベントにも力を入れらています。季節の花が美しく飾られた花手水や、夏の七夕など、境内が色鮮やかに彩られ、訪れるたびに違った姿をみせてくれます。
また、最も境内が彩に溢れる「花まつり」は、4月8日のお釈迦様の誕生日に合わせて行われます。その様子は、春の陽の光を受け、輝きを増した花々がお釈迦様の誕生日を祝っているかのようです。
また、甲山寺がある善通寺市内には、72番札所曼荼羅寺、73番札所出釈迦寺、75番札所善通寺、76番札所金倉寺と四国八十八ヶ所霊場の札所が集中していて、この5寺と、三豊市の71番札所弥谷寺、多度津町の77番札所道隆寺と合わせた七ヶ所まいりが、1日で巡ることができるお遍路として江戸時代から行われて歴史があります。
この7寺は連携して「花めぐり」のイベントを行ったり、季節ごとの特別な御朱印を企画するなどしているそうです。
境内の至る所で顔を出す愛らしいうさぎの姿、木々を揺らす爽やかな風、色とりどりの花たち。お寺の厳粛な空気と、優しい温もりが共存する甲山寺は、参拝すると心を解いてくれる気がします。2023年の干支はうさぎですので、この機会にうさぎと縁の深い甲山寺へ参拝されることをおすすめします。
【74番札所】 | 医王山 多宝院 甲山寺(いおうざん たほういん こうやまじ) |
宗派: | 真言宗善通寺派 |
本尊: | 薬師如来 |
真言: | おん ころころ せんだり まとうぎ そわか |
開基: | 弘法大師 |
住所: | 香川県善通寺市弘田町1765-1 |
電話: | 0877-63-0074 |