JR阿波海南駅近くにある、ひとりの女性のお遍路さんへの想いが形になったヘンロ小屋「香峰」設立の経緯。宿泊も可能な充実した小屋内の設備がありがたい。その想いや活動が今なお続き発展する"ヘンロ小屋"プロジェクトについて。
ヘンロ小屋の経緯
その昔、お遍路さんの休憩のために”ヘンロ小屋”が設置されたそうだ。その休憩小屋は、平成13年12月に第一号がJR牟岐線阿波海南駅のすぐそばに存在し、地元の野村カオリさんの所有地。野村さんご自身も亡くなったご主人供養のために40歳の時から四国八十八ヵ所霊場を巡っており、徒歩参拝する時にはトイレと腰を降ろす場所が必要だと感じたことが設置のきっかけになったとのこと。無料で宿泊もできるヘンロ小屋を利用しながら歩みを進めているお遍路さんもいる。
ヘンロ小屋の設備
設備は、洗面台・水洗トイレ・ベンチ・囲炉裏や、横になり夜を越すこともできる仕様になっている。全ての水回りはとても清潔に保たれ、設置していただいた配慮と有難みを感じさせられる。情報交換の出会いの場としても貴重な役割を果たしているだけではなく、寝袋等持参のお遍路さんにとっては臨時の宿泊場所にもなり得る。何より、お遍路さんのための場所というメッセージは、心置きなく腰を降ろして休める心のゆとりを得るための癒し効果も大きい。
そして、このヘンロ小屋1号「香峰」の横には、お弁当屋のほっかほか亭が存在感を放っている。休憩(宿泊)場所と食事場所の同時提供の恩恵を受けられる。もしかしたらお遍路さんを意識しただろう、ほっかほか亭の素晴らしい企業戦略に感心せざるを得えない。雨が降って突然足止めを余儀なくされたお遍路さんや、突然エネルギー切れになったお遍路さんにとってのオアシスのような場所。これまでの歴史で様々な境遇のお遍路さんがこの場所で疲れを癒していたのだろうと想像力が働く。そして、自分もこの場所で腰を降ろすことで、より一層お遍路文化の仲間入りを果たしたのだとしみじみ感じることもできた。
”ヘンロ小屋”プロジェクト
このヘンロ小屋設置の想いは現在、四国八十八ヵ所ヘンロ小屋プロジェクトにつながり、四国全域に53ヵ所(2020年10月現在)のヘンロ小屋が設置されている。四国遍路という旅路を通して、民宿で夜を越す人もいれば、ヘンロ小屋で夜を越しながら満願を果たす人もいるとのこと。
とにかく多様な受け皿のある四国遍路。動機も、移動方法も、円を描く向きも、期間も、そして宿泊の様式も含めて、八十八ヶ所巡りの選択肢は多様性に満ち溢れていることをヘンロ小屋の存在からより一層深く実感させられるものとなった。
【「ヘンロ小屋 第1号 香峰」 地図】