75番札所善通寺は言わずと知れた弘法大師空海生誕地の大寺院。前日に善通寺近くのホテルに宿泊し、朝から周辺エリアを散歩して、魅力的なスポットをいくつも見つけましたので、順を追ってご紹介していきます。
製麺所の朝うどんから散歩をスタート
うどん県として知られている香川県。地元の人に朝から営業しているおすすめのさぬきうどん屋さんが75番札所善通寺の近くにあると教えていただき、朝散歩のスタートで訪れました。
香川県外在住の私からしたら、朝からうどんを食べることにびっくりしましたが、うどん県では特別なことではなく、日常のよくあることで、このことが観光客にも認知され、1日で何軒ものうどん屋を巡る人には朝うどんは定番コースになっているそうです。
私が訪れたのは「宮川製麺所」で、75番札所善通寺から74番札所甲山寺の方向に徒歩約10分の場所にあり、お遍路道中に立ち寄るのにも便利な立地です。
さっそく店内に入ると、食欲をそそられるうどん出汁のよい香りが漂っていました。
このお店は製麺所にその場で食べられるイートインスペースが備え付けられたタイプのお店で、製麺スペースでどんどんゆでられている麺を丼に入れてもらって、そのあとはすべて自分でうどんを作っていく、セルフサービス形式でした。
地元の人は列に並んで手際良く作られていて、私はしばらく様子を見ていましたが、香川県外在住の初心者にとっては、なかなかハードルが高く困っていると、お店の人がご親切にルールや作り方を教えてくださいました。
作り方がわかると、うどんにのせるトッピングもたくさん並んでいて、まるで体験型のスポットに遊びに来たようでとても楽しく、味変の仕方まで教えていただきました。
あたたかいうちにずずっとすすると絶品!これまで食べてきたうどんは一体何だったのだろうか?と衝撃を受けるほどでした。朝からうどんを食べれるかな?と思っていましたが、あっさりしたイリコ出汁のお味でペロッと完食いたしました。ご馳走さまでした。
製麺所での朝うどんは、うどん県らしい文化を味わうことができて、アトラクション要素もあって、とてもおすすめです。
75番札所善通寺と74番札所甲山寺の間のエリアには、評判のパン屋さんも点在していますので、善通寺周辺に宿泊した際には、ホテルで朝食ではなく、街に出てお散歩しながらモーニングもおすすめです。
※宮川製麺所のすぐ近くにある老舗パン店「三村のパン」が、以下URLのごんのすけさんの記事で紹介されていますので、ぜひこちらもご覧ください。
【三村のパン】昭和28年創業老舗パン屋の善通寺名物「レトロあんぱん」
【「宮川製麺所」 地図】
75番札所善通寺は弘法大師空海生誕の地
朝うどんでしっかり腹ごしらえをした後、75番札所善通寺を訪れました。善通寺は弘法大師空海生誕の地で、周辺エリアには空海幼少期の伝説がいろいろ残っています。
生涯を密教修行に捧げた空海は、幼い頃から神童として注目されていました。子供の頃は「真魚(まお)」と呼ばれていた空海は、仏像を泥粘土で作って遊ぶような子どもだったそうです。74番札所甲山寺の近くで遊んでいた真魚の姿を見た都の使者が、馬からおりて真魚に向かって合掌礼拝をされたというエピソードがあります。真魚の周囲には、天蓋を掲げた四天王が守護している姿が見えたそうです。
また、仏の道に進むことを決意した出来事として、真魚が崖(現在の我拝師山・捨身ヶ嶽禅定、73番札所出釈迦寺奥の院)から身を投げたところ、釈迦如来が救ってくださったという伝説も残っています。
75番札所善通寺は、真言宗善通寺派の総本山で、高野山金剛峯寺、京都東寺と並び、弘法大師空海の三大霊場とされています。JR善通寺駅からは、徒歩約20分でアクセスでき、境内の西側に大駐車場もあるので、お遍路さんのみならず、観光目的の参拝者も多く訪れます。
2023年は弘法大師空海生誕1250年の記念の年にあたり、秘仏「瞬目大師(ひめきだいし)」の御開帳など特別な企画が多数催されています。
境内は、東院(伽藍)、西院(誕生院)にわかれていて、敷地は約45,000㎡の広さを誇ります。この境内は、国史跡「讃岐遍路道」にも指定されています。
東院には、国重要文化財に指定されている善通寺の街のシンボル「五重塔」がたっていて、その高さは43mもあります。日本国内の木造塔では3番目の高さで、普段は内部に入ることはできませんが、毎年ゴールデンウィークの期間だけ1・2階の内部が特別に公開されます。
2023年は弘法大師空海生誕1250年記念イベントの一環で、例年よりも特別公開の日数が多いので、ご興味がある人は公開日を調べてぜひ訪れてみてください。
また、善通寺を訪れたら「戒壇めぐり」もぜひ体験してみてください。
西院の御影堂(みえどう)の地下に入り、暗闇の中を曼陀羅が描かれた壁をつたって歩き、自分を見つめ直す精神修養の場として、また、弘法大師空海にお近づきになれる貴重な体験です。
歩くときに「南無大師遍照金剛」と唱えると、罪障が消えるともいわれています。
善通寺は、敷地が広く、見どころも満載のため、時間に余裕をもって訪れる、じっくりと境内を散策してみてください。私が訪れたように朝早い時間なら、参拝者の数が比較的少なく、静かな空間で心落ち着く時間を過ごせるかもしれません。
善通寺には西院敷地内にお遍路さんや一般観光客も宿泊できる宿坊があるので、お寺に泊まって、早朝の勤行にも参加し、朝の善通寺ならではの雰囲気を楽しむのも良いと思います。
【「75番札所善通寺 五重塔」 地図】
善通寺からすぐの老舗「熊岡菓子店」の名物「かたパン」
善通寺の東院と西院の間の道を少し北に進んだところすぐに、明治29年創業の老舗「熊岡菓子店」があり、善通寺を訪れた多くの人がお土産として購入する名物「かたパン」が売られています。
地元の人から聞いていたおすすめのお店のひとつで、善通寺の参拝後に訪れてみました。
名物のかたパンは、元々は軍用食糧として考案されたビスケット状の甘いお菓子で、実際に食べてみると、その名の通り驚くほどかたいです。口の中にしばらく入れておいてふやかして食べると、砂糖の甘さや生姜の風味を感じられ、おいしくいただけました。
日持ちするのもお土産としておすすめできるポイントです。
【「熊岡菓子店」 地図】
重要文化財「旧善通寺偕行社」隣接の「偕行社かふぇ」でスイーツ休憩
善通寺から少し足をのばして、JR善通寺駅近くの国の重要文化財に指定されている「旧善通寺偕行社」にも行ってみました。
陸軍将校の親睦・学術研究を目的として明治36年に建てられたもので、偕行社は当時は全国各地の陸軍施設に併設で存在しましたが、建物が現存しているのは数少なく貴重な史跡です。内部の見学もできるようになっています。
この旧善通寺偕行社に隣接でモーニング、ランチ、カフェなど幅広く利用できるカフェとして人気なのが「偕行社かふぇ」です。
私がこの日注文したのは「おいり」がトッピングされたかわいいスイーツです。アイスクリームの中に熱々のさつまいもが入っていて、温度や食感の変化が楽しかったです。
おいりというのは初耳という人も多いかと思いますが、香川県の郷土菓子で、ふわふわとした食感でカラフルで甘いあられのようなものです。
元々は婚礼の引出物などで使われる縁起物なのですが、最近は色鮮やかで写真映えすることから、アイスクリームやソフトクリームのトッピングなどで利用されるようになってきているようです。
偕行社カフェは、レトロな雰囲気の中で、ゆったり過ごせるカフェですので、お遍路道中や観光途中の休憩にぜひ立ち寄ってみてください。
【「偕行社かふぇ」 地図】
ここまで75番札所善通寺周辺を朝に散歩した様子をご紹介してきました。大寺院である善通寺を訪れる参拝者は多いですが、朝のお寺は比較的静かで落ち着いた雰囲気を楽しむことができます。周辺には地域で長く愛される特徴あるお店があるので、お遍路道中でも先を急がず、ゆったりした善通寺の朝時間を楽しんでみてください。