【松山城】全国屈指の複雑な造りと現存12天守のひとつである希少な連立式天守

愛媛県松山市の「松山城」は、現存12天守のうちのひとつで、歴史的価値が高い遺構がたくさん残る連立式天守が特徴です。攻め手の気持ちになって、天守にたどり着くまでの迷路のような縄張り設計や仕掛けを攻略してみてください。

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全国屈指の複雑な造りの大城郭「松山城」

愛媛県松山市の「松山城(まつやまじょう)」は、松山市の中心市街地の丘陵地に建つ平山城で、複雑に入り組んだ通路や建物に迷うのが楽しい、巨大迷路のような城です。全国でも数ヶ所しか現存しない、足軽目線で城攻めを楽しめる城のひとつです。
城内のあちこちにトラップが隠され、息つく暇がありません。 惑わされる縄張り設計、目くらましのような仕掛け、巧妙な工夫、ダイナミックな装置。裏の裏のさらに裏をつくような、心理作戦も織り交ぜた世界が広がります。敵兵の足軽になったつもりで歩くと、ゲーム感覚で城攻め体験ができます。

たとえば、大手門(おおてもん)跡前の通路もそのひとつです。正面には太鼓櫓(たいこやぐら)、その左奥には中の門があり、正面に天守が見えます。いよいよ天守が近づき気持ちが高ぶりますが、天守への近道と思える中の門方面は、おとりの道です。直進すれば、出口がない袋のねずみとなってしまいます。
右手の太鼓櫓下をU字に折り返す坂道が正規ルートですが、ここを進んだとしても中の門が背後になるため、いずれにしても挟撃されてしまうのです。かろうじて太鼓櫓下を突破し坂道を上りきっても気は抜けず、むしろここからが攻防戦の本番です。
通り抜けやすい戸無門(となしもん)をくぐると道幅が急に広がり、左に城内最大の筒井門(つついもん)が待ち受けます。誰もが「これが本丸への最後の関門か」と城門へ突入したくなるはずですが、ここに城内最大のトラップが隠されています。実は筒井門の奥には隠門(かくれもん)という奇襲用の門が潜んでいるのです。

次々と登場するトラップにびっくりしているうちに、本丸に着きます。本丸北側の一段高くなったところが、城の中心部となっている本壇です。天守を中心に多種多様な櫓や城門が華やかに取り囲み、それらが高い石垣でぐるりと囲まれています。

松山城は、天守を含め合計21棟もの建造物が現存する重要文化財の宝庫です。
本壇内にも櫓や門が残り、復元された建物と合わせてかつての姿が再現されているのがうれしいところです。複雑に配置された櫓門が天守を取り巻き、密集して複雑な空間をつくり出しています。本壇内は、90度右折して一ノ門から入り、90度左折して二ノ門をくぐり、 180度方向転換することでようやく三ノ門に到達する、迷路のようなつくりです。似たような門や櫓に囲まれ、同じところをぐるぐるさまよい歩く観光客が多発しているエリアです。

※城郭建築の構造や用語に関しては、以下リンクの記事で詳しくご紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。

【城郭建築の基礎知識④】城郭の普請と建造物の施工(用語解説)

松山城_複雑な構造

櫓や門が複雑に組み合わさっている様子がよくわかります。

 

現存12天守のひとつである連立式天守

全国の現存する12天守のうちのひとつである松山城の天守は、3重3階地下1階の層塔型(そうとうがた)で、大天守・小天守・櫓が多聞櫓(たもんやぐら)でつながれた連立式です。連立式とは、天守と2基以上の小天守や隅櫓(すみやぐら)を廊下のような渡り櫓で結ぶことで箱型に取り囲んだ形で、現存天守では兵庫県・姫路城と松山城だけです。

慶長7年(1602年)に築城を開始したのは加藤嘉明(よしあき)ですが、 現在の天守が建てられたのは幕末のことです。 嘉明が建てた5重の天守を、松山藩の初代藩主・松平定行(まつだいらさだゆき)が3重に改築しています。その天守も天明4年(1784年)に落雷で焼失したため、嘉永5年(1852年)に再建されました。定行は徳川家康の甥にあたるため、天守の建造を許されたのでしょう。現存する天守で唯一、瓦に徳川家の葵紋が付けられています。

松山城_連立式天守

希少な連立式天守が現存しています。

 

石垣の曲線美と情緒がある城下町

松山城は石垣が美しいことでも知られています。揚木戸門(あげきどもん)跡北東側の約17mもある高石垣も見事ですが、芸術的なカーブを描く乾門(いぬいもん)東続櫓東折曲塀の石垣も素晴らしいものです。
全国でも現存例が少ない貴重な登り石垣も見ものです。南北2本の登り石垣があり、南側はほぼ完存しています。大手門から二之丸史跡庭園の南東櫓にかけて本丸と二の丸を結ぶ山の斜面に、全長約233mに渡り残っています。

松山城_高石垣

地形に沿って積まれた、高石垣の曲線美に目を奪われます。

 

夏目漱石も愛した、路面電車が走る城下町も大きな魅力です。市街地化されているものの、時の流れがゆったりと感じられ、独特の情緒があります。司馬遼太郎さんの歴史小説「坂の上の雲」の主人公の秋山好古・真之兄弟、その幼馴染の文豪・正岡子規の故郷でもあり、ゆかりのスポットめぐりも楽しめます。

 

松山城は、現存する城の中でも屈指の複雑な造りと、希少な史跡である連立式天守が特徴の大城郭です。松山市中心市街地にあり、アクセスがよく、お遍路や観光でも松山市街地に滞在することが多いと思いますので、ぜひ松山城に立ち寄って、かつての城攻めの気分を堪能してみてください。

 

【「松山城跡」 地図】

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この記事を書いた人

建築・不動産・旅のテーマが得意なライター。社寺系ゼネコンに勤務経験があり、四国八十八ヶ所霊場の札所建築物の改修工事に携わったことがあります。仏教に興味があり、2022年には四国のお遍路巡礼もしました。ライターとは別名義で作家として小説も書いています。