84番札所屋島寺は「屋島」の山上の標高280m地点にあり、急坂を登ってお寺を目指します。この坂道では、お大師さまにまつわる「御加持水」「喰わずの梨」の伝説が残る場所が休憩スポットになっています。
高松のシンボルである台形の山「屋島」
83番札所一宮寺を出発し、御坊川(ごぼがわ)沿いの遍路道を北上し、国道11号を東に進んで、次の84番札所屋島寺がある「屋島」の近くまで進んできました。
※御坊川沿いの遍路道の様子は、以下リンクの記事もぜひご覧ください。
【83番札所一宮寺→84番札所屋島寺】御坊川沿いの遍路道には2013年11月スタートの遍路休憩所・善根宿
なぜこのような台形かというと、太古の昔、火山活動の溶岩などが湖を埋めた後に土地が隆起してできた山が、その後長期に渡って浸食されていったものの、硬質の讃岐岩質安山岩(サヌキトイド)の層が蓋をするような形でかぶさっていたため、頂上が平坦になって残ったようです。
「屋島」の名前は、屋根のような形の「屋」と、元々は独立した「島」であったことからつけれらたとのこと。
江戸時代に塩田が開発され、その後の埋め立てによって、現在はほぼ陸続きのようになっていますが、「相引川」という小さな川で一応は陸地と隔てられていて「島」の名残があります。
このような特殊な形の山が高松市街からきれいに見えるため、高松のシンボルともいわれている名所でもあります。
登り勾配21%の急坂を登る
84番札所「屋島寺」は、標高約290mの「屋島」の山頂付近にあり、急坂を登っていく必要があります。
ふもとの登山道入り口付近の道にはこんな恐ろしい看板がありました。
「上り急勾配21%」というのがどれほど急なのかはよくわかりませんでしたが、わざわざ表示するぐらいなので、よっぽと急勾配なのであろうとビビりながら、進んでいきましたが、たしかに厳しい急坂が続いていました。
ここ「屋島寺への登山道」は、遍路道の登りの難所「遍路ころがし」には入っていませんが、坂の角度だけをいったら、数ある登り坂遍路道の中でもかなりの上位に入る急坂だと思います。
ただ、舗装されていて歩きやすいのと、距離が約2km程度で短いので、遍路ころがしには入っていないのであろうと想像します。
お大師さまにまつわる「御加持水」「喰わずの梨」が休憩スポット
この急坂遍路道の途中に休憩スポットがありますが、そこはお大師さまにまつわる伝説がのこっている場所です。
まずひとつめが「御加持水(おかじすい)」で、空海が屋島に登っている際に中腹まできてひと休みしたところ、周囲には水を飲もうにも水場がなく,他の登山者も不自由していたことから、空海が加持祈祷をすると岩の間から清水が湧き出したと伝えられている場所です。
そしてふたつめが「喰わずの梨」です。
空海が登山中に、たわわに実った梨の木を見つけ、それをもいでいたおばあさんにひとつもらえないかとお願いしたところ「この梨は水気がなくて食えたものじゃない」と嘘をつき、梨を恵むのを惜しんだそうです。
この梨を売りに出したところ、固くて食べられない実になっており、以降この木に実る梨はすべて固くて食べられなくなってしまったという言い伝えが残っています。
ここまでの遍路旅を歩いてこられたお遍路さんなら、そう何回も休憩しなくても登りきることができる道のりだとは思いますが、お大師さまにまつわる伝説に触れながら、急坂を楽しむのがよいと思います。
84番札所屋島寺への登山道は、急勾配の坂道に苦労しますが、お大師さま伝説の地があったり、たくさんのお地蔵さんが並んでいたりと、楽しみながら登ることができる遍路道です。
地元の人の散歩コースにもなっていて、多くの人と出会う道でもありますので、適度に休憩もとりながら、ゆっくり歩まれてみてください。