22番札所平等寺では、リモート参拝も可能にするために、本堂の24時間ライブ配信を2020年より実施しています。未来のお寺を示唆するような革新的な試みを続けておられる平等寺は、開放的な雰囲気のほがらかなお寺でした。
癒しの水が湧き出る22番札所平等寺
20番札所鶴林寺や21番札所太龍寺といった山深い札所を打ったあとにたどり着くのが、徳島県阿南市新野町の里中にある22番札所平等寺です。平等寺の正式名は「白水山 医王院 平等寺」で本尊は薬師如来。病気平癒のご利益があるというお寺の創建には下記のような由緒があります。
弘仁5年(814年)、弘法大師がこの地を訪れ禅定に入られたころ、心に薬師如来さまの姿が浮かびました。 お大師さまはそのお薬師さまを想いながら次のような御誓願を立てられます。
「あらゆる人々の心と身体の病を平等に癒し去る」
大師はこの地での修行を志し加持水を求めて井戸を掘られたところ、乳のごとき白い水が湧き溢れました。その霊水で御を清められた大師は百日間護摩行を続けた後に先のお薬師さまの姿を木に刻まれ本尊として奉安し、山号を白き水が湧いたことから白水山(はくすいざん)、寺号を平等寺と定められました。(四国八十八ヶ所霊場会ホームページより)
ここに書かれた薬師如来由来の「弘法の霊水」は、現代も境内に湧き出ています。
24時間の本堂ライブ参拝で知られるように
2020年からのコロナ禍をきっかけとして、遠方からリモートでも参拝できるように本堂の24時間ライブ配信を始めた平等寺さん。朝夕の勤行や護摩行の様子もリアルタイム配信され、家にいながら間近にその様子を見ることができます。他にも住職による質疑応答の配信など、さまざまな新しい試みが行われていて、お寺の可能性を広げ続けておらます。
平等寺のホームページにも情報が満載です。
平等寺ホームページ: https://byodoji.jp
柔らかな光に包まれた本尊
革新的な試みを続けられている平等寺を実際に訪れてみると、とても爽やかで開かれた印象を受けました。春に訪れたせいかもしれませんが、参拝する人もにこやかで、相互に挨拶している様子が清々しく感じました。
本堂ではリモート参拝の画像と同じように、とても柔らかな光に包まれた本尊の薬師如来さまが拝観できます。柱の彫刻や天井画も、とても優雅。先に配信画像で拝見していたので「よく知っている仏様」という感想を持ちつつ、同時に畏敬の念も抱く不思議な感覚になりました。
普段は、本尊そのものをカメラに収めるのは不敬な気がして積極的には写さないのですが、平等寺の住職はそのあたりをオープンに捉えておられるとのことで、遠慮なく撮影させていただきました。本堂の内部は、本尊のご威徳と光の演出があいまって、とても荘厳な空間になっていました。
本堂の手前部分に平等寺の病気平癒の威徳を伝える「箱車」が置かれています。これは、大正年間に足の不自由な息子と四国遍路をまわるために父親が製作した箱車で、平等寺の加持祈祷で足が回復した御利益を後世に伝えるために奉納されたものなのだそうです。詳しくは野瀬照山先達が書かれた下記リンクの記事で紹介されていますので、ぜひこちらもご覧になってください。
【22番札所平等寺・箱車】四国遍路で足が治った話を伝えるもの
弘法の霊水が今も境内に沸いている
山号の由来にもなった「白水」が湧き出た井戸は本堂の階段下にあります。現在は、白水ではなく透明の水が湧き出ており、万病に効くといわれる「弘法の霊水」として知られているそうです。飲用も可能で、設置されている柄杓で水を汲むことができます。
弘法の霊水の手前には、江戸末期に再建された大師堂があります。こちらはライブ配信されないので、実際に足を運んでいただく必要がありますね。
撮影はしていませんが、納経所上部のスクリーンにライブ配信の映像が流れていました。
お寺のユニークな試みに今後も期待
現在は休止していますが、平等寺は2017年にお寺の庫裡を「坊主の宿」として民泊開業し、なおかつ災害時には避難施設ともなる「シームレス民泊」の徳島県第1号になるなど、新しい試みを続けています。住職の柔軟な姿勢がお寺の運営に表れていて、今後の活動が楽しみです。
本堂の24時間リモート参拝をはじめとして、さまざまな活動をされている平等寺。現代社会における「お寺の在り方」や信仰スタイルの可能性を追求する様子に、未来のお寺のインスピレーションを受ける人も多いことでしょう。
【22番札所】 | 白水山 医王院 平等寺(はくすいざん いおういん びょうどうじ) |
宗派: | 高野山真言宗 |
本尊: | 薬師如来 |
真言: | おん ころころ せんだり まとうぎ そわか |
開基: | 弘法大師 |
住所: | 徳島県阿南市新野町秋山177 |
電話: | 0884-36-3522 |