【しまなみ海道】多島美・橋梁美が特異な世界的にも有名なサイクリングの聖地

広島県尾道市と愛媛県今治市を、瀬戸内海に浮かぶ8の島を橋でつなぐ「しまなみ海道」は、多島美・橋梁美が特異で、世界的にも有名なサイクリングの聖地になっています。それぞれの島に豊かな自然や独自の文化・産業が根付いています。

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多島美と橋梁美のサイクリングの聖地「しまなみ海道」

「しまなみ海道(しまなみかいどう)」は、昭和44年(1969年)に策定された新全国総合開発計画において、本州と四国をつなぐ3つのルートのうちのひとつの広島県尾道市ー愛媛県今治市ルートで(他に、兵庫県明石市ー徳島県鳴門市、岡山県倉敷市ー香川県坂出市)、 平成に入って平成11年(1999年)に完成しました。全長約60kmで、8の島と10の橋で広島県と愛媛県を結んでいます。

愛媛県側の今治市に接続している「来島海峡大橋(くるしまかいきょうおおはし)」は、愛媛県今治市街地と来島海峡を挟んで向かいの「大島(おおしま)」を結ぶ橋です。大きなつり橋の主塔頂上に登ることができるツアーが実施されていて、眼下に広がる島々や、海峡を行き交う船、しまなみ海道を渡るミニチュアな車などの大パノラマの景色を楽しむことができます。
来島海峡大橋のみならず、瀬戸内海にかかる10橋の橋梁美が有名で、橋の形がそれぞれ異なるため「橋の美術館」とも呼ばれ、橋と島に整備された自転車道は世界的にも特異な景観であり、世界中からサイクリング愛好家が訪れています。

また、橋がかかる島々が独特の個性をもっていることも特徴です。
映画の「向島(むかいしま)」、村上水軍・園芸・造船の「因島(いんのしま)」、平山郁夫美術館・耕三寺・ 野外オブジェ・レモンの「生口島(いくちじま)」などがあります。
「伯方島(はかたじま)」には、イルカに乗って泳ぐことができるなど、イルカと直接触れ合って体験できる国内最大級のイルカ施設「ドルフィンファームしまなみ」があり、大規模な製塩施設があることでも知られています。
瀬戸内海の島々には世界的な建築家の作品があることでも注目されていて、香川県の「直島(なおしま)」の安藤忠雄(あんどうただお)による建築物、「豊島(てしま)」の西沢立衛(にしざわりゅうえ)の建築物などが有名ですが、しまなみ海道でも「大三島(おおみしま)」の伊東豊雄(いとうとよお)の建築ミュージアム、「大島」には隈研吾(くまけんご)の来島海峡展望台があるなど、希少な建築物を目当てに島を訪れる人も多いです。

しまなみ海道_大三島_道の駅多々羅しまなみ公園_しあわせの鐘

しあわせの鐘が設置されている大三島の道の駅多々羅しまなみ公園は、しまなみ海道を渡る人達の拠点的施設になっています。

 

天然記念物「念願成就の大楠」がある「大山祇神社」

しまなみ海道は、瀬戸内海国立公園に指定されているエリアを含む自然環境豊かな地域で、国の名勝や天然記念物に指定されている場所・物もあります。
名勝とは、国指定の文化財の種類のひとつで、平たく言えば景色のよい場所のことです。芸術上、または観賞上価値が高い土地について、日本の文化庁および地方公共団体が指定を行います。名勝には、山岳・峡谷・海浜など自然そのままの景色と、庭園・公園など人が作り上げた景色があります。※名勝については、以下リンクの阿波国分寺の庭園の記事でも詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

【阿波国分寺庭園】15番札所国分寺の「阿波の青石」を駆使した国指定名勝庭園

自然そのままの景色には、貴重な岩石鉱物や珍しい植物が生えている場合も多く、「天然記念物」とあわせて指定されているものもあります。天然記念物とは、学術上価値の高い動植物・地質鉱物、およびそれらの存在する場所で、珍しい断層や化石、放置しておくと滅んでしまいそうな獣や鳥、昆虫、樹木や草花などで保護する値打ちがあるとして法律で指定した自然物などです。学術上の価値が高く特に重要なものとして、2023年11月現在で、75の特別天然記念物と、重要なものとして892の天然記念物が指定されています。

しまなみ海道エリアの天然記念物のひとつとして、大三島にある「大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)」の念願成就の大楠があり、樹齢3000年ともいわれる日本最古とされるの楠です。
大山祇神社は、広島県の厳島神社(いつくしまじんじゃ)と同じく、6世紀末の推古天皇の時代の創建と伝わり、厳島神社が弥山(みせん)を抱く厳島全体を聖地とするように、鷲ヶ頭山(わしがとうざん)をご神体とし、大三島全体を聖地としていたといいます。五穀豊穣・海上安全・家内安全・商業繁盛・病気平癒などのご利益があるとされています。古くは戦いの神として尊崇を集め、中世以降の水軍や武将が武運を祈って武具を奉納してきたことから、甲冑・刀剣などが多く残り、特に日本の国宝・重要文化財に指定されている甲冑の大半が大山祇神社にあります。
めずらしい神事として、春の御田植祭(おたうえまつり)と秋の抜穂祭(ぬきほまつり)で一人角力(ひとりすもう)と呼ばれる相撲神事が行われています。 人が目に見えない神様と相撲をとり、負けることによって、豊作を祈り、収穫に感謝するというものです。

今治市街地の別宮町には、大山祇神社の別宮があり、四国八十八ヶ所霊場55番札所南光坊に隣接しています。かつては大山祇神社が四国八十八ヶ所霊場の札所とされ、大三島まで渡れない場合は別宮と別当寺である南光坊に参拝するという習慣があり、現代の札所・巡礼ルートにもその名残があります。

しまなみ海道_大三島_大山祇神社_大楠

国の天然記念物に指定されている大山祇神社の大楠。

 

しまなみ海道は、瀬戸内海に浮かぶたくさんの島をつなぐ橋梁美の景観が唯一無二で、島には豊かな自然や独自の文化・産業などが存在します。四国八十八ヶ所霊場とも関連が深い大三島の大山祇神社もありますので、お遍路道中でぜひ寄り道して、瀬戸内海の多島美を楽しんでみてください。

 

【「しまなみ海道」 地図】

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この記事を書いた人

建築・不動産・旅のテーマが得意なライター。社寺系ゼネコンに勤務経験があり、四国八十八ヶ所霊場の札所建築物の改修工事に携わったことがあります。仏教に興味があり、2022年には四国のお遍路巡礼もしました。ライターとは別名義で作家として小説も書いています。