2004年に公開された映画「世界の中心で、愛を叫ぶ」のロケ地となった高松市庵治町。この地域は豊かな自然環境に、伝統的な文化や産業が根付いている魅力的な地域です。映画の聖地巡礼をしながらご紹介します。
世界に誇る高級石材「庵治石」
香川県高松市の北東部、剣が連なったように見える山頂が特徴的な「五剣山(ごけんざん)」の中腹に85番札所八栗寺があります。五剣山は高松市の平野部から瀬戸内海に突き出た半島状になっていて、このエリアを庵治(あじ)半島といいます。
庵治半島に入るとまず目につくのが、あちらこちらに積まれた石材の山。この地域は昔から石材業が盛んで、その歴史は平安時代にさかのぼると伝わっています。
庵治半島で採れる石は「庵治石(あじいし)」という名称でブランド化されています。石の表面に光沢感のある美しい「斑(ふ)」がまだら模様になっている花崗岩(かこうがん)で、その中でも特に結晶の粒子が小さく鉄分が極めて少ないので、風化に強く変色しづらく、見た目も非常に美しいことから「花崗岩のダイヤモンド」とも称される世界的に有名な高級石材なのです。
歴史的な建物では、高松城や大阪城の築城、愛媛県の道後温泉本館の浴室に使用されていたり、現代では首相官邸や六本木ヒルズの建築の際にも採用されています。
また、庵治石は多くの芸術作品の材料としても使用されています。特に彫刻家・イサムノグチは庵治石を愛したことで有名で、庵治石を使った多くの作品を遺しています。庵治半島にアトリエと住まいを構えるほどで、現在ではイサム・ノグチ庭園美術館として一般公開されています。
私は庵治半島を訪れるまで庵治石のことを知らなかったので、五剣山の石切場の風景や、たくさんの石材店が立ち並ぶ街並みがとても珍しく、新しい発見がありました。
映画の世界にタイムスリップできる庵治町
庵治半島の付け根の方の八栗寺がある地域は牟礼町(むれちょう)ですが、そこから車で10分ほど半島の先端の方に進んで行くと庵治町(あじちょう)に入ります。
町の入口でさっそく「映画ロケの町」と書かれた看板を見つけました。庵治町は2004年に公開された映画「世界の中心で、愛を叫ぶ」のロケ地になっていて、今回私は撮影スポットの聖地巡礼をしようと、この地を訪れたのです。
ここで車を停めて、少し周辺を散策してみました。
庵治半島は半島というだけあって、まわりを瀬戸内海に囲まれていて、半島の先端に位置する庵治町は昔から漁業が盛んです。港も複数あり、のどかな漁村の景色を眺めていると、映画を観てから長い年月が経っていたにもかかわらず、映画の主人公の朔太郎とヒロインの亜紀が会話をしている様子が目に浮かんできました。
地元の方からおすすめ観光スポットをうかがい、偶然訪れることになった庵治町でしたが、映画のことを思い出し、また観かえしたくなってきました。
映画のセットに大興奮の「純愛の聖地庵治・観光交流館」
庵治町に入ってから車で5分程度走ると、最初の目的地「純愛の聖地庵治・観光交流館」に到着しました。
この場所には、映画で登場する「雨平写真館」のロケセットが復元されています。映画をご覧になられた人は、映画のシーンを思い出しながら写真を撮影したくなることでしょう。
現在は、カフェ「寫眞館の珈琲」になっていて飲食店として営業しているので、建物の中に入って映画の世界にひたることが可能です。ロケセットも展示されているので、ぜひチェックしてみてください。
純愛の聖地ならではで、敷地内にはカップルや、恋愛成就を願う人が訪れたくなるスポットも発見しました。
純愛の聖地・庵治観光交流館は、映画の聖地巡礼はもちろん、映画のことを知らない人でも、レトロな雰囲気を感じたり、いろいろなお願いごとをしたり、カフェで休憩したりできる、庵治町の観光拠点なので、ぜひ立ち寄ってみてください。
【「純愛の聖地・庵治観光交流館」 地図】
「皇子神社のブランコ」で映画に出てきた景色を再現
次の目的地は「皇子(おうじ)神社」です。
さきほどご紹介した純愛の聖地・庵治観光交流館からは徒歩でも行ける距離で、庵治町の映画のロケ地聖地巡礼は、数ヶ所が近距離にあるため、とてもまわりやすいです。
皇子神社の境内までは、少し急な階段を上がっていきます。映画では、主人公のサクが、この階段を駆け下りていくシーンがあります。数段のぼったあたりで、後ろを振り返ってみました。
階段をのぼりきり境内につくと、映画に登場した、お目当てのブランコを発見です。ブランコに乗ったサクとアキが語り合っているシーンはとても有名です。
ここまで来たら、もちろんブランコに乗りましょう!
漁港を眺めることができるブランコに乗ったのは初めてでしたが、開放感があり気持ち良かったです。
静かで時間がゆったり過ぎているような感覚になります。この日は、早朝に訪れましたが、地元の人がお散歩をされていましたよ。
江戸時代から続く「庵治の船祭り」は、神輿・ダンジリ・獅子舞が船に乗って海を渡る独特のお祭りで、夏の風物詩になっています。
皇子神社がある「御殿山(ごてんやま)」は、庵治半島からさらに突き出た小高い丘のような地形で、山頂からは瀬戸内海をぐるりと見渡すことができる絶景で、江戸時代には高松藩のお殿様の別荘があったことが山の名前の由来だそうです。
今回は山頂までは行けませんでしたが、またの機会にぜひ訪れてみたいと思っています。
【「皇子神社」 地図】
やっぱり愛を叫びたくなる「王の下沖防波堤」
皇子神社から最終目的地の「王の下沖防波堤」へ向かいます。神社の階段を下りて、海岸沿いに歩いていくと、すぐに防波堤にたどり着きます。
映画では、夕日を眺めながらサクとアキが語り合う印象的なシーンが撮影された場所です。
私が訪れたのは早朝で、しかも気持ちの良い晴れ空のもとでしたので、映画の夕日のシーンとは雰囲気は違いましたが、海を間近に潮風にあたりながら歩くのはとても気持ち良かったです。
【「王の下沖防波堤」 地図】
今回、映画「世界の中心で、愛を叫ぶ」の聖地巡礼をして、帰路についたあと、再度映画を鑑賞しました。素敵な映画は、年月を重ねても風化しないことを実感しました。
85番札所八栗寺がある庵治半島にこのような素敵なスポットがあるので、お遍路途中にもぜひ立ち寄っていただきたいと思います。
※このあと、同じ庵治町内にある「竹居観音寺」を訪れた様子を以下リンクの記事でご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
【竹居観音寺】四国最北端の瀬戸内海の多島美と岩窟の神秘的なお寺