【知多四国霊場66番札所中之坊寺】伝説の巨大寺院群・金蓮寺と大野城ゆかりの寺院

知多四国霊場66番札所中之坊寺は、古代の巨大寺院群・金蓮寺の一つの坊がルーツの寺院です。すぐ近くにある史跡・大野城跡とも関連が深く、地域の伝統産業である常滑焼を含め、歴史探訪観光におすすめです。

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常滑焼が有名な常滑市金山地区にある66番札所中之坊寺

知多四国霊場で、常滑市北部と知多市南西部の比較的に近い場所にかたまっている札所群があります。
66番札所中之坊寺(なかのぼうじ)、67番札所三光院(さんこういん)、68番札所宝蔵寺(ほうぞうじ)、69番札所慈光寺(じこうじ)、70番札所地蔵寺(じぞうじ)、71番札所大智院(だいちいん)、72番札所慈雲寺(じうんじ)の7ヶ寺です。札所間の距離が近く、歩いても巡りやすいので、歩き遍路初心者さんがお試ししてみるのにもおすすめのエリアです。

この7つの札所は、かつてこのエリアにあった金蓮寺(こんれんじ)という巨大寺院群と、現在の常滑市の史跡になっている大野城(宮山城)と関係がありました。
※7つの札所の概要と、金蓮寺・大野城との関係に関して、以下リンクの記事でご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。

【知多四国霊場】金蓮寺と大野城に関連している常滑市・知多市の札所群

札所群のうち、常滑市の北部の金山地区にあるのが66番札所中之坊寺です。
常滑市は日本六古窯ともされる陶器・常滑焼の産地として知られています。特に金山地区にある常滑焼団地セラモールは、18店舗の陶器専門店が集まっており、様々な常滑焼の作品を展示販売しています。観光客も地元の人も多くの人が陶器を目当てに訪れるショッピングスポットです。
周辺は田園風景の広がり、米を作っている農家が多い、のどかな地域でもあります。10月後半にもなると一面に黄金色に輝く稲穂の絨毯が広がります。お遍路をしていると、自然の美しさや季節の変化を感じられるエリアです。

常滑市_田園風景

常滑市金山地区は田園風景の広がる癒しのエリアです。

 

巨大寺院群・金蓮寺の坊の一つであった中之坊寺

中之坊寺は、かつてこのエリアの広範囲に寺域を有した巨大寺院群・金蓮寺の残った坊の一つがルーツだと伝わっています。
金蓮寺は奈良時代初期に弘法大師空海が創建したなど開基の経緯は諸説ありますが、かつてこのエリアで隆盛を極め一山十二坊を有する巨大な寺院であったとされ、宮山寺とも呼ばれていたそうです。

中之坊寺は、金蓮寺の一つの坊として、戦国時代に秀雅法印という僧侶が開創したといわれています。当時は、金蓮寺の敷地内に大野城(宮山城とも呼ばれていた)が築かれ、地域の軍事拠点にもなっていました。その後、九鬼水軍によって大野城が落城した際に戦火に巻き込まれ、金蓮寺も焼失してしまいます
中之坊寺は、秀雅の弟子・政憲により天正19年(1591年)に復興を果たします。時代を経て、再び荒廃しましたが、大正11年(1922年)に現在寺院がある場所に旧金蓮寺の御本尊を移して再度復興しました。現代の周辺の地名に「山門」「屋敷」「油手」など、金蓮寺が巨大寺院であったことの名残があります。

現代に至るまでに寺名が何度か変わったという言い伝えがあります。見山寺から能見寺、中之坊さらに現在の中之坊寺と変遷しているそうです。大正9年(1920年)の知多四国霊場の納経帳には「中之坊」と表記されていますので、それ以降のある時期に「寺」の字が加わり、現在に至ります。
また、大正期の納経帳の地名は「石瀬村」を記載があります。現在中之坊寺がある地域は、かつては石瀬村で、明治11年(1878年)に石瀬村と宮山村が合併して金山村になり、現在の金山という地名につながります。
古い時代の納経帳は、その当時の寺院の歴史や地域の変遷を紐解く貴重な史料でもあります。

知多四国霊場66番札所中之坊寺_石柱

中之坊寺入口の石柱には、知多四国霊場が知多新四国八十八ヶ所と呼ばれていた時代の中之坊の名前が刻まれています。

 

無住寺院での注意事項と中之坊寺の納経印・御朱印

中之坊寺は、現在は無住の寺院で、86番札所観音寺(かんのんじ)が管理しています。
寺院に人がいない場合には、特に火の取り扱いに注意が必要です。お参りの際にロウソクや線香で火を使うので、他所に燃え移らないように注意することは当然ですが、お参りが終わったら火を消してから寺院から出る方が無難です。
トイレも中之坊寺のように備え付けられている場合はありますが、有人の寺院に比べて管理が行き届かない場合が多いので、他所を利用する方がよいでしょう。

知多四国霊場66番札所中之坊寺_本堂

中之坊寺の本堂には、正面に御本尊の聖観音菩薩、左に弘法大師が祀られています。

無住の中之坊寺での納経は、知多四国霊場専用納経帳には各自で押印し、御朱印は書き置きを拝受します。納経印代や御朱印代は指定の場所に置いていく方式です。
管理している観音寺の住職がいらっしゃるときは、手書きの御朱印をいただくことができることもあります。

知多四国霊場66番札所中之坊寺_納経所

納経所に小窓があるので、ここからご自身で納経印を押してください。

2023年は弘法大師生誕1250年の記念の年にあたり、知多四国霊場では御朱印に弘法大師御生誕記念宝印が期間限定(2023年1月1日~2024年6月30日)で追加で押されます。中之坊寺の記念宝印は、重要文化財に指定されている「絹本著色仏涅槃図」がデザインされていて、要チェックです。

知多四国霊場66番札所中之坊寺_手書き御朱印

中之坊寺を管理している観音寺の住職に書いていただいた貴重な御朱印と記念宝印。

 

常滑市の史跡・大野城跡と御城印

中之坊寺のすぐ近くには、寺の歴史にも深く関係していて、現在は常滑市の史跡にしていされている大野城跡があり、観光名所になっています。
昭和55年(1980年)に設けられた城型の展望台があります。ここからの眺望は素晴らしく、周辺の街並みや美しい伊勢湾が一望できます。晴れた日には、遠くの鈴鹿山脈まで見渡すことができる絶景スポットです。

大野城跡_城型展望台

大野城跡の城型展望台は、伊勢湾を一望できる絶景スポットです。

大野城跡では、城を訪れた記念の特別な御朱印である「御城印(ごじょういん)」をいただくことができます。名鉄常滑駅すぐの常滑市観光プラザにて300円で入手可能です。
全国各地で御城印をいただける城跡が増えており、お城愛好家や御城印を集めるコレクターに人気になっています。

大野城_御城印

大野城を居城とした佐治氏の名前も入った大野城の御城印。

ここで余談ですが、知多半島では4ヶ所で御城印をいただくことができます。常滑市の大野城跡以外に、知多市の大草城跡、大府市の緒川城跡、阿久比町の坂部城跡です。

知多半島_御城印

知多四国霊場の巡礼途中に史跡である城跡も巡って御城印を手に入れれば旅の記念や思い出になると思います。

 

知多四国霊場66番札所中之坊寺は、古代の巨大寺院群・金蓮寺ゆかりの寺院です。現在は無住ではありますが、のどかな地域にある美しい寺院ですので、その歴史的な経緯にも目を向けて、静かな雰囲気に心を落ち着かせてみてください。
近くにある大野城跡や常滑焼団地セラモールにも立ち寄れば、地域の歴史を幅広く知ることができ、ショッピングも楽しめるので、ゆっくり時間をとって観光を楽しむのもおすすめです。

 

【「知多四国霊場66番札所中之坊寺」 地図】

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この記事を書いた人

知多半島のお寺が好きで、知多四国霊場を中心にいろいろな霊場を巡礼し、観光やご当地グルメ(特にラーメン)も楽しんでいます。御朱印集めも趣味で、知多半島のお寺の御朱印はもちろん、全国各地の御朱印をもらいに巡り、アート御朱印などは取り寄せたりもしています。