【73番札所出釈迦寺】堂々と並ぶ豪華な本堂・大師堂と秘仏について

弘法大師空海は幼少の頃、仏門に入る決意をして73番札所出釈迦寺の裏の我拝師山から身を投げたと伝わります。2023年は弘法大師空海生誕1250年にあたり、記念として秘仏の特別開帳があり、関連する建物と合わせてご紹介します。

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秘仏「奥之院本尊釈迦如来像」「奥之院脇侍不動明王」「弘法大師像」特別御開帳

弘法大師空海が幼少の頃、仏門に入る決意をして、73番札所出釈迦寺の裏の我拝師山(がはいしさん)から身を投げたと伝わり、のちに釈迦如来像を作り御本尊とし、山上にに出釈迦寺を創建したとされています。
江戸時代初期にお寺は山上から山麓に移され、山上は現在は奥の院となっています。

2023年は弘法大師空海誕生1250年の節目の年にあたり、普段は目にすることができない秘仏である「奥之院本尊釈迦如来像」「奥之院脇侍不動明王」「弘法大師像」が特別に御開帳されます。
会期は、春期:2023年4月1日~5月31日、秋期:2023年10月1日~11月30日で、限られた期間ですので、お見逃しのないように。

 

誰も見たことがない本尊のお姿

「奥之院本尊釈迦如来像」は、山上の奥の院にまつられている本尊で、高さ約70cm、台座も含め全身が金箔された座像です。長年お厨子の中に安置されていたため、現在生きている人は誰も見たことがなく、住職も見るのは初めてという仏像の初めての公開です。「奥之院脇侍不動明王」とともに、特別御開帳期間中は山麓の出釈迦寺に移され、目にすることができます。

「弘法大師像」は、高さ約80cm、三鈷杵(さんこしょ)を持つ若い頃の弘法大師空海がモデルとみられている座像です。台座に残っていた墨書によると、江戸時代初期、山上から麓の現在地にお寺が移された際に像が寄進されたとのことで、普段は麓の出釈迦寺の大師堂に秘仏としてまつられています。

釈迦如来像はいつ作られたのかも不明で作られてからずっと秘仏だったといい、弘法大師像は作られてから約300年間誰も目にすることがなかったそうです。

一般的に、仏像の秘仏には「秘仏」と「絶対秘仏」のふたつのタイプがあります。秘仏は、ふだん厨子の中に安置され、何年に1度などの決まったサイクルで開帳されます。絶対秘仏は、いかなる理由があっても人の目に触れてはならない、まさに絶対に秘密の仏像というわけです。
その意味では今回の出釈迦寺の仏像は限りなく絶対秘仏に近い秘仏といえるでしょう。
通常は目にできない秘仏に似せて作られた「御前立ち(おまえだち)」という仏さまが、見える位置に立たれ、参拝者が拝めるようになっていることもあります。

 

堂々と並ぶ豪華な本堂と大師堂

出釈迦寺は、石段を上り、2008年に改修工事された山門を抜けると、本堂と大師堂が並んでいます。
どちらのお堂も屋根の形状が方形(ほうぎょう)造りに向拝(こうはい)付きという珍しいタイプで、しかも本瓦葺きと豪華な仕様です。

さらに、四国八十八ヶ所霊場の札所としては異例ともいえる、大師堂のサイズが本堂と変わりらないという特徴があります。しかも本堂の向拝は一般的な流れ向拝、大師堂は唐破風仕様の向拝と、大師堂のほうが目立っているほどです。
唐破風の向拝は全体が曲線でカーブしており、面積の割にかなりの手間がかかります。装飾も箕甲(みのこ)や鬼といった役物のオンパレードで、唐破風だけで本体屋根を造るのと同じくらいの資金がかかるほどです。
屋根の頂上の宝珠(ほうじゅ)についても、大師堂のものは大変凝った仕様になっています。
※屋根の形状や装飾関する基礎知識は、以下リンクの記事で詳しくご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。

【寺院建築の楽しみ方④】屋根の種類とその形状からわかること

出釈迦寺_本堂

方形造りに、参拝スペースを確保する向拝がついた珍しいタイプの出釈迦寺の本堂。

出釈迦寺_大師堂

豪華な唐破風仕様の向拝が印象的な出釈迦寺の大師堂は、本堂よりも目立ちます。

 

秘仏がまつられている建物を改修するときに苦労

秘仏に関連して、一般的に秘仏を安置している本堂などの建物を工事する際の苦労話をご紹介したいと思います。

屋根の葺き替え工事を伴う大がかりなリフォーム工事の際には(歴史が長い建物でも、屋根は傷みやすいので何年おきに改修するのが一般的です)、仏さまをはじめ仏具などにすべていったん外に出てもらい、工事完了後に戻ってもらいます。
しかし、秘仏が安置されている古い厨子は移動できないことが多く、移動できるとしても、動かしたときに内部で不具合がなかったか確認するために開けることができませんので、原則は建物の中に安置したままで工事をすることになります。

厨子には屋根がありますが、実用的な防水ではなく木材だけですので、絶対に守らなければならないのは雨水や土埃の侵入を防ぐことです。実は建物の屋根の工事中は雨漏りリスクと同じくらいに土埃が厄介です。特に古い瓦の解体撤去をする際にはものすごい土埃が発生します。
厨子自体にもシートでカバーを掛けますが、天井や天井裏まで波板トタンなどで仮の屋根を作り、何重にも防御をしたうえで工事します。
中には、いちばん奥に絶対秘仏の厨子、その手前に秘仏の厨子、そして御前立ち、と3体が1列に並ぶ寺院もあったりして、このような場合はさらに難易度が上がります。

また、社寺建築職人には「仏さまの頭の上は踏まない」という原則があります。つまり、お厨子の上空にあたる屋根は踏んではいけません。ですので、その三尺四方については下地の大工さんも屋根屋さんも慎重に作業を進めることになります。

絶対秘仏となると、霊的な力さえあるかもしれないと思ってしまいますので、万が一粗相をしてしまったら、と恐くなることもあります。過去には、東京の浅草寺の絶対秘仏の観音様を強引に開けた役人がその後命を落としたなどの都市伝説的な噂もあり、わかっていても恐くないといえばウソになります。

このように秘仏に関係する建物の工事には大きな苦労を伴うのです。

寺院建築_秘仏厨子養生

秘仏がまつられている厨子がある建物の場合は、特に慎重な作業が必要になります。

 

73番札所出釈迦寺を参拝の際には、我拝師山山上の奥の院に関わる弘法大師空海の伝説や秘仏の存在、そして豪華な本堂や大師堂の造りに注目いただくと、新しい発見があると思います。

 

 

【73番札所】  我拝師山 求聞持院 出釈迦寺(がはいしざん ぐもんじいん しゅっしゃかじ)
宗派: 真言宗御室派
本尊: 釈迦如来
真言: のうまく さんまんだ ぼだなん ばく
開基: 弘法大師
住所: 香川県善通寺市吉原町1091
電話: 0877-63-0073

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この記事を書いた人

かのまお
建築・不動産・旅のテーマが得意なライター。社寺系ゼネコンに勤務経験があり、四国八十八ヶ所霊場の札所建築物の改修工事に携わったことがあります。仏教に興味があり、2022年には四国のお遍路巡礼もしました。ライターとは別名義で作家として小説も書いています。