内子町から44番札所大寶寺に向かう際に越えた「鴇田峠」は、積雪が残るハードな道のりで、私が遍路道中で唯一の転倒を経験した場所です。厳しい遍路道ではありましたが、雪化粧の変化に富んだ道は楽しい道のりでもありました。
内子町から久万高原町へは「鴇田峠」or「農祖峠」
44番札所大寶寺がある久万高原町を目指して、内子町の小田川沿い国道379号を山の中に入ってきました。
内子町から久万高原町に入るために、峠を越える必要がありますが、大別して「鴇田(ひわた)峠」ルートと「農祖(のうそ)峠」ルートがあり、「突合(つきあわせ)」の交差点で、国道379号と国道380号のどちらに進むかで分岐します。
私は国道379号を進む鴇田峠ルートを選択し、次の分岐点「総津落合交差点」から県道42号に入り、鴇田峠を目指しました。
ちなみに、内子町の道のりはどんどん山の中に入っていくので、装備や備蓄飲食料は十分に用意が必要ですが、道中に田舎道の長距離歩行にはありがたい休憩所を多く整備してくださっています。
以下リンクの記事に休憩スポットをまとめていますので、こちらもご参考ください。
【愛媛県内子町】無料宿泊情報多数!内子町の遍路小屋・休憩所・お堂セレクション
県道42号は車で進むには危険な道
総津落合交差点から進んでいく県道42号は、しばらくはところどころに集落がある生活道路ですが、くねくねの山道で車のすれ違いが困難な道幅の細いところもあり、車遍路さんでこの道を進もうとするのは危険を伴うと思います。
ちなみに、私が歩いたのは2月中旬でしたが、山からの湧き水で路面凍結している場所があり、車で初めてここに迷いこんだら悲惨だろうなと思いながら、私はもちろん歩いて通過していきました。
総津落合交差点から4kmほど進むと、道の状態を表現したのか「畦々(うねうね)」という秀逸なネーミングの集落に入ります。そこにある「三嶋神社」という立派な神社は、未舗装峠道に入っていく前の休憩スポットです。
内子町と久万高原町の境は「下坂場峠」
ここまでの道のりでもゆるやかに登ってきて、標高400mを越える高さまでたどり着いていますが、「畦々」あたりから、まず最初の峠越えがスタートし、約2kmの距離で標高差100mほどを登りきると、そこが「下坂場(しもさかば)峠」の頂上で、未舗装路から県道42号に合流します。
下坂場峠から県道42号をしばらく下っていくと、集落に分岐点があり「葛城神社」を目印に、さらに山の中に入っていきます。
ここからが鴇田峠への登り坂チャレンジになり、峠の頂上まで距離約3km、標高790mまで標高差270mを登っていきます。
雪化粧に氷柱の鴇田峠で遍路旅唯一の転倒
鴇田峠にチャレンジを始めてしばらくは舗装路を歩きますが、私が歩いた2月中旬は路面に積雪が残り、岩場には氷柱(つらら)ができているという本格的な冬仕様の道でした。
私が遍路旅をしていたのが2015年1月下旬から3月上旬で、当然標高の高い山の中にもたくさん入っていき、雪が降っている日も何日かありましたが、これだけの「冬」を実感した道は、この鴇田峠が一番でした。
ちなみに歩いているときは、汗だくになるほど体は温まっているので、気温の低さは想像よりも実感せず(野宿の際は防寒対策を万全にしましたが)、むしろ気温の高い季節の方が体力消耗が激しいのではと思いながらの歩行でした。
そして、いよいよ峠への未舗装路のスタート。ここは完全なる雪化粧でした。
ただ、もう溶けかけてはいたと思うので、積雪量は大したことはなく、雪がふかふかの部分は、歩きやすくて気持ちよかったです。
気持ちのよい雪道を登って頂上に到着し、少し進むと舗装路に合流、その先に「鴇田峠休憩所」があるのですが、ここでトラブル発生です。
未舗装路の雪道が気持ちよかったので、油断もあったのか、舗装路の積雪・凍結箇所でまさかの転倒で、まさしく「すってんころりん」状態でかかとが滑り、後ろ方向におもいっきり尻餅をついてしまいました。
今回の遍路旅で、私が転倒したのは、あとにもさきにもこれ1回でした。
遍路旅が後半に入り、難所もたくさんクリアしてきて油断もあった頃だと思うので、お大師さまが戒めてくれたのだと思います。
ちなみに鴇田峠(ひわたとうげ)は変わった名前ですが、空海が歩いたときに、大洲から雨続きだったときにこの峠で晴天に恵まれ、「日和(ひより)だ」と言ったのが訛って「ひわた」になったとの説があるようですが、私は天気には恵まれていましたが、雪には勝てなかったようです。
幸いにお尻がちょっと痛かっただけで、怪我はなかったので、お大師さまが守ってくれたとも言えますが。
峠の頂上を越えると、距離約2kmで標高差200mほどを一気に下り、ほどなくして住宅街に入ってきたなと思ったら、いきなり久万高原町の中心街で街がひらけています。
下りはじめてからは、登りの雪景色が嘘のように雪はなくなり、気温も一気に上がってきて、峠の上と高原盆地と距離は近いのにこれだけの気候差があるかとびっくりしました。
このように鴇田峠の道のりは、転倒を経験したように積雪・路面凍結時期は危険な道ではあるものの、とても風情があり、今となっては楽しい思い出にもなっている遍路道でした。
四国遍路の難所といえば「遍路ころがし」と呼ばれる高所にある札所が注目されがちですが、久万高原町への峠越えは標高や冬の低気温の厳しさを考慮するとかなりの難所であることは間違いないので、油断せず、気候条件をよくよく確認しながら歩まれてください。
【「鴇田(ひわた)峠」 地図】