心静かにお参りするには、訪れる人がより少ない「番外霊場」がお勧めです。22番札所平等寺と23番札所薬王寺の間の海岸ルートにある「阿部 お水大師」をご紹介します。
「番外霊場」とは
歩き遍路をしていると、札所(八十八ヶ所のお寺)以外に「番外霊場」という言葉を耳にします。
それは寺院であったり、小さな物だと祠(ほこら)であったりします。
それらは八十八"番以外"ということで、番外霊場と総称されています。
つまり八十八ヶ所のお寺さん以外は全て番外霊場ということになり、その数は本札所より圧倒的に多い。
お参りの移動手段が自家用車だと 地図等を見て予め調べていたところはともかく、「通りがかって(良さそうなので)立ち寄った」のパターンは少ない。
車の移動スピードではすぐさま通り過ぎてしまうので、それはなかなか見つけれません。
団体バスなら予め決められた場所への団体行動となるので尚更です。
お大師さまと水の関わり
徳島県美波町由岐(みなみちょうゆき)・阿部(あぶ)という小さな漁村にある「お水大師」
道幅の細い県道沿いに看板があり、お堂は見えません。
ここから少し下った場所にあります。
お大師さまの水伝説は全国各地に存在する。とりわけ四国内には数多く残されており、その名に井戸がつく17番井戸寺(徳島市)や山号に白水山(はくすいざん)とつく22番平等寺(阿南市)は、それぞれ札所であり水の霊跡となります。
阿部のお水大師へはこの道を下りて行く。山道ではなく、お堂まで1~2分なのでご安心ください。
この並びを見ると六地蔵と思いきや、御人数が全然違います。
そしてお地蔵さまでもない。
1番と記されて不動明王。
四国1番の霊山寺(りょうぜんじ/釈迦如来)でも西国1番青岸渡寺(せいがんとじ/如意輪観音)でもない。
どこのミニ霊場でしょう?
伝説によると大師の祈念により岩がせり上がり、金竜が現れたとする場所。
今でも水が湧き出て、綺麗に清掃されています。お供え物も新しい。
こちらは集会所が備えられていることから、集落の会合や講(こう/集まって仏事を行うこと)で利用される物でしょうか。
太平洋に面した美波町
阿部集落は港がある右側、人口百数人の小さな漁村。
明治維新直後に各地で起こった戊辰戦争で、海戦が行われた海でもある。
阿波沖海戦(1868年)
日本初の洋式戦艦同士の戦いと言われるが、幸い双方とも死傷者は出ていない。
新政府軍の輸送艦が機関故障で由岐浦に流れ着いたところで 、拿捕を恐れて船を自分たちで爆破。
船員が逃げ延びたことから旧幕府軍の勝利とされている。
「阿部 お水大師」は22番平等寺から23番薬王寺の間。
札所間を最短で結ぶ遍路道から逸れることから、お遍路さんの訪問はそんなに多くはない。
それだけに誰にも妨げられることなく自分と向き合うことができて、静かに手を合わせることができる。
たまにしかお遍路さんが来ない場所なので、お大師さまも「おっ、久しぶり」と注目して下さっている気もします。
聞こえてくるのは波の音。
せっかく四国遍路を歩かれるのなら、人知れずひっそり佇む大自然の中でのお参りもぜひ体験されてください。
【「阿部 お水大師」 地図】