空に向かって伸びる道路の跳開角度は約70度、27番札所神峯寺と28番札所大日寺の間(28番寄り)の手結港ある一風変わった景色「跳ね橋」をご紹介します。
—– こちらの記事に登場する読み方が難しい単語
手結(てい)
跳開橋(ちょうかいきょう)
石鎚山(いしづちさん)
—– こちらの記事に登場する主な登場人物
野中兼山(のなかけんざん / 1615~1663) … 港湾改修など土木事業に手腕を発揮。多くの改革で藩を助けたが、過酷労働など 領民の不満を招き失脚した。
今なお改修当時の姿を留める手結港
太平洋に面した土佐國では、一度海が荒れると船の係留さえままならない。
そこで急がれたのが港湾の開発。
現在の高知県香南市夜須町、背後に山があり風を受けにくい手結は、古くから天然の良港として知られた存在であり、江戸時代初期に土佐藩家老・野中兼山が改修を行い、より利便性が高まった。
竣工は1657年。
当然重機など機械は存在しない。
現在見ることのできる手結内港や丁寧に積まれた石垣は(下段であるほど古い)、その多くが手作業で築かれたもの。
今から約360年前の港の姿、先人の功績を今に見ることができる点で貴重な遺構です。
一日約8時間しか渡れない可動橋
現代の手結港のもう一つ大きな特徴が、港の出口にある可動橋。
正式名称 「高知県手結港臨港道路可動橋」
堀込港である手結港で対岸に渡るにはぐるっと港を囲むように迂回しなければならない事、平地が乏しいためその道が狭い事など、陸上での往来にいくつか不便があった。
そこで考えられたのが港の入口への架橋。
ここに橋があると距離短縮、安全。
しかしながら手結港は現役の港として機能しているため、船舶の往来を妨げるような低い橋は作れない。
かと言って高さのある橋の建設は予算的に厳しい。
採用されたのが "跳開橋" (ちょうかいきょう、跳ね橋とも)
船の往来がある時間帯は写真のように開いた状態。
夜間や日中などは橋が下りて 人々の往来を容易にする。
この様子が当地のひときわ珍しい光景を作り出しています。
橋と太平洋の向こうに見える山なみは…
手結内港の出口方面を眺めると、見えるのは太平洋ではなく香南市方面と背後のお山。
山アプリを起動して山を同定してみました。
四国山地を広く見渡すことができるこの場所。
一つだけ頂に雪を冠した他とは違う存在感を放つお山がありましたが、霊峰・石鎚山が見えていました。
遍路道中には、地域の歴史や先人の知恵を実感できる風景がたくさんあります。
27番札所神峯寺から28番札所大日寺に向かう途中の土佐國の海岸線「手結」では、港の築造の歴史や珍しい跳開橋に着目してみてください。
【「手結港」 地図】