お遍路さんの多くが最初に訪れる1番札所霊山寺の山門すぐ横に、料理旅館「大鳥居苑」があります。阿波国一宮「大麻比古神社」の大鳥居の前にあった食堂が移転開業した宿で、立地の良さと地元食材を使った料理が評判です。
「大麻比古神社」の鳥居前の食堂が移転開業した料理旅館
お遍路さんが泊まる宿の歴史やオーナーの思いについてインタビューする遍路宿紹介シリーズ。今回は、1番札所霊山寺のすぐ脇にある「大鳥居苑(おおとりいえん)」にお邪魔いたしました。
大鳥居苑は家族4人で経営している料理旅館で、仕出し料理や宴会への対応も可能。1番札所横にあることで、四国遍路の出発の宿として選ぶお遍路さんも多い「はじまりの宿」です。お話は、親子2代で料理人の長尾則雄さんと息子の雄一さんにお聞きしました。
大麻比古神社前の鳥居前の食堂から料理旅館へ
お父様の則雄さんが現在の場所に大鳥居苑を建てたのは2000年のこと。その前は、霊山寺の北にある阿波国一宮「大麻比古神社(おおあさひこじんじゃ)」の鳥居前で食堂を営んでいたそうで、「大鳥居苑」の名前もそこに由来しています。食堂は高速道路建設で移転を余儀なくされたため、霊山寺横にあった土地に料理旅館を開業しました。
特にお遍路さん向けに開業したわけではないそうですが「料理だけじゃやっていけないからと始めた宿だけど、お遍路さんはよく泊まってくれている。」とのことです。
「はじまりの宿」ならではのお遍路さんへのアドバイス
大鳥居苑は1番札所の横に位置することから、はじめて四国遍路に挑むお遍路さんの「最初の宿」になることも多いようです。そのため荷物の量など、初歩的なアドバイスをよく求められるのだとか。
則雄さんは「初めての人は荷物をたくさん持ってくることが多いので、2〜3ヶ寺進んで、いらないものは送り返せばいいと伝えている。必要なものは現地で買い揃えることもできるし、用意するものはなんでもその土地で聞くことが一番だとね。」と話しておられました。
その他、結願後に「お礼参り」として再訪してくれるお遍路さんがいたり、次にまた来るというお遍路さんのために、杖や旅道具を預かったりするなど、1番札所隣接ならではのエピソードをたくさんおうかがいできました。
四国遍路の出発の宿、最後の宿と決めているお遍路さんも多く、数ヶ月に一度のペースで巡礼するお遍路さんも大鳥居苑を常宿にしておられるそうです。則雄さんいわく「お遍路さんは基本いい人が多くて、『また来る』と言ったら絶対きてくれるね。」とのことでした。
他と比較しない「普通」の料理がリピーターを惹きつける
泊まった人から「料理が良かった」という声を聞く大鳥居苑。
則雄さんからも、
「八十八ヶ所を一通り回った人の多くが『ここの食事が一番よかった』と言ってくれる。特別なことはしていないし、地元の食材を作って普通にしているんだけど、リピーターさんからの評判はいいね。」
「“遍路宿”の標準より料金が高いと文句を言うお客さんもいるけど、料理を出すと翌日には謝ってくる。」
などのお話を聞くことができました。
則雄さんは「4品出して、この値段(2食付き7500円(税別)〜)だからそんなに高くはないと思ってるんだけど、他所に泊まって食べることがないから、他がどんな値段でどのくらいの料理を出しているかわからないんだ。息子と今度どこかに泊まってみようと話してるんだけどね。」と笑います。
料理に対するこだわりについて聞くと「特にこだわりはない。普通にしてるだけ。」と答える則雄さん。息子の雄一さんは「地元の素材、季節の素材を使って、丁寧につくるよう心がけている」と答えてくださいました。料理人の感覚で言う「普通」が、宿泊者から評価を受けていることをみると、そのレベルの高さが垣間見えました。
どこか飄々としている則雄さんと、ハキハキと答えてくださった雄一さん。親子の個性と料理が魅力の宿です。
【「料理旅館 大鳥居苑」 基礎情報】
名 称 | 料理旅館 大鳥居苑 |
宿の形態 | 旅館 |
住所 | 徳島県鳴門市大麻町板東西山田33-4 |
「料理旅館 大鳥居苑」の詳細情報とご予約はこちらから↓
四国宿泊予約サイト「お遍路さん家」【料理旅館 大鳥居苑】
大鳥居苑のホームページを見ると、鳴門の新鮮な魚介類と地元野菜を使った豪華な食事が掲載されています。予算に合わせて、松茸やフグが出るコースも選べるので(季節ごとに変動)、料理を楽しむ旅館として選択するのもオススメですよ。