【讃岐一宮田村神社・船山神社】倭迹迹日百襲姫の源流を示す讃岐のレイライン

讃岐の東部、現在の東かがわ市にたどり着いた倭迹迹日百襲姫は、讃岐國内を西に進みます。高松市南部にある「船山神社」などは水神や吉備勢力との関係を示す史跡で、讃岐一宮である「田村神社」はお遍路とも関連深いスポットです。

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倭迹迹日百襲姫で繋がる讃岐一宮・田村神社と周辺の社寺

結願寺の88番札所大窪寺から、倭迹迹日百襲姫が讃岐にたどり着いたルートと重要な聖地「水主神社」に関して、ふたつの記事でご紹介してきました。
※詳しくは以下リンクの記事もぜひご覧ください。

【88番札所大窪寺からの遍路道編】倭迹迹日百襲姫の源流を示す讃岐のレイライン

【水主神社編】倭迹迹日百襲姫の源流を示す讃岐のレイライン

水主神社から西に進んだ倭迹迹日百襲姫は、現在の高松市南部の一宮地域にたどり着きます。

讃岐一宮・田村神社の祭神も同じく倭迹迹日百襲姫であり、田村神社は弟とされる吉備津彦命も合祀しています。
田村神社は別名「定水大明神」と呼ばれるように、湧き水が豊富で、渇水地帯の讃岐平野の中にあって常に湧き水が枯れず、ご神体の湧水は龍神が守っていると伝えられています。
水主神社も、元は水神を祀る場所であったと考えられるので、祭神とともに性質も共通しています。

讃岐一宮田村神社 鳥居

讃岐一宮田村神社。ここも水との関わりが深い。

水主神社から田村神社の間には倭迹迹日百襲姫命を祀った神社が点在しています。

東かがわ市馬篠にある艪掛神社は、倭迹迹日百襲姫が舟を留めて休息したと伝えられています。
さらに、田村神社にほど近い仏生山町にある船山神社も倭迹々日百襲姫を祭神としています。

その由緒には、

「倭迹々日百襲姫命、上古讃岐の東部に来り給い、更に移りて当地船山に登り給う。
比の地讃岐の中央にして好き所なりと賞でし給いしにより祠を之を奉ず地名百相(倭名鈔百相毛毛奈美)は命の御名によって起れり。
創建は天平年間といい初め浅野村船岡山に鎮座あり、船岡山は古く百相郷に属し船山と称す。」

とあります。

船山神社の由緒ではこの一帯を「百相郷(ももそごう)」と記していますから百襲姫に縁のある一族が住んだと考えられます。

船岡山は船山神社の700m南にあります。
この山は水主神社から倭迹迹日百襲姫が移動して来て最初に住んでいたと伝えられています。
山の南には船岡池があり、船岡山はこの池を作るために掘った残土を盛り上げて成型されていると考えられます。
このことから、倭迹迹日百襲姫の一行が、高度な土木技術を持っていたことがわかります。

仏生山 船山神社本殿

船山神社の本殿。水主神社には石船があったが、ここで「船」という語が使われるのも、倭迹迹日百襲姫が船で移動していたことを伝えているのだろう。

仏生山 船岡山

ご神体山の船岡山。倭迹迹日百襲姫は水利に関係が深いが、船岡池を掘削する大工事を行ったとすれば、倭迹迹日百襲姫が引き連れてきた集団は高度な土木工事技術も持っていたと考えられる。

倭迹迹日百襲姫は、最終的に、田村神社に落ち着いたと伝えられています。
田村神社に隣接する83番札所一宮寺は、長く田村神社の別当寺でした。
大宝年間(701-704)に義淵が大宝院として創建し、後に行基が一宮寺と改めたと伝えられます。
さらに、大同年間(806-810)に空海が伽藍を整備し聖観世音像を刻んで本尊としたと伝えられています。
「讃岐一宮の御前に 仰ぎ来て 神の心を 誰かしらいふ」と御詠歌に謳われるように、田村神社に祀られた倭迹迹日百襲姫への畏敬が、今でも寺の佇まいにも秘められています。

田村神社には倭迹迹日百襲姫とともに、その弟である吉備津彦が祀られています。
吉備津彦命は、瀬戸内海を挟んで対岸にある吉備津彦神社の祭神で有名ですが、高松市鬼無町の桃太郎神社には、吉備津彦の弟である稚武彦が祀られています。
また、田村神社と同時期に創建された綾川町の瀧宮神社は、広く讃岐、阿波、吉備の人に崇敬されたと伝えられていますが、これらを総合すると、岡山から讃岐にかけての広い地域は、吉備の勢力範囲であったと考えられます。

水主神社の伝承は、倭迹迹日百襲姫がもともと吉備勢力の出身であり、大和で様々な勢力の争いが起こった際に、故地へと避難した物語を伝えているのかもしれません。

 

3記事にわたって倭迹迹日百襲姫の源流を示す讃岐のレイラインに関してご紹介しました。
讃岐と大和との関係性や、空海以前の讃岐國の成り立ちを紐解くのに、倭迹迹日百襲姫に関連する史跡を調査することは有効であり、まだまだ謎が隠されています。
今後もレイラインの要素や遍路との関連も含め、継続的に調査していきたいと思います。

 

【「田村神社」 地図】

 

【「船山神社」 地図】

 

【「船岡山」 地図】

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この記事を書いた人

聖地と呼ばれる場所に秘められた意味と意図を探求する聖地研究家。アウトドア、モータースポーツのライターでもあり、ディープなフィールドワークとデジタル機器を活用した調査を真骨頂とする。自治体の観光資源として聖地を活用する 「聖地観光研究所--レイラインプロジェクト(http://www.ley-line.net/)」を主催する。