【71番札所弥谷寺】レイライン的な観点から見た札所の構造

71番札所弥谷寺は、冬至と夏至を意識した配置が見られ、こうした二至を結ぶレイラインは、太陽が再生し循環するという思想を体現したものです。レイライン的な観点から札所の構造を分析します。

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三豊市・善通寺市・多度津町エリア 札所

 

レイライン的な観点から見た札所の構造

四国八十八ヶ所の札所は、由来書はもとより、様々なガイドブックや寄稿文などで、その歴史が紹介されています。そんなこともあって、すでに語り尽くされているような印象がありますが、個々の札所をその構造から分析するレイラインハンティングの観点で見直してみると、今まで語られてこなかった札所の歴史や、個々の札所に込められた古の人の思いが明らかになってきます。

今回は、香川県西部から中部にかけての三豊市・善通寺市・多度津町エリアの札所をレイラインハンティングの手法で分析したレポートをご紹介します。

 

四国八十八ヶ所巡礼の仕上げに近づいていくエリア

歩き遍路は、「香川までは巡った札所の数が増えていくことが嬉しくて、加算的に数えていたけれど、香川に入ると終わりが見えてくるので、あといくつ残っているかと減算式に考えるようになってくる」と言います。
香川県三豊市に入ってくると四国八十八ヶ所巡礼も終盤で、善通寺市には一つのクライマックスともいえる75番札所善通寺も含まれ、巡礼の仕上げらしい雰囲気が高まってきます。

 

71番札所弥谷寺(いやだにじ)

<由緒>

四国八十八ヶ所71番札所弥谷寺
真言宗大本山 剣五山千手院
本尊:千手観音菩薩

聖武天皇の勅願により行基が堂宇を建立したとされる。当初は中国、四国の八国が眺められたことにちなみ蓮華山八国寺と称したという。また、空海が7歳から12歳までの間、当寺の獅子之岩屋で学問に励んだと伝えられる。

 

<二至配置に秘められた生命再生の意味>

弥谷寺は、かつて「イヤダニマイリ」という死者送りの風習が行われていた山岳信仰の色濃い聖地です。
日本の山岳信仰では、死者は里に近い山にその魂が集まるとされました。恐山や立山、白山などがその典型であり、弥谷寺の背後に聳える弥谷山はこの地方では随一の山岳信仰の場でした。その意味で、非常に歴史の深い聖地であるといえます。

弥谷寺は空海が7歳から12歳まで修行した道場として名高いですが、善通寺の跡取りである空海が預けられたということは、それだけ由緒が深かったことのひとつの証明ともいえます。

弥谷寺は、冬至と夏至を意識した配置が見られます。こうした二至を結ぶラインは、太陽が再生し循環するという思想を体現したものです。
我拝師山は7歳の空海が身を投げて、自らの信仰を釈迦如来に問うた場所と伝えられますが、そのエピソードにも「死と再生」の構図が端的に現れています。

弥谷寺の構造

弥谷寺が夏至と冬至を明確に意識しているのは、その参道と本堂、大師堂の向きでわかる。

弥谷寺 獅子之岩屋

大師堂内の獅子之岩屋は冬至の入日方向を指す。

空海は、獅子之岩屋で修行したと伝えられるが、それは、空海がまさに死と再生をイメージしながらここで瞑想したことを物語るといえるでしょう。

善通寺市 衛星写真

衛星写真を見ると、二至のラインに沿って、金刀比羅宮-大麻山-我拝師山-弥谷寺が並び、出釈迦寺や曼荼羅寺も近接しているのがわかる。

このエリアを俯瞰してみると、この地域の札所が、古来からの聖地である山岳を中心にして配置されていることがわかります。

 

ここまで、71番札所弥谷寺のレイライン的観点での分析レポートをご紹介しました。

同じ三豊市・善通寺市・多度津町エリアの70番札所本山寺、72番札所曼荼羅寺・73番札所出釈迦寺、74番札所甲山寺、75番札所善通寺、76番札所金倉寺・77番札所道隆寺に関するレポートは、以下リンクの記事もぜひご覧ください。

【香川県三豊市・善通寺市・多度津町エリア】レイライン的な観点から見た札所の構造-70番札所本山寺

【香川県三豊市・善通寺市・多度津町エリア】レイライン的な観点から見た札所の構造-72番札所曼荼羅寺・73番札所出釈迦寺

【香川県三豊市・善通寺市・多度津町エリア】レイライン的な観点から見た札所の構造-74番札所甲山寺

【香川県三豊市・善通寺市・多度津町エリア】レイライン的な観点から見た札所の構造-75番札所善通寺

【香川県三豊市・善通寺市・多度津町エリア】レイライン的な観点から見た札所の構造-76番札所金倉寺・77番札所道隆寺

 

【「71番札所弥谷寺」 地図】

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この記事を書いた人

聖地と呼ばれる場所に秘められた意味と意図を探求する聖地研究家。アウトドア、モータースポーツのライターでもあり、ディープなフィールドワークとデジタル機器を活用した調査を真骨頂とする。自治体の観光資源として聖地を活用する 「聖地観光研究所--レイラインプロジェクト(http://www.ley-line.net/)」を主催する。