室戸市の道のりの終盤に、突然タイムスリップしたかのような「吉良川の町並み」に遭遇しました。かつて備長炭の生産で経済的に繁栄し、大正時代に建設された豪邸が今も残り、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されています。
タイムスリップしたがごとくの昔の商家が立ち並ぶ「吉良川」
室戸岬への長距離歩行を制覇し、室戸市内の3札所「最御崎寺」 「津照寺」 「金剛頂寺」を打ち終えれば、高知県南岸を北上していきます。
金剛頂寺のふもとの「道の駅 キラメッセ室戸」で休憩をとってから、約4kmほど海岸線を進むと、突然タイムスリップしたかのごとく昔の建物が立ち並ぶまちに遭遇します。
「吉良川(きらがわ)」と呼ばれるこの場所は、昔から木材や薪など森林資源の集積地で、明治時代になって近郊で産出されるウバメガシで備長炭を生産するようになり、大正時代には製炭技術を磨いたことで、良質な備長炭で日本を代表する生産地になったそうです。
このことで、もちろん経済的も繁栄し、さらに京阪神と船で交易を行う拠点でもあったため、都の文化や物品も先進的に取り入れることができるようになったとのこと。現在も残る商家建築物の多くは大正時代に建設されたもので、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されています。
今では製炭をする家は数軒しか残っていないようですが、産業も含め、伝統が残っていくとよいと思います。
台風銀座ならではの「土佐漆喰」と「水切り瓦」
ここ室戸は、四国の南端に位置し、例年通過する台風の数が多く「台風銀座」とよばれているほどです。この激しい風雨から建物を守るために、吉良川の建造物にはいくつか工夫が施されています。
まずは「土佐漆喰(とさしっくい)」です。
前出の写真の白壁の素材がそうなのですが、一般的な漆喰は海苔を混ぜ込むのに対して、土佐漆喰は稲藁を混合して、藁の繊維質で強度を増しているそうです。
私はかつおのたたきの藁焼きを思い出してしまいましたが、高知の生活に藁は有効活用されてきたようです。
そして、見るからに特徴的なのが「水切り瓦」です。
前出の写真と、以下の写真の2階部分をよく見ていただくと、白壁に小さなひさしが飛び出ています。この水切り瓦があることで、壁面をつたう水の量を減らし、壁の強度維持に役立つそうです。
また、美術的な要素もあり、よく見ると職人が工夫をこらした様々な形の水切り瓦があるとのこと。
私はそこまで見比べはしませんでしたが、壁におもしろいものがくっついているなぁと印象に残りました。
旧吉良川郵便局と「丸型ポスト」
そんな町並みの中に、一際目立つ周りの家とは異なる建築物がありました。
それが「旧吉良川郵便局」で、この建物も大正時代に建築されたそうですが「擬洋風建築」で、周囲の漆喰、瓦のいかつい商家とは別の輝きを放っていました。
昭和40年(1965年)まで現役の郵便局として営業していたそうで、入口上の「〒」マークがいい味を出しています。
私は見逃したのですが、建物の屋根瓦にも「〒」マークがついているらしいので、行かれた際にはぜひチェックしてみてください。
ここで注目していただきたいのが、建物前の「丸型ポスト」です。
この形のポストは、正式名称を「郵便差出箱1号(丸型)」といい、戦後すぐに実用化されたポストで、現在は「角型」が主流になっているので、全国的にも数が少なくなっている希少種なのです。
旧吉良川郵便局前の丸型ポストは資料としての「展示物」で現役ポストではないのですが、もちろん現役バリバリのものもあり、なぜかわからないのですが、室戸市内では比較的多くの丸型ポストを発見しました。
ポストひとつとってみても、地域の歴史を感じることができます。
※丸型ポストに関しては、以下タグリンクの記事もぜひご覧ください。
また、吉良川で3代続くパン屋さんがあり、私は「道の駅 キラメッセ室戸」でここのパンを購入しましたが、地域食材を手軽に味わえるので、お店の情報を掲載しておきますのでご参考ください。
※店舗の雰囲気や実際に食べたパンの情報は、ぜひ以下記事もご覧ください。
【道の駅キラメッセ室戸】羽根名物「お倉饅頭」と地元老舗ベーカリーの素朴なパン
【吉良川重要伝統的建造物群保存地区】老舗パン屋「徳屋」のふかふか食パン
店名: | ホームベーカリー徳屋 |
住所: | 高知県室戸市吉良川町甲2284 |
電話: | 088-725-2134 |
遍路道沿いには、各地域の歴史や伝統が今も息づいています。
せっかくの歩き旅ですので、地域を体感しながら進んでいきたいものです。