愛媛県の西条市と久万高原町にまたがる「石鎚山(いしづちさん)」は、標高1,982mの西日本最高峰で、昔から山岳信仰の霊峰として崇められています。豊かな自然環境を有し、四季折々の風景が楽しめますが、特に秋の紅葉の名所で、たくさんの見物客が訪れます。
石鎚山とは
愛媛県の西条市と久万高原町にまたがる「石鎚山(いしづちさん)」は、標高1,982mの西日本最高峰で、日本百名山、日本百景にも選ばれている四国を代表する山のひとつです。
昔から山岳信仰の霊峰として崇められていて、奈良時代には修行道場として知れ渡り、役小角や弘法大師空海も修行したと伝わっています。
現在でも、山中に山頂社、中宮成就社、土小屋遥拝殿などの登拝の拠点となる社があり、毎年7月1日から10日まで期間で「お山開き」の神事も執り行われています。
石鎚山系や石鎚山麓には、石鎚信仰の拠点になっている石鎚神社や極楽寺、四国八十八ヶ所霊場の札所にもなっている60番札所横峰寺、64番札所前神寺などが点在していて、信仰の歴史や文化が受け継がれています。
石鎚山及びその周辺の森林は、暖帯林から温帯林、標高1,700m以上の亜寒帯林と変化に富んでいて、多様な植生で多種の動物の生息地でもあります。特にクマタカ、ハヤブサ、ヤマネなどの希少な鳥類が生息地していて、国の鳥獣保護区や森林生態系保護地域にも指定されています。
豊かな自然環境を有し、眺望も抜群で、四季折々の風景が楽しめるので、たくさんの登山客や観光客が訪れている石鎚山ですが、特に秋の紅葉が美しいことで知られています。
本記事では、石鎚山の紅葉の魅力・見どころ・見頃などを詳細に紹介します。
石鎚山の紅葉の魅力と見どころ
石鎚山の紅葉の最大の魅力は、急峻な山がカラフルに色づく紅葉を、登山道中のいろいろな場所で見ることができ、自然の雄大さや景色がダイナミックに変化する様子を楽しむことができるところです。
大きな山なので、山頂を目指す登山ルートが複数ありますが、その中でも多くの登山客が利用する西条市側の山の麓に整備されている石鎚登山ロープウェイからのルートでは、道中で特徴的な紅葉の景色を見ることができます。
山頂に向けて歩を進めていくと、山岳信仰ならではの場所や建造物があり、紅葉とのコンビネーションを見ることができます。
そして、石鎚山の紅葉でもっとも象徴的なのは、頂上の天狗岳がカラフルに色づく様子です。
特異な地形と多様な植生を有する石鎚山でしか目にすることができない、特別な紅葉の景色が、ご紹介した以外にもたくさんあります。
ご自身のお気に入りスポット・フォトスポットをぜひ見つけてみてください。
石鎚山の紅葉の見頃
石鎚山の紅葉シーズンは10月上旬から始まり、標高が高いので、エリアによって見頃が異なります。頂上周辺は10月上旬から中旬、中腹の中宮成就社周辺は10月中旬から下旬、麓の方になると10月下旬から11月上旬が見頃になることが通例です。
平野部に比べると山中はかなり気温が低いので、紅葉の見頃も早い時期に訪れますので、夏が終わる頃から情報収集をされておくとよいでしょう。
紅葉の見頃は、気候条件や年によって変動がありますので、訪れる前には最新の情報をチェックしてください。紅葉の進行は、一般的に気温の変化に大きく影響されます。秋が深まり、朝晩の冷え込みが強くなると、紅葉が一気に進みます。
色づき始める前の緑豊かな時期や、徐々に色づき始め、緑と赤・黄が混ざり合う時期も美しいので、秋シーズンに複数回訪れて、それぞれの時期の風景を楽しむのもおすすめです。
また、日中と夜間の寒暖差が特に大きい時期に紅葉のピークが訪れるので、この時期は最も鮮やかな紅葉を楽しむことができるとされています。また、朝の光が差し込む時間帯や、夕方の柔らかい光が紅葉を照らす時間帯は特に美しいので、これらの時間帯を狙うと良いでしょう。
石鎚山への公共交通機関でのアクセス
石鎚山への登山ルートは複数ありますが、一般的なルートは、石鎚山頂の北東側(西条市)から石鎚登山ロープウェイを使うルートと、石鎚山頂の南東側(久万高原町)の土小屋登山口から登るルートの2つです。
石鎚登山ロープウェイの麓側の下谷駅までは、JR予讃線・伊予西条駅から路線バスが走っていて、約1時間で到着することができます。
ロープウェイは20分間隔で運行していて、標高差約950mを約8分のあっという間で登ることができ、標高1,300m地点の成就駅まで行くことができます。
成就駅から山頂までは、距離約4.5kmの間に標高差約650mを登る山道で、一般的には3時間程度の所要時間とされています。
土小屋登山口までは、JR予讃線・松山駅から路線バスが走っていて、約2時間で到着することができます。
土小屋登山口から山頂までは、距離約4.5kmの間に標高差約450mを登る山道で、一般的には2時間程度の所要時間とされています。
2つのルートを比較すると、土小屋登山口からの登山道の方が比較的傾斜がゆるやかで一般的な所要時間も短い傾向にあり、難易度が低いとされています。土小屋登山口には宿や飲食店、物販店なども整備されているので、石鎚山の登山ルートで最も利用者が多いのは土小屋ルートです。
なお、路線バスに関しては、運行本数が少ないですし、特にJR松山駅から土小屋登山口に向かうバスは途中で乗換が必要な便や、冬季は運休になるなどの特殊事情もあります。
路線バスを利用する場合は、運行情報を事前に詳細に確認されることをおすすめします。
石鎚山への自家用車でのアクセス
公共交通機関でのアクセスが便利ではないので、多くの人が自家用車で登山口までアクセスしています。
石鎚登山ロープウェイ下谷駅までは、松山自動車道・いよ西条ICから約30km・約40分で到着できます。下谷駅周辺に、民営の有料駐車場が複数あり、500台程度駐車可能ですが、紅葉の時期にはたいへん混み合うので、時間に余裕をもって訪れてください。
土小屋登山口までは、松山自動車道・松山ICから石鎚スカイライン(愛媛県道12号線)を経由して約80km・約90分、松山自動車道・いよ西条ICからUFOライン(いの町道瓶ヶ森線)を経由して約80km・約90分です。
石鎚スカイラインとUFOラインは、標高の高い場所を走るので、景観がたいへん良いことで知られていますが、山間部道路ですのでカーブ・傾斜があり、道幅が狭い場所もありますので、十分に気をつけて通行してください。
土小屋登山口には、約300台分の無料駐車場が整備されています。
石鎚スカイラインとUFOラインは、夜間閉鎖や冬季閉鎖など通行できないことがありますので、自家用車で土小屋登山口に向かう場合は、最新情報を必ずチェックしてください。
石鎚山訪問時の注意事項
秋の山深い石鎚山は、平地に比べて気温が低く、特に朝晩の冷え込みが強くなることが多いため、防寒対策をしっかりと行うことが重要です。紅葉の時期でも標高が高いエリアでは雪が降ることもありますので、脱ぎ着しやすいはおりものやマフラー、手袋、携帯用カイロなどを準備しておくことはもちろん、十分な登山装備で訪れる必要があります。
また、登山道は凹凸や障害物、傾斜もあり、特に雨の日や落葉時期は足元が滑りやすくなりますので、履き慣れた歩きやすい登山靴を着用することをおすすめします。
事前の情報収集をしっかりして、自身の体力や経験などを考慮した上で、訪問エリアや登山ルートを決定してください。不安な場合は、石鎚山に関する知識と経験が豊富な現地の登山ガイドさんと一緒に登ることも検討されるとよいと思います。
また、石鎚山は山岳信仰の霊峰でもありますので、信仰のために登拝される人もたくさんいらっしゃいます。礼儀作法や他の訪問者への配慮を忘れずに、霊峰の静謐な雰囲気を楽しんでいただければと思います。
石鎚山の紅葉は、多様な植生と特徴的な地形が織り成す、石鎚山でしか見られない特徴的な景色が魅力です。紅葉の時期に限らず、多くの登山者に人気の山で、整備が行き届いてはいますが、標高が高く、頂上を目指すにはそれなりに傾斜がある登山道を長時間歩く必要がありますし、気候も変化しやすく、油断は大敵です。
十分な装備と情報収集、心構えで、くれぐれも安全に石鎚山の紅葉をお楽しみください。
※愛媛県の紅葉の名所を以下リンクの記事でまとめてご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
※石鎚山に関連する情報は、以下リンクの記事でもご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
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